LRDIMM(エルアールディム)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

LRDIMM(エルアールディム)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

ロードレジスタードデュアルインラインメモリモジュール (ロードレジスタードデュアルインラインメモリモジュール)

英語表記

LRDIMM (エルアールディム)

用語解説

LRDIMMは、Load Reduced Dual In-line Memory Moduleの略称であり、日本語では負荷軽減DIMMと訳される。主にサーバーやワークステーションといった、高性能かつ高い信頼性が求められるコンピュータシステムで利用されるメモリモジュールの一種である。その最大の目的は、CPUに内蔵されたメモリコントローラにかかる電気的な負荷を大幅に軽減することにより、従来のメモリモジュールでは実現不可能なレベルの大容量メモリをシステムに搭載可能にすることにある。一般的なパーソナルコンピュータで使われるメモリモジュールとは異なる設計思想を持ち、特に膨大なメモリ容量を必要とする特定の用途でその価値を発揮する。

LRDIMMの特性を理解するためには、まず他の主要なメモリモジュールであるUDIMMやRDIMMとの違いを把握することが重要である。UDIMM(Unbuffered DIMM)は、メモリコントローラとメモリーチップ(DRAM)の間に信号を中継する部品を持たず、直接信号のやり取りを行う。この構造はシンプルで遅延が少ない利点があるが、メモリコントローラに直接的な電気的負荷がかかるため、搭載できるメモリモジュールの数や容量に厳しい制限がある。一般的にデスクトップPCやノートPCで採用されている。

次に、サーバーで広く利用されているのがRDIMM(Registered DIMM)である。RDIMMは、コマンド信号やアドレス信号を一時的に保持し、信号波形を整えてからDRAMに伝達する「レジスターチップ」を基板上に搭載している。これにより、コマンド信号やアドレス信号に関する電気的負荷が軽減され、UDIMMよりも多くのメモリモジュールを安定して動作させることが可能になる。しかし、データ信号に関してはUDIMMと同様にメモリコントローラとDRAMが直接やり取りするため、データバス上の負荷は依然として残る。

LRDIMMは、このRDIMMの概念をさらに一歩進めたものである。RDIMMがコマンド信号とアドレス信号のみをバッファリングするのに対し、LRDIMMは「メモリバッファ(MB)」と呼ばれる専用チップを搭載する。このメモリバッファは、コマンド信号やアドレス信号に加えて、RDIMMでは対象外だったデータ信号も一旦受け取り、信号を整形・増幅してからDRAMに送る役割を担う。つまり、CPUのメモリコントローラとDRAMの間で行われる全ての主要な信号のやり取りを、メモリバッファが仲介する形となる。

このメモリバッファの介在により、CPUのメモリコントローラから見ると、多数のDRAMチップと直接通信しているのではなく、モジュールごとに一つのメモリバッファと通信しているかのように見える。これにより、メモリコントローラにかかる電気的負荷が劇的に低減される。電気的負荷が減ることで、一つのメモリチャネル(メモリコントローラからメモリスロットまでの信号経路)あたりに接続できるメモリのランク数(DRAMチップの論理的なグループ)を大幅に増やすことができる。結果として、RDIMMを搭載した場合と比較して、サーバー全体で搭載できる物理メモリの総量を飛躍的に増大させることが可能となる。例えば、1つのCPUソケットあたり数テラバイトといった大容量メモリ構成は、LRDIMMの技術によって実現されている。

LRDIMMの最大のメリットは、この圧倒的な大容量化を実現できる点にある。仮想化基盤で非常に多くの仮想マシンを同時に稼働させる場合や、全てのデータをメモリ上に展開して高速処理を行うインメモリデータベース、あるいは大規模な科学技術計算やビッグデータ分析など、メモリ容量がシステムの性能を直接左右するような用途において、LRDIMMは不可欠な存在となる。また、メモリ容量を増やした場合でも、負荷が軽減されているためメモリアクセス速度の低下を最小限に抑えることができ、大容量と高速性を両立できる点も大きな利点である。

一方で、LRDIMMにはいくつかの注意点も存在する。第一に、レイテンシ(遅延)の増加である。メモリバッファが信号を中継する処理を挟むため、データアクセスにはRDIMMと比較してわずかな遅延が生じる。そのため、絶対的なメモリ容量よりもアクセスの応答速度が最優先されるような特定の処理では、RDIMMの方が有利な場合もある。第二に、消費電力とコストである。メモリバッファチップ自体が電力を消費するため、同じ容量のRDIMMと比較してモジュールあたりの消費電力が高くなる傾向がある。また、高度なチップを搭載していることから、製造コストもRDIMMより高価になるのが一般的である。最後に、互換性の問題がある。LRDIMMを使用するためには、CPUとマザーボードがLRDIMMに正式に対応している必要がある。また、RDIMMやUDIMMといった異なる種類のメモリモジュールと一つのシステム内に混在させることは原則としてできない。

結論として、LRDIMMはサーバーシステムのメモリ搭載量を最大化するために特化した高性能メモリモジュールである。いくつかのトレードオフは存在するものの、それを補って余りある大容量化というメリットは、現代のデータセンターやエンタープライズシステムにおいて極めて重要である。システムエンジニアは、構築するシステムの要件を深く理解し、必要なメモリ容量、性能、コストのバランスを考慮した上で、RDIMMやLRDIMMといった最適なメモリを選択する知識が求められる。

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