Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

PITR(ピーアイティーアール)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

PITR(ピーアイティーアール)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

継続的アーカイブ復旧 (ケイゾクテキアーカイブフッコウ)

英語表記

PITR (ピーアイティーアール)

用語解説

PITRは「Point-In-Time Recovery」の略であり、日本語では「特定の時点への復旧」と訳される。これは、データベースをはじめとするシステム内のデータを、過去の任意の具体的な時点、例えば「昨日午後3時15分0秒」や「今日の午前10時0秒」といった、非常に細かい時間単位で指定された状態に戻すためのデータ復旧技術である。システムエンジニアを目指す者にとって、データ損失は避けて通れない課題であり、PITRはその損失からデータを守り、ビジネスの継続性を確保するために不可欠な概念となる。データの誤削除、システム障害、マルウェア感染など、様々な原因でデータが損なわれた際に、被害を最小限に抑え、事前の状態にまでシステムを回復させる強力な手段として利用される。

PITRの仕組みを理解するには、まず「バックアップ」と「トランザクションログ」という二つの要素が重要となる。通常、データ復旧のためには、定期的にシステム全体のデータをコピーするバックアップが取得される。しかし、このバックアップだけでは、バックアップが取得された時点から障害発生までの間に発生したデータ変更は失われてしまう。そこでPITRでは、この失われる可能性のあるデータ変更を補完するために、データベースに加えられたすべての変更履歴を「トランザクションログ」として継続的に記録し続ける。トランザクションログは、データベースへのあらゆる操作(データの追加、更新、削除など)を記録したもので、これを「ジャーナル」や「WAL(Write-Ahead Log)」と呼ぶデータベースシステムもある。ログは、各操作がいつ、どのような内容で行われたかを厳密に記録しており、データベースの整合性を保つ上でも中心的な役割を果たす。

データ復旧が必要となった場合、PITRは以下のような手順で機能する。まず、復旧の基準となる直近のフルバックアップ、または増分・差分バックアップをシステムにリストアする。この時点では、データベースはバックアップが取得された時点の状態に戻る。次に、そのバックアップが取得された時点から、実際に復旧したい特定の時点までのトランザクションログを順番に、かつ自動的に適用していく。このログを適用していくプロセスを「ロールフォワード」と呼ぶ。例えば、午前8時にバックアップを取得し、午前10時にデータが誤って削除されたとする。この場合、午前8時のバックアップをリストアした後、午前8時から午前9時59分59秒までのトランザクションログを適用することで、データが削除される直前の状態へとデータベースを正確に戻すことができる。指定した時点以降に発生したトランザクションは適用されないため、誤って削除された操作や、その後に発生した不要な変更はなかったことになる。

PITRの最大のメリットは、その復旧の粒度が極めて細かい点にある。秒単位での復旧も可能であるため、人為的な操作ミス、アプリケーションのバグによるデータの破壊、あるいは悪意ある攻撃によるデータ改ざんなど、特定の瞬間に発生した問題に対処する際に絶大な効果を発揮する。これにより、失われるデータの量を最小限に抑え、システムが停止する時間を短縮できるため、RPO(Recovery Point Objective:許容されるデータ損失量)の目標を高く設定し、ビジネスの継続性を大幅に向上させることが可能となる。単に最新のバックアップをリストアするだけでは、バックアップ取得以降のデータは必ず失われるが、PITRではその間のデータもトランザクションログによって保護されるため、より堅牢なデータ保護が実現する。

一方で、PITRを導入し運用する上での考慮事項も存在する。トランザクションログはデータベースへの変更が発生するたびに生成され続けるため、その記録と保存には相応のストレージ容量が必要となる。また、ログを安全に、かつ継続的に保存するための運用管理も複雑になる傾向がある。ログの欠損や破損は、PITRによる復旧を不可能にするため、ログのバックアップ戦略も非常に重要だ。さらに、復旧時に大量のトランザクションログを適用するプロセスは、データ量やログの量によっては時間を要する場合がある。この復旧時間はRTO(Recovery Time Objective:許容されるシステム停止時間)に直接影響するため、システム設計時にはこれらの要素を考慮し、適切なバックアップ・リカバリ戦略を策定する必要がある。

PITRは、特にデータの正確性と可用性が極めて重要視されるシステム、例えば金融取引システム、オンラインショッピングサイト、医療情報システムなどで広く活用されている。誤ったデータベースの更新処理が実行されてしまった場合や、アプリケーションの脆弱性を突かれてデータが書き換えられた場合など、様々な論理障害からの回復手段としてその真価を発揮する。また、災害からの復旧計画においても、特定の時点へのデータ復元は重要な要素となる。システムエンジニアにとって、PITRは単なる復旧技術ではなく、企業のデータ資産と信頼を守るための基本的な知識であり、その仕組みと運用に関する深い理解が求められるのである。

関連コンテンツ