シャーディング (シャーディング) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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シャーディング (シャーディング) の読み方

日本語表記

シャーディング (シャーディング)

英語表記

sharding (シャーディング)

シャーディング (シャーディング) の意味や用語解説

シャーディングは、大規模なデータベースシステムにおいて、その性能とスケーラビリティを劇的に向上させるための技術である。これは、単一の巨大なデータベースを複数の小さな独立したデータベース(これらを「シャード」と呼ぶ)に分割し、それぞれを異なるサーバーに分散配置するアプローチを指す。この水平分割(パーティショニング)の手法を用いることで、データベースにかかる負荷を複数のサーバーに分散させ、データ処理能力を高めることが可能となる。例えば、膨大な数のユーザーが利用するオンラインサービスや、日々大量のデータが生成されるIoTプラットフォームなどでは、すべてのデータを一つのデータベースサーバーで管理すると、データ量の増加やアクセス集中により、応答速度の低下、処理遅延、最終的にはシステム全体の停止といった問題が発生するリスクが高まる。シャーディングを導入することで、データを物理的に複数のサーバーに分散させ、各サーバーが担当するデータ量を削減し、並行して処理を行うことができるため、システム全体のパフォーマンスと安定性が大幅に改善されるのである。 詳細に説明すると、シャーディングの運用には、データをどのシャードに格納するかを決定する「シャーディングキー」の選定と、そのキーに基づくデータ分配ロジックが不可欠となる。シャーディングキーは、データベース内の特定のカラム(例:ユーザーID、顧客ID、地域コード、タイムスタンプなど)が利用される。システムは、データの読み書きリクエストを受け取った際、このシャーディングキーの値を参照し、要求されたデータがどのシャードに格納されているかを判断し、適切なシャードに対してクエリをルーティングする。 シャーディングの主な戦略としては、いくつかの種類が存在する。一つは、レンジベースシャーディングで、シャーディングキーの値の範囲に基づいてデータを分割する方法である。例えば、ユーザーIDが1から10000の範囲のデータはシャードAへ、10001から20000のデータはシャードBへ、といった形で分割する。もう一つは、ハッシュベースシャーディングで、シャーディングキーの値をハッシュ関数に通し、そのハッシュ値に基づいてシャードを決定する方法である。この方法では、データが比較的均等に分散される傾向がある。その他にも、特定のキー値を特定のシャードにマッピングするリストベースシャーディングや、シャーディングキーとシャードのマッピング情報を管理する専用のディレクトリサーバーを利用するディレクトリベースシャーディングなどがある。 シャーディングの最大の利点は、極めて高いスケーラビリティを実現できる点にある。データ量やトランザクションの増加に応じて、新たなシャード(サーバー)をシステムに簡単に追加するだけで、全体の容量や処理能力を線形的に拡張できる。これにより、単一サーバーが持つメモリ、CPU、ストレージなどのリソース制約に直面することなく、システムの継続的な成長をサポートできる。また、各シャードが独立して動作するため、一つのシャードに障害が発生した場合でも、システム全体が停止するリスクを低減し、他のシャードは引き続き稼働できるため、システムの可用性が向上する。さらに、各シャードが扱うデータ量が少ないため、個々のクエリの実行速度が向上し、データベースのI/O性能も改善される。 しかし、シャーディングには考慮すべき課題も少なくない。最も重要な課題の一つは、システムの全体的な複雑性が増大することである。シャーディングロジックをアプリケーション層に組み込むか、あるいは専用のプロキシ層を導入する必要があるため、システム全体の設計、実装、そして運用が、単一のデータベースシステムに比べて格段に複雑になる。特に、適切なシャーディングキーの選定は極めて重要であり、不適切なキーを選択すると、特定のシャードにデータやアクセスが集中する「ホットシャード」が発生し、そこがボトルネックとなってシステム全体のパフォーマンスを低下させる可能性がある。また、複数のシャードにまたがるデータに対するクエリ(クロスシャードクエリ)や、トランザクションの一貫性(ACID特性)の維持は非常に困難となる。例えば、異なるシャードに保存されたテーブル間でデータを結合する(JOIN操作)ことは、一般的なリレーショナルデータベースのように単純には行えず、アプリケーション側で複雑なロジックを実装するか、性能的な妥協が必要となる場合が多い。さらに、システムの成長に伴ってデータが不均等になった場合や、新たなシャードを追加する際に、データを再分散する「リシャーディング」という作業も大きな課題である。このプロセスは大量のデータ移動を伴い、サービス停止や性能劣化を引き起こす可能性があるため、慎重な計画と実行が求められる。 シャーディングは、単一データベースの限界に直面した際に、その性能と拡張性を飛躍的に向上させるための強力な解決策となる技術であるが、その導入には高い技術的理解と慎重な計画が不可欠である。これらのメリットと課題を総合的に考慮し、システムの要件と将来の成長を見据えて適切に設計することが、シャーディングを成功させる鍵となる。

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