UD(ユーディー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
UD(ユーディー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ユニバーサルデザイン (ユニバーサルデザイン)
英語表記
Universal Design (ユニバーサルデザイン)
用語解説
UDとは、Universal Design(ユニバーサルデザイン)の略称であり、特定の利用者層だけでなく、年齢、能力、状況に関わらず、すべての人が使いやすいように最初から設計するという考え方である。これは、特定の障害を持つ人や高齢者など、一部の利用者のために後から改修を加える「バリアフリー」とは異なり、企画・設計の段階から多様なニーズを考慮し、誰にとっても利用しやすい製品、環境、サービスを創り出すことを目指す。IT分野においても、ソフトウェア、Webサイト、アプリケーション、情報システムなど、あらゆるデジタルプロダクトの設計において、このUDの考え方は極めて重要視されている。
UDの核心は、多様な人々の能力や状況の違いを前提とし、それらを「障害」ではなく「個性」と捉え、誰もが当たり前のように利用できる状態を実現することにある。例えば、視覚に障害がある人、聴覚に障害がある人、身体機能に制限がある人、高齢者、言語や文化が異なる人、あるいは一時的に片手が使えない状況にある人など、利用者の状況は多岐にわたる。これらの多様な人々が、それぞれ最適な方法で情報にアクセスし、システムを操作できるような設計を施すことがUDの目標である。
ITシステムにおけるUDの実践は、具体的な原則に基づいて進められる。ユニバーサルデザインの提唱者であるロナルド・メイスとその研究者たちが示した「ユニバーサルデザインの7原則」は、ITプロダクトの設計にもそのまま適用できる。第一に「誰にでも公平に利用できること」は、例えば視覚障害者向けのスクリーンリーダー対応や、色覚多様性に対応した情報表示といった形で現れる。単一の色だけでなく、形や文字の併用によって情報を伝えるデザインなどがこれに該当する。第二に「自由な使い方ができること」は、ユーザーが自分の好みに合わせてインターフェースをカスタマイズできる機能、例えば文字サイズの変更、コントラスト比の調整、キーボードショートカットの割り当てなどが考えられる。第三に「簡単で直感的に使えること」は、複雑な操作を排除し、誰もが迷わずに使えるような分かりやすいナビゲーションやアイコン、少ない手順で目的を達成できるプロセス設計などを指す。
第四に「必要な情報がすぐにわかること」は、重要な情報を明確に際立たせることや、視覚情報だけでなく聴覚情報も併用するなど、複数の手段で情報を伝達することを意味する。例えば、エラーメッセージは単にテキストで表示するだけでなく、音で通知したり、関連する入力フィールドをハイライト表示したりすることが含まれる。第五に「うっかりミスをしても大丈夫なこと」は、誤操作による損害を最小限に抑えるための設計を指す。操作の取り消し(アンドゥ機能)、重要な操作前の確認メッセージ表示、誤入力時の具体的な修正方法の提示などがこれに当たる。第六に「無理な姿勢をとらずに使えること」は、身体的な負担を軽減する設計であり、マウスのクリック回数を減らす、大きなターゲット領域を用意する、音声入力やジェスチャー操作など代替入力方法を提供することなどが挙げられる。最後に「どんな体格や姿勢でも使えること」は、インターフェースの配置や操作領域が、様々な身体的特徴を持つユーザーに対応できる柔軟性を持つことを意味する。例えば、タッチデバイスにおけるボタンのサイズや配置の最適化、デバイスの持ち方によらず操作しやすいレイアウトなどがこれに該当する。
UDは「アクセシビリティ」という概念と密接に関連しているが、両者には違いがある。アクセシビリティは、特定の障害を持つ人々が情報やサービスにアクセスできるように、既存のバリアを取り除くことや、特定の機能を提供することに焦点を当てる。これに対し、UDは最初から、可能な限り多くの人々が使えるように設計するという、より広範なアプローチである。つまり、アクセシビリティはUDの一部であり、UDの理念を実現するための具体的な手段の一つと言える。UDが目指すのは、特殊な支援がなくても、誰もが当たり前に利用できる状態であり、それが結果的にアクセシビリティの向上に繋がる。
システムエンジニアにとって、UDの視点を持つことは非常に重要である。なぜなら、システム開発の初期段階からUDの原則を組み込むことで、後からの大幅な改修コストを削減し、より質の高いプロダクトを生み出すことができるからである。少子高齢化が進む現代社会において、情報システムの利用者はますます多様化している。デジタルデバイドの解消や、社会包摂の観点からも、UDは避けて通れないテーマとなっている。また、各国では障害者差別解消法のような法律が整備され、公共性の高いシステムにおいてはUDへの対応が求められるケースも増えている。企業がUDを積極的に取り入れることは、コンプライアンスの遵守だけでなく、新たな市場の開拓や企業イメージの向上にも繋がり、ビジネス上のメリットも大きい。
システムエンジニアは、要件定義の段階で多様なユーザーシナリオを想定し、設計段階ではUDガイドラインや国際標準(WCAGなど)を参照しながらインターフェースや機能の検討を進める必要がある。実装においては、セマンティックなHTML記述、ARIA属性の活用、キーボード操作への配慮などが求められる。テストフェーズでは、アクセシビリティテストツールだけでなく、実際に多様なユーザーに利用してもらい、フィードバックを得ることも重要だ。単に動くシステムを作るだけでなく、それが「誰にとって」どのように使われるかを深く理解し、利用者の目線に立って設計・開発を行うことこそが、現代のシステムエンジニアに求められるUDへの貢献である。これにより、より多くの人々がデジタル技術の恩恵を受けられる社会の実現に寄与できる。