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SDH(エスイーディエイチ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

SDH(エスイーディエイチ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

シンクロナス・ディジタルトランスポート・ハイアラキー (シンクロナス・ディジタル・トランスポート・ハイアラキー)

英語表記

SDH (エスディーエイチ)

用語解説

SDHとは、Synchronous Digital Hierarchy(同期デジタルハイアラーキ)の略で、主に光ファイバーを用いたデジタル信号伝送の世界的な標準技術体系を指す。これは、多様なデジタル通信信号、例えば音声やデータを、高速かつ効率的に長距離伝送するために開発されたもので、従来のデジタル伝送方式であるPDH(Plesiochronous Digital Hierarchy:非同期デジタルハイアラーキ)が抱えていた問題を解決することを目的に登場した。SDHの導入により、通信ネットワークの基幹部分における情報伝送の標準化と効率化が大幅に進んだ。

SDHの最も重要な特徴は「同期」という概念に基づいている点にある。PDHでは、各機器がそれぞれ独立したクロックを持ち、わずかなクロックのずれを吸収するためにバイトスタッフィングと呼ばれる方式で信号を多重化していた。この方式では、多重化された信号から特定の低速信号を取り出す際に、一度全体の信号を全て復元(逆多重化)する必要があり、機器が複雑になり、非効率だった。SDHでは、ネットワーク全体が共通のマスタークロックに同期しており、すべてのデータが厳密に同期されたフレーム構造で伝送される。これにより、多重化・逆多重化のプロセスが大幅に簡素化され、特定の低速信号を高速な上位信号から直接取り出したり(ドロップ)、挿入したり(アド)することが容易になった。

SDHの基本的な伝送単位は、STM(Synchronous Transport Module)と呼ばれるフレーム構造である。最も基本的な伝送速度はSTM-1で、約155.52 Mbpsの速度を持つ。このSTM-1を基盤として、STM-4(約622.08 Mbps)、STM-16(約2.48 Gbps)、STM-64(約9.95 Gbps)、STM-256(約39.8 Gbps)といった形で、4倍ずつ高速化された上位の伝送速度が階層的に定義されている。この階層構造により、必要に応じてネットワーク容量を柔軟に拡張することが可能だ。

SDHフレーム内には、伝送したい実際の情報データ(ペイロード)の他に、ネットワークの運用や保守に必要な様々な情報(オーバーヘッド)が含まれている。このオーバーヘッドには、フレームの開始を示す情報、伝送品質の監視情報、障害発生時の情報、およびポインタと呼ばれる情報が含まれる。ポインタは、ペイロードがSDHフレーム内のどこに配置されているかを示す情報であり、これにより、厳密な同期が取れていない下位の信号であっても、上位のSDHフレーム内で柔軟に配置・取り扱いが可能となる。このポインタ機能が、SDHにおける効率的な多重化・逆多重化を実現する重要な要素の一つだ。

SDHがもたらした利点は多岐にわたる。まず、国際標準化されているため、異なるベンダーの機器間でも相互接続性が確保され、グローバルな通信ネットワークの構築が容易になった。次に、前述の通り、信号の追加や削除(Add/Drop Multiplexing: ADM)が効率的に行えるため、ネットワークリソースの柔軟な運用が可能になった。また、豊富なオーバーヘッド情報を活用することで、ネットワークの遠隔監視、性能管理、障害箇所の特定、および迅速な復旧が可能となり、信頼性の高いネットワーク運用が実現した。特に、リング型のネットワーク構成と組み合わせることで、光ファイバーの断線や機器故障が発生した場合でも、自動的に迂回経路を確立し、サービス中断を最小限に抑えるプロテクション機能が標準で提供される。これは、通信キャリアが提供する高品質なサービスを支える重要な基盤となっている。

現代のネットワークでは、IP(Internet Protocol)通信が主流となり、SDH単体で全てのデータトラフィックを処理するのではなく、DWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)などのより大容量な光伝送技術や、OTN(Optical Transport Network)のようなパケット指向の光伝送技術と組み合わせて利用されることが増えている。しかし、SDHが確立した同期多重化の概念、階層構造、ネットワーク管理や障害保護の仕組みは、その後の光通信技術やネットワーク設計の基礎となり、今でも多くの通信ネットワークの基盤として、またはその概念が新しい技術に引き継がれる形で、その重要性を保ち続けている。システムエンジニアにとって、SDHの基本的な知識は、現代の通信インフラを理解する上で不可欠である。

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