long long型(ロングロングガタ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
long long型(ロングロングガタ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ロングロングがた (ロングロングガタ)
英語表記
long long (ロングロング)
用語解説
long long型は、プログラミング言語、特にC言語やC++で用いられるデータ型の一つである。その主な役割は整数をコンピュータのメモリ上に格納することにあり、その中でも特に大きな数値を扱うために設計されている。コンピュータが扱うデータには様々な種類があるが、整数を格納するための基本的なデータ型としてint型が存在する。しかし、int型が表現できる数値の範囲には限りがあり、より大きな数値を扱う必要がある場面では不十分となる。そこで、int型よりも広い範囲の数値を扱えるlong型が用意された。そして、技術の進歩に伴い、long型でさえも表現できない、さらに巨大な数値を扱う必要性が生じたことから、long long型が導入された。つまり、long long型は「とても大きな整数を扱うための箱」と理解することができる。現代のコンピュータシステムでは、扱うデータ量が飛躍的に増大しており、ファイルサイズ、データベースのレコード数、天文学的な計算結果など、従来のデータ型では桁が溢れてしまう(オーバーフローする)ケースが頻繁に発生する。long long型は、こうした大規模データを正確に処理するための基盤となる重要なデータ型である。
long long型について、より深く掘り下げて解説する。C言語およびC++において、long long型は一般的に64ビット(8バイト)のメモリ領域を占有する符号付き整数型として実装される。この「64ビット」というサイズが、この型が表現できる数値の範囲を決定づける。符号付きのlong long型の場合、表現できる数値の範囲は、-9,223,372,036,854,775,808から9,223,372,036,854,775,807までとなる。これは約-922京から922京という、非常に広大な範囲をカバーする。一方で、負の値を扱う必要がなく、0以上の整数のみを扱いたい場合は、符号なしを表すunsignedを付けてunsigned long long型を使用する。この場合、表現範囲は0から18,446,744,073,709,551,615までとなり、正の方向へさらに大きな数値を格納できる。この型は、C言語では1999年に改定されたC99規格で、C++言語では2011年に改定されたC++11規格で正式に標準化された。それ以前は、各コンパイラが独自の拡張機能として提供していたため、移植性に課題があったが、標準化によって多くの環境で統一的に利用できるようになった。
long long型の具体的な利用シーンは多岐にわたる。例えば、世界中のユーザーを抱える大規模なWebサービスのユーザーIDや、SNSの投稿に付与される一意な識別子などは、時間とともに増加し続け、32ビット整数型(約42億)の範囲を容易に超えてしまうため、long long型が不可欠となる。また、現代のコンピュータではテラバイト単位のストレージも珍しくなく、そのファイルサイズをバイト単位で正確に表現するには64ビット整数が必要である。金融システムにおける高精度の計算や、物理シミュレーション、暗号技術など、計算の過程で中間結果が巨大な値になる科学技術計算の分野でも頻繁に用いられる。UNIX時間をミリ秒やナノ秒単位で扱う場合も、32ビットでは数十年で桁あふれを起こしてしまうため、64ビットのlong long型が必須となる。
このように非常に便利なlong long型だが、使用する際にはいくつかの注意点がある。第一に、long long型であっても表現できる数値には限界があり、その範囲を超える計算を行うとオーバーフローが発生する。オーバーフローの挙動は符号付きか符号なしかで異なり、予期せぬバグの原因となるため、扱う数値が最大でどの程度になるかを常に見積もる必要がある。第二に、パフォーマンスへの影響である。long long型はint型に比べて2倍のメモリを消費する。また、CPUのアーキテクチャによっては、32ビット演算よりも64ビット演算の方がわずかに低速になる場合がある。そのため、必要もないのに全ての整数変数をlong long型にするのは非効率であり、扱う数値の大きさに応じて適切なデータ型を選択する設計が重要となる。最後に、移植性の問題である。C/C++の規格では、long long型のサイズを「少なくとも64ビット」と定めているに過ぎない。ほとんどの現代的な環境では64ビットとして扱われるが、厳密にサイズを保証したい場合は、<cstdint>ヘッダで定義されるint64_tやuint64_tといった固定幅整数型を使用することが推奨される。これにより、どの環境でも意図した通りの64ビット整数として扱われることが保証され、より堅牢なプログラムを記述することができる。