【ITニュース解説】Cracking Consensus Algorithms for System Design Interviews
2025年09月08日に「Dev.to」が公開したITニュース「Cracking Consensus Algorithms for System Design Interviews」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
分散システムで各コンピュータの情報を一致させる合意形成アルゴリズム「Raft」。リーダーを選出し、過半数の合意を得てデータを更新することで、一部が故障してもシステム全体の安定稼働を保つ。Kubernetes等で利用される。
ITニュース解説
現代のITシステムは、単一のコンピューターだけでなく、複数のコンピューターが連携して動作する「分散システム」が主流である。このようなシステムでは、多くのコンピューターが同時に動き、情報を共有する。しかし、コンピューターは故障したり、ネットワークに問題が生じたりすることが避けられないため、複数のコンピューター間で常に同じ情報や状態を保つことは非常に難しい課題となる。この課題を解決し、たとえ一部のコンピューターに障害が発生しても、システム全体で「みんなで合意する」ための仕組みが「コンセンサスアルゴリズム」である。これは、データベースのデータやシステムの設定情報など、重要なデータが複数のコンピューター間で一貫して維持されることを保証する、分散システムの根幹をなす技術だ。システム設計の面接などでも、信頼性の高い分散システムを構築するための重要なテーマとして扱われることが多い。
数あるコンセンサスアルゴリズムの中でも、「Raft(ラフト)」は、その分かりやすさと効果的な動作原理から広く利用されている。Raftは、複雑になりがちな分散合意のプロセスを、よりシンプルに理解しやすく設計されている点が特徴的だ。
Raftの仕組みを理解するために、いくつかの主要な要素がある。まず、システムを構成する各コンピューターは、その時々で「リーダー」「フォロワー」「候補者」のいずれかの役割を持つ。リーダーは、クライアント(システムを利用するユーザーや他のアプリケーション)からの書き込み要求(データの更新など)をすべて受け付け、その変更内容を記録する中心的な役割を果たす。そして、その変更内容を他のすべてのフォロワーに伝え、記録させる責任を負う。フォロワーは、リーダーからの指示に従い、リーダーが送ってきた変更記録(これを「ログ」と呼ぶ)を自分のコンピューターに保存する役割を持つ。フォロワー自身が直接クライアントからの書き込み要求を受け付けることはなく、もし受け取った場合はリーダーに転送する。候補者は、リーダーが故障したなどの理由でリーダーが不在になった際に、新しいリーダーになるために立候補し、他のノードに投票を依頼している状態のコンピューターを指す。
システムの変更履歴であるログは、Raftにおいて非常に重要だ。リーダーは、クライアントからの要求に応じて新しい変更をログに追加し、そのログをすべてのフォロワーに複製する。これにより、システム内のすべてのコンピューターが同じ変更履歴を共有し、結果として同じデータ状態を保つことができる。また、「期間(Term)」と呼ばれる論理的な時間単位も存在する。それぞれの期間には、最大で一人のリーダーしか存在しないことが保証されており、リーダーが故障して新しいリーダーが選出されると、新しい期間が始まる。リーダーは定期的に「私はまだリーダーです」という「ハートビート」メッセージをフォロワーに送り、フォロワーはこれを受け取ることでリーダーが正常に動作していることを確認する。もしフォロワーが一定期間ハートビートを受け取れない場合、リーダーが故障したと判断し、新しいリーダーを選出するためのプロセスが開始される。
Raftの具体的な動作は、まず「リーダー選出」から始まる。リーダーが不在になったことを検知したフォロワーは、自身を候補者に変え、他のノードに「私に投票してください」と依頼するメッセージを送る。過半数のノードから投票を得た候補者が新しいリーダーとなる。もし複数の候補者が同時に立候補し、誰も過半数の票を得られなかった場合は、短いランダムな時間待ってから新しい期間で再度選挙が行われる。新しいリーダーが選出されたら、次に「ログ複製」のプロセスが始まる。クライアントからの書き込み要求はすべてリーダーが受け付け、その内容を自分のログに追加する。リーダーは追加したログをすべてのフォロワーに送る。フォロワーはログを受け取って自分のログに追加し、リーダーにその旨を返信する。リーダーは、過半数のフォロワーからログの受け取り確認を得られた時点で、そのログの内容を「確定(コミット)」し、クライアントに処理が成功したことを通知する。このコミットされたログの内容が、システム全体で合意された正式な状態となる。
Raftは、分散システムにおいて非常に重要な「安全性」と「耐障害性」を保証する。安全性とは、システムが矛盾した状態にならないことを意味し、Raftでは各期間に必ず一人のリーダーしか存在しないこと、そしてログの変更が確定されるためには過半数のノードの合意が必要であることを保証する。これにより、たとえ複数のコンピューターが同時に動作していても、データの一貫性が保たれる。耐障害性とは、一部のコンピューターが故障してもシステム全体が機能し続ける能力を指し、Raftではシステムを構成するノードの過半数が正常に動作していれば、リーダーが故障したり、一部のフォロワーが停止したりしても、システム全体は引き続き機能する。例えば、5台のノードでRaftクラスターを構築した場合、最大2台までが同時に故障してもシステムは動き続けることができる。
Raftをシステムに導入する際には、いくつかの設計上の考慮事項がある。一つは「クォーラム」の概念だ。リーダー選出やログの確定には、全体のノード数の過半数(例えば、N台のノードがあれば(N+1)/2台)の同意が必要となる。この過半数のノード群がクォーラムであり、システムの一貫性と耐障害性を確保する上で不可欠だ。また、「パフォーマンス」も重要な要素だ。すべての書き込み要求はリーダーを通じて行われるため、リーダーが処理のボトルネックになる可能性がある。非常に大規模なシステムでは、データを複数のグループに分割して管理する「シャーディング」のような手法と組み合わせることで、パフォーマンスを向上させることを検討する必要がある。さらに、「永続性」も確保されなければならない。ログはコンピューターのストレージに耐久的に保存されるため、コンピューターがクラッシュしても、保存されたログからシステムの状態を回復できる。最後に、「ネットワーク分断」について。Raftは、ネットワークが分断され、ノードの一部がお互いに通信できなくなるような状況(パーティション)が発生した場合、データの一貫性を最も優先する。そのため、ネットワークが回復し、過半数のノードが再び通信できるようになるまで、システムの書き込み操作は一時的に停止する。これは、一貫性(Consistency)と可用性(Availability)の間で、一貫性を選択するCAP定理のCP(一貫性優先)モデルに相当する。
Raftは理論上の概念だけでなく、実際のプロダクトで幅広く利用されている。例えば、コンテナオーケストレーションシステムKubernetesの心臓部とも言える分散設定管理ツール「etcd」では、分散環境での設定情報を一貫して管理するためにRaftが使われている。また、分散SQLデータベースの「TiDB」や「CockroachDB」では、データベースのデータが複数のノード間で一貫して複製されるようにRaftを利用し、高い信頼性を実現している。サービスディスカバリや設定管理ツールとして知られる「Consul」も、Raftを使ってサービスの状態を共有し、常に最新で一貫した情報を保っている。
このように、Raftは分散システムにおいて複数のコンピューター間で安全かつ確実に合意を形成するための重要なアルゴリズムであり、リーダー選出、ログ複製、クォーラムといったシンプルかつ強力な仕組みにより、高い一貫性と耐障害性を実現している。Raftの動作原理を深く理解することは、信頼性の高い分散システムを設計・構築する上で不可欠であり、現代のITインフラを支える基盤技術の一つとして、システムエンジニアを目指す上でぜひ習得しておきたい知識である。