スタティック変数 (スタティックヘン スウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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スタティック変数 (スタティックヘン スウ) の読み方

日本語表記

静的変数 (セイテキヘンシュウ)

英語表記

static variable (スタティック・ヴァリアブル)

スタティック変数 (スタティックヘン スウ) の意味や用語解説

スタティック変数とは、プログラムの実行期間全体を通じて存在し続ける変数である。一般的なローカル変数(自動変数とも呼ばれる)が、その変数が宣言された関数やブロックの実行中のみ存在するのに対し、スタティック変数は一度生成されるとプログラムの終了時までメモリ上に確保され、その値を保持し続ける特性を持つ。この「プログラムの実行期間全体」という生存期間(ライフタイム)が、スタティック変数の最も重要な特徴である。また、初期化はプログラムの起動時に一度だけ行われ、明示的に初期化しなかった場合は、数値型なら0、ポインタ型ならNULLなど、特定の初期値が自動的に割り当てられる。 さらに詳しく説明すると、スタティック変数には主に二つの種類がある。一つは関数内で宣言されるローカルスコープのスタティック変数、もう一つはファイルスコープで宣言されるスタティック変数である。 関数内で宣言されるスタティック変数は、その変数が宣言された関数内でのみアクセス可能である。しかし、通常のローカル変数と異なり、関数が終了してもその値は破棄されずに保持される。次に同じ関数が呼び出された際には、前回の呼び出しで保持されていた値から処理を再開できる。これは、関数内で呼び出し回数をカウントしたり、特定の状態を継続的に管理したりする際に非常に有用である。例えば、ある関数が特定の処理を最初の一度だけ実行し、以降はスキップするといった制御を行う場合、関数内にスタティック変数を設けてその状態を記録することが可能である。これにより、グローバル変数を使用することなく、関数の内部状態を関数自身で管理できるため、コードの独立性が高まり、予期せぬ副作用のリスクを低減できる。 もう一つのファイルスコープで宣言されるスタティック変数は、その変数が宣言されたソースファイル内でのみアクセス可能である。`static`キーワードを付けずにファイルスコープで宣言された通常のグローバル変数は、プログラム内のどのソースファイルからでもアクセス可能であるが、スタティックグローバル変数はその可視範囲を宣言されたファイルに限定する。この特性をリンケージの制限と呼ぶ。これにより、特定のデータや設定情報を、そのソースファイル内で定義された複数の関数間で共有しつつも、他のソースファイルからの不用意な変更を防ぎ、名前の衝突(ネームコンフリクト)を回避できる。これは、大規模なソフトウェア開発において、モジュール間の依存関係を明確にし、コードの保守性や再利用性を向上させる上で非常に重要である。 スタティック変数は、プログラムの実行開始前に静的メモリ領域(データセグメントやBSSセグメント)に割り当てられる。これは、プログラムの実行中に動的にスタック領域に割り当てられる自動変数や、ヒープ領域に割り当てられる動的確保メモリとは異なるメモリ管理方式である。静的メモリ領域はプログラムの実行期間中ずっと確保されているため、スタティック変数がその値を保持し続けることができるのである。このメモリ割り当ての特性により、関数呼び出しごとにメモリの確保・解放を行うオーバーヘッドがなく、パフォーマンス面で有利な場合もある。 このように、スタティック変数はその生存期間と可視範囲の特性によって、プログラミングにおいてデータの永続性やモジュールのカプセル化を実現するための強力な手段となる。しかし、値を保持し続ける特性から、特に並行処理環境では複数のスレッドから同時にアクセスされることによる競合状態(レースコンディション)に注意が必要である。適切に同期メカニズムを導入しないと、予期せぬ動作を引き起こす可能性があるため、その利用には慎重な設計が求められる。

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