グローバル変数 (グローバルヘンシュウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
グローバル変数 (グローバルヘンシュウ) の読み方
日本語表記
グローバル変数 (グローバルヘン スウ)
英語表記
global variable (グローバルバリアブル)
グローバル変数 (グローバルヘンシュウ) の意味や用語解説
グローバル変数とは、プログラムのどこからでもアクセスできる変数のことを指す。特定の関数やブロックの中だけで有効なローカル変数とは異なり、プログラムの実行中に常に存在し、どの部分からもその値を参照したり変更したりすることが可能である。これにより、複数の異なる場所で同じデータを共有したい場合に、変数をいちいち引数として渡す手間を省くことができるように見える。 より詳しく説明すると、プログラミングにおける変数の「スコープ」という概念が深く関わってくる。スコープとは、その変数がプログラムのどの範囲で有効であるか、つまりどこからアクセスできるかを示す領域のことである。ローカル変数は、それが宣言された関数やブロック内でのみ有効なスコープを持つ。例えば、ある関数内で宣言されたローカル変数は、その関数が終了すると消滅し、他の関数からは存在すら認識できない。これに対し、グローバル変数はプログラム全体のスコープを持つ。プログラムが開始されてから終了するまで常に存在し続け、プログラム内のあらゆる関数やブロックから自由に読み書きできる特性を持つ。これにより、プログラムの異なる部分が共通のデータにアクセスする仕組みを簡単に構築できる。たとえば、アプリケーション全体で利用する設定情報や、複数の機能が共有する状態データなどを格納するのに使われることがある。 しかし、この「どこからでもアクセスできる」という特性は、同時に多くの問題を引き起こす可能性も秘めている。一つ目の問題は「意図しない変更」である。プログラムのあらゆる場所からグローバル変数の値を変更できるため、誰が、いつ、どこでその値を変更したのかを追跡するのが非常に困難になる。もし、ある関数が予期せぬタイミングでグローバル変数を変更してしまい、それが他の関数に影響を与えた場合、その原因を特定するのに多大な時間と労力がかかる。これは、デバッグ作業を極めて複雑にする。 二つ目の問題は「名前の衝突」である。プログラムの規模が大きくなると、多くの開発者がそれぞれ異なる部分のコードを書くことになる。その際、グローバル変数として宣言された変数の名前が、別の開発者が意図せず同じ名前で宣言した別の変数と衝突する可能性がある。これにより、どちらか一方の変数の値が予期せず上書きされたり、プログラムの動作が不安定になったりすることがある。 三つ目の問題は「コードの可読性と保守性の低下」である。特定の関数がどのようなデータを入力として受け取り、どのようなデータを出力するかは、通常、その関数の引数と戻り値を見れば理解できる。しかし、グローバル変数に依存する関数は、引数として明示されていないにもかかわらず、外部のデータを変更したり利用したりする。これにより、その関数がどのような副作用(外部への影響)を持つのかがコードを読んだだけでは分かりにくくなり、コード全体の理解を妨げる。また、あるグローバル変数の定義や利用方法を変更する際、その変更がプログラム全体のどこに影響を与えるかを把握するのが難しく、コードの修正が困難になる。これが保守性を著しく低下させる要因となる。 四つ目の問題は「テストの難しさ」である。プログラムの各機能を個別にテストする「単体テスト」では、テスト対象の関数が外部環境に依存しないように、その関数が利用するデータを適切に準備する必要がある。グローバル変数に依存する関数をテストする場合、テストのたびにグローバル変数の状態を適切に初期化する必要があり、この初期化が不完全だと、前のテスト実行の影響を受けてしまい、テスト結果が不安定になる。これは、信頼性の高いテスト環境を構築するのを難しくする。 五つ目の問題は「スレッドセーフティの欠如」である。現代の多くのアプリケーションは、複数の処理を並行して実行する「マルチスレッド」環境で動作する。複数のスレッドが同時に同じグローバル変数にアクセスし、値を変更しようとすると、データの整合性が損なわれたり、予測不能な結果が生じたりする可能性がある。これは「競合状態(Race Condition)」と呼ばれ、重大なバグの原因となる。この問題を解決するためには、排他制御(ロックなど)といった複雑な同期メカニニズムを導入する必要があり、コードの複雑性をさらに高める。 これらの問題点から、現代のソフトウェア開発では、グローバル変数の使用は極力避けるべきであるという考え方が主流になっている。代わりに、データの受け渡しは関数の引数と戻り値を用いて明示的に行う、あるいは、特定のデータとそのデータを操作する処理を一つにまとめた「オブジェクト」として管理するといった方法が推奨される。どうしてもプログラム全体で共有すべきデータがある場合でも、そのアクセス範囲をできるだけ制限したり、定数として扱ったりするなど、細心の注意を払って設計することが求められる。グローバル変数は一時的な解決策として魅力的だが、長期的に見てソフトウェアの品質を低下させる大きな要因となることを理解しておくことが重要である。