遠隔起動(エンカクキドウ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

遠隔起動(エンカクキドウ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

遠隔起動 (エンカクキドウ)

英語表記

remote boot (リモートブート)

用語解説

遠隔起動とは、物理的にその場にいない場所から、ネットワークを通じてコンピュータや機器を起動させる技術のことである。電源がオフの状態、または休止状態、スリープ状態にあるデバイスを、遠隔操作によって起動させることが可能になる。

遠隔起動の基本的な仕組みは、ネットワークインターフェースカード (NIC) が、電源オフの状態でもわずかな電力を消費し、特定のネットワークパケットを監視している点にある。この特定のネットワークパケットを「マジックパケット」と呼ぶ。マジックパケットには、起動させたい機器のMACアドレスが含まれており、NICがこのパケットを受信すると、マザーボードに起動信号を送り、コンピュータが起動する。

遠隔起動を実現するためには、いくつかの条件を満たす必要がある。まず、遠隔起動させたい機器が、Wake on LAN (WOL) という機能をサポートしている必要がある。WOLは、NICがマジックパケットを認識し、システムを起動させるための規格である。多くの現代的なコンピュータやマザーボードは、WOL機能を標準で搭載しているが、BIOSやUEFIの設定で有効にする必要がある場合がある。

次に、ネットワーク環境が遠隔起動に対応している必要がある。マジックパケットはブロードキャストアドレス宛に送信されるため、同一ネットワークセグメント内に存在する必要がある。ルーターやファイアウォールなどのネットワーク機器が、ブロードキャストパケットを遮断しないように設定する必要がある。異なるネットワークセグメントから遠隔起動を行う場合は、ルーターの設定を変更したり、VPNなどの技術を利用したりする必要がある。

具体的な遠隔起動の手順は以下のようになる。まず、BIOS/UEFI設定でWOL機能を有効にする。次に、オペレーティングシステム (OS) 上でNICの電源管理設定を確認し、WOL関連のオプションが有効になっていることを確認する。Windowsの場合、「デバイスマネージャー」からNICのプロパティを開き、「電源の管理」タブで「このデバイスで、コンピューターのスタンバイ状態を解除できるようにする」と「マジックパケットでのみ、コンピューターのスタンバイ状態を解除できるようにする」にチェックを入れる。

遠隔起動を行うためのソフトウェアやツールも多数存在する。これらのツールは、通常、マジックパケットを生成し、ネットワークに送信する機能を提供する。スマートフォンアプリやWebインターフェースを通じて、遠隔から簡単に起動操作を行うことができるものもある。

遠隔起動は、様々な場面で役立つ。例えば、オフィスにいない時に自宅のコンピュータにアクセスしたい場合や、サーバーを遠隔からメンテナンスしたい場合、組み込みシステムを遠隔から制御したい場合などに利用される。また、省エネルギーの観点からも有効である。必要な時だけコンピュータを起動し、使用しない時は電源をオフにしておくことで、消費電力を削減することができる。

セキュリティ上の注意点としては、マジックパケットは認証機能を持たないため、悪意のある第三者がマジックパケットを送信することで、不正にシステムを起動させることが可能になるというリスクがある。このリスクを軽減するためには、WOL機能を有効にするネットワークを信頼できるネットワークに限定したり、VPNなどのセキュアな接続を経由してマジックパケットを送信したりするなどの対策を講じる必要がある。また、MACアドレスフィルタリングなどのセキュリティ機能を活用することも有効である。

近年では、クラウドサービスやIoTデバイスの普及に伴い、遠隔起動のニーズはますます高まっている。クラウドサーバーを遠隔から起動したり、スマートホームデバイスを遠隔から制御したりするケースが増えている。これらの環境では、より高度なセキュリティ対策や、より柔軟なネットワーク構成が求められる。例えば、クラウド環境では、クラウドプロバイダーが提供するAPIを利用して、セキュアな遠隔起動を実現することが一般的である。IoTデバイスでは、デバイス認証や暗号化通信などの技術を組み合わせることで、セキュリティを強化する必要がある。

関連コンテンツ

遠隔起動(エンカクキドウ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説 | いっしー@Webエンジニア