WDM(ダブルディーエム)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
WDM(ダブルディーエム)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
波長分割多重 (ハチョウブンカツタジュウ)
英語表記
WDM (ダブリューディーエム)
用語解説
WDMとは、Wavelength Division Multiplexingの略で、日本語では「波長分割多重」と訳される。これは、一本の光ファイバーケーブルを使って、複数の異なる通信信号を同時に送受信するための光通信技術である。光は電磁波の一種であり、その波長によって色が決まる。WDMはこの光の波長(色)が異なれば互いに干渉しにくいという物理的な特性を利用し、それぞれ異なる波長の光に情報を載せ、それらを一本の光ファイバーにまとめて送信し、受信側で再び波長ごとに分離して情報を取り出すことで、光ファイバーの通信容量を飛躍的に増大させる。これは、ラジオの異なる放送局がそれぞれ異なる周波数を使って同時に電波を送り出し、受信機側で聞きたい放送局の周波数に合わせることで分離できるのと似ている。WDMは、インターネットのバックボーンネットワーク、データセンター間の接続、都市圏ネットワークなど、大容量かつ長距離の通信が求められるあらゆる場面で不可欠な基盤技術として広く利用されている。
WDMの基本的な仕組みは、大きく分けて送信側、伝送路、受信側の三つの要素で構成される。まず送信側では、複数の独立したデータストリーム(例えば、異なるサーバーからのデータや異なる通信サービスからのデータ)がそれぞれ準備される。これらのデータストリームは、それぞれが特定の異なる波長(色)の光信号に変調される。この異なる波長の光信号をまとめて一本の光ファイバーに注入する装置を「合波器(Multiplexer: MUX)」と呼ぶ。合波器によって束ねられた光信号は、一本の光ファイバーケーブルの中を同時に伝播していく。光ファイバーは非常に低い信号損失で長距離伝送が可能である。光信号が受信側に到達すると、一本の光ファイバーから送られてきた複数の波長の光信号は、「分波器(Demultiplexer: DEMUX)」と呼ばれる装置によって再びそれぞれの波長ごとに分離される。分離された各波長の光信号は、対応するデータストリームへと変換され、最終的な受信装置に届けられる。この一連のプロセスにより、単一の光ファイバーがまるで複数の仮想的な光ファイバーであるかのように機能し、その伝送容量を大幅に拡大できるのである。
WDM技術は、波長の間隔の広さによって主に二つの種類に分類される。一つは「CWDM(Coarse Wavelength Division Multiplexing: 粗波長分割多重)」であり、もう一つは「DWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing: 密波長分割多重)」である。CWDMは、波長間隔が比較的広く、通常8波長から18波長程度を収容できる。装置に使用されるレーザーやフィルターの精度がDWDMに比べて低いため、システムが安価で消費電力も少ないという特徴がある。主に都市圏内のアクセスネットワーク、データセンター構内、企業内ネットワークなど、比較的小規模な環境や数十キロメートル程度の短距離伝送で利用されることが多い。これに対し、DWDMは波長間隔が非常に狭く、数多くの波長(例えば40波長、80波長、あるいはそれ以上)を一本の光ファイバーに多重できる。これにより、一本の光ファイバーでテラビット級(1秒あたり1兆ビット)の通信容量を実現することが可能となる。DWDMは、光増幅器(EDFA: Erbium-Doped Fiber Amplifierなど)と組み合わせることで、数百キロメートルから数千キロメートルにも及ぶ長距離伝送に対応できる。波長間隔が狭いため、高精度なレーザーやフィルターが必要となり、装置は高価で消費電力も大きいが、インターネットのバックボーンネットワーク、国際海底ケーブル、データセンター間を接続するメトロ・コアネットワークといった、極めて大容量かつ長距離の通信が求められる中核的なインフラで不可欠な技術である。
WDM技術の最大の利点は、既存の光ファイバーインフラを最大限に活用し、通信容量を劇的に増加させることができる点にある。これにより、新たな光ファイバーケーブルを敷設するための大規模な投資や工事を回避でき、コスト効率の高いネットワーク拡張が可能となる。また、必要に応じて新たな波長を追加することで、ネットワーク容量を段階的かつ柔軟に拡張できる拡張性も大きなメリットである。各波長は、イーサネット、SDH/SONET、ファイバーチャネルなど、異なる種類のデータプロトコルや、1Gbps、10Gbps、100Gbpsといった異なるビットレートの信号を同時に伝送できる「プロトコル独立性」も持ち合わせている。これにより、異なる通信サービスを一つの物理回線で統合して運用することが可能となり、ネットワークの運用管理を簡素化できる。一方で、WDM、特にDWDMシステムは、その複雑な光学部品や高度な光増幅器、そして多数の波長を効率的に管理するための監視・制御システムが必要となるため、導入・運用コストが高いという課題も存在する。また、光ファイバーの特性上、長距離・大容量伝送においては、分散や非線形効果といった物理現象が信号品質に影響を与えることがあるため、これらを補償するための高度な技術も必要とされる。
まとめると、WDMは現代のデジタル社会を支える大容量・長距離通信の基盤であり、インターネットの高速化やクラウドサービスの発展に不可欠な技術である。システムエンジニアを目指す上で、この技術の原理、種類、そしてそれがもたらすネットワークへの影響を理解しておくことは、今後のキャリアにおいて極めて重要な知識となる。光ファイバーインフラの有効活用と容量増大を両立させるWDM技術は、これからも通信ネットワークの進化を牽引していくことだろう。