アンナンバード(アンナンバード)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
アンナンバード(アンナンバード)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
アンナンバード (アンナンバード)
英語表記
unnumbered (アンナンバード)
用語解説
アンナンバードとは、ネットワーク機器のインターフェース、特にルーター間の接続に用いられるインターフェースに、固有のIPアドレスを割り当てない設定手法のことである。通常、ネットワーク上の機器が通信を行うためには、各インターフェースに一意のIPアドレスが割り当てられる必要がある。この通常の設定を「ナンバード」と呼ぶのに対し、「アンナンバード」はその名の通り、番号付け、つまりIPアドレスの割り当て(アドレッシング)を行わない状態を指す。この技術が主に利用されるのは、2台のルーターが1対1で直接接続される「ポイントツーポイント接続」の環境である。アンナンバードの最大の目的は、限りあるIPアドレス資源、特に枯渇が深刻化しているIPv4アドレスを効率的に利用し、節約することにある。2台の機器を接続するためだけにIPアドレスの集合であるサブネットを消費するのは非効率であるという考えから生まれた技術であり、ネットワークの設計と管理において重要な選択肢の一つとなっている。
アンナンバードの仕組みを理解するためには、まず通常のナンバード構成と比較することが有効である。ナンバード構成では、ポイントツーポイント接続を確立するために、/30(サブネットマスクが255.255.255.252)のサブネットが用いられることが多い。このサブネットには4つのIPアドレスが含まれるが、ネットワークアドレスとブロードキャストアドレスとして2つが予約されるため、実際に機器に割り当て可能なホストアドレスは2つだけである。つまり、2台のルーターを接続するためだけに、4つのIPアドレス空間を消費することになる。これに対し、アンナンバード構成では、接続に使用する両端のインターフェースにIPアドレスを割り当てない。では、IPアドレスなしにどのようにして通信を実現するのか。その鍵は、ルーターが持つ他のインターフェースのIPアドレスを「借用」する点にある。一般的には、ループバックインターフェースのような、常に安定して稼働している仮想インターフェースに割り当てられたIPアドレスが借用元として利用される。アンナンバードが設定されたインターフェースは、パケットを送信する際の送信元IPアドレスとして、この借用したIPアドレスを使用する。また、対向ルーターへの経路情報をルーティングテーブルに登録する際も、IPアドレスではなくインターフェース名を指定することで、ネクストホップを解決し、通信を可能にする。これにより、ポイントツーポイント接続専用のサブネットを消費することなく、ルーター間のIP通信を確立できるのである。
アンナンバードのメリットは、前述の通りIPアドレスの節約に尽きる。大規模なネットワークや、多数の顧客を抱えるインターネットサービスプロバイダ(ISP)の環境では、ルーター間の接続点が無数に存在するため、その一つひとつに/30のサブネットを割り当てていくと、膨大な数のIPv4アドレスが消費されてしまう。アンナンバードを適用することで、これらの接続におけるIPアドレス消費をゼロに抑えることができ、アドレス資源の有効活用に大きく貢献する。また、接続ごとにサブネットの設計やIPアドレスの割り当て管理を行う必要がなくなるため、設定作業が簡素化され、管理コストを削減できるという側面もある。
一方で、アンナンバードにはデメリットや注意すべき点も存在する。最も大きな課題は、トラブルシューティングの複雑化である。インターフェース自体にIPアドレスが存在しないため、疎通確認の基本的なコマンドであるpingを実行する際、どのIPアドレスを宛先とすればよいかが直感的ではない。通常は借用元であるループバックインターフェースのIPアドレスに対して実行するが、障害の切り分けが煩雑になることがある。同様に、ネットワーク監視においても、インターフェースのIPアドレスを基準に監視を行うツールでは、アンナンバードインターフェースの状態を正しく把握できない場合がある。さらに、一部のルーティングプロトコルやアプリケーションは、通信を行う物理インターフェースにIPアドレスが設定されていることを前提として設計されているため、アンナンバード構成では正常に動作しない可能性も考慮しなければならない。設定方法や挙動がネットワーク機器のベンダーによって若干異なる場合があるため、導入時には事前の検証が不可欠である。IPv6の環境では、各インターフェースに自動的に設定されるリンクローカルアドレスを用いてルーター間の通信が可能なため、IPv4におけるアンナンバードのようなアドレス節約の重要性は低下しているが、グローバルアドレスを節約するという思想は共通している。これらの特性を総合的に理解し、適用するネットワーク環境の要件や運用ポリシーと照らし合わせて、アンナンバードの採用を判断することが求められる。