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NATループバック(ナットループバック)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

NATループバック(ナットループバック)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

NATループバック (ナットループバック)

英語表記

NAT loopback (ナット ループバック)

用語解説

NATループバックとは、ローカルネットワーク内に存在するクライアントが、同じローカルネットワーク内に存在するサーバーに対して、そのサーバーのグローバルIPアドレスを使用してアクセスしようとした際に発生する現象、またはその際にルーターが実行する特殊なルーティング処理を指す。これは、特に自宅や小規模オフィスなどでサーバーを運用し、外部からのアクセスだけでなく、内部からも同じドメイン名やグローバルIPアドレスを使ってアクセスしたい場合に直面する可能性がある、ネットワークの挙動の一つである。この現象を理解し適切に対応することは、システムエンジニアを目指す上で重要なネットワークの基礎知識となる。

詳細に説明する。まず、この問題の背景となるNAT(ネットワークアドレス変換)の基本的な仕組みから確認する。一般的に、企業や家庭のローカルネットワークでは、デバイスはプライベートIPアドレスと呼ばれる、インターネット上では直接ルーティングできないアドレスを使用する。これらのデバイスがインターネット上のリソースと通信する際には、ルーターがNAT機能を使い、プライベートIPアドレスをインターネット上で唯一識別可能なグローバルIPアドレスに変換する。これにより、限られたグローバルIPアドレスを複数のデバイスで共有し、インターネットに接続することが可能となる。

次に、外部からローカルネットワーク内のサーバーにアクセスするケースを考える。例えば、自宅にウェブサーバーを立てて外部に公開したい場合、ルーターには「ポートフォワーディング」の設定が必要になる。これは、ルーターのグローバルIPアドレス宛の特定のポート(例えばウェブサーバーの80番ポート)への通信を、ローカルネットワーク内の特定のサーバーのプライベートIPアドレスとポートへ転送する設定である。外部のクライアントがサーバーにアクセスする際は、ルーターのグローバルIPアドレスとポート番号を指定して通信を開始し、ルーターがその通信を適切に内部サーバーへ転送することで、アクセスが成功する。

しかし、問題となるのは、ローカルネットワーク内のクライアントが、同じくローカルネットワーク内のサーバーにアクセスする際に、サーバーのグローバルIPアドレスを指定した場合である。このとき、クライアントから送信されたパケットは、まずルーターに到達する。ルーターはパケットの宛先が自身のグローバルIPアドレスであることを認識するが、送信元もまた自身の管理するローカルネットワーク内であるため、通常の外部からのアクセスとは状況が異なる。

ルーターがNATループバック機能を備えていない場合、このパケットの処理に問題が生じる可能性がある。一つの典型的な挙動は、ルーターがこのパケットを外部インターネットへの通信とみなし、ポートフォワーディングのルールを適用せずに、そのまま外部へ転送しようとすることである。しかし、パケットの送信元IPアドレスはプライベートIPアドレスであるため、インターネット上のルーターはそのようなパケットを不正なものと判断し、破棄してしまう。結果として、クライアントはサーバーと通信できず、アクセスは失敗する。

一方で、NATループバック機能(別名、ヘアピンNATやNATリフレクション)を持つルーターでは、この特殊な状況を適切に処理できる。ルーターは、ローカルネットワーク内のクライアントからグローバルIPアドレス宛に送られてきたパケットを検知すると、通常のNATとは異なる特別な処理を実行する。ルーターはパケットの送信元IPアドレスを自身のLAN側インターフェースのIPアドレス(プライベートIPアドレス)に変換し、宛先IPアドレスをポートフォワーディング設定に基づいてサーバーのプライベートIPアドレスに変換して、サーバーへ転送する。これにより、サーバーはクライアントからのアクセスを、あたかもローカルネットワーク内の別のデバイスからのアクセスであるかのように受け取り、正常に通信が成立する。この処理は、パケットがルーターで「Uターン」するかのように見えることから、「ヘアピンNAT」とも呼ばれる。

ルーターがNATループバック機能を持たない場合の対処法はいくつか存在する。最も直接的で簡単な方法は、ローカルネットワーク内のクライアントがサーバーにアクセスする際には、サーバーのグローバルIPアドレスではなく、直接サーバーのプライベートIPアドレスを指定することである。例えば、ウェブブラウザで「http://192.168.1.100」のように入力してアクセスする。しかし、この方法では、内部と外部でアクセス方法を使い分ける必要があり、特にドメイン名を使用してアクセスしたい場合には不便である。

より洗練された対処法としては、「DNSスプリットホライズン(Split-horizon DNS)」の実装がある。これは、ローカルネットワーク内に専用のDNSサーバーを設置し、同じホスト名(ドメイン名)に対して、外部からのDNS問い合わせにはサーバーのグローバルIPアドレスを返し、内部からのDNS問い合わせにはサーバーのプライベートIPアドレスを返すように設定する方法である。これにより、クライアントは常に同じドメイン名を使用してアクセスできるが、ルーターを介して適切なIPアドレスに解決されるため、内部からはプライベートIPアドレス、外部からはグローバルIPアドレスを使って透過的にサーバーへアクセスできる。この方法は、規模の大きいネットワークや企業環境で一般的に採用される。

また、一部の高度なネットワーク機器、特に高性能なルーターやファイアウォールでは、LAN側からの特定のグローバルIPアドレス宛のトラフィックを、特定の内部IPアドレスへルーティングするための静的なNATルールやルーティングポリシーを明示的に設定できる場合がある。これはルーターの機能や設定インターフェースに依存するため、使用している機器の取扱説明書やベンダーのドキュメントを確認することが必要である。

NATループバックは、ネットワークの基本的なルーティングとアドレス変換の仕組みが複雑に絡み合う現象であり、特にサーバー管理者やネットワークエンジニア、そしてこれからシステムエンジニアを目指す者にとって、その原理と対処法を理解しておくべき重要な概念である。

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