ゾーンファイル (ゾーンファイル) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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ゾーンファイル (ゾーンファイル) の読み方

日本語表記

ゾーンファイル (ゾーンファイル)

英語表記

zone file (ゾーンファイル)

ゾーンファイル (ゾーンファイル) の意味や用語解説

インターネットを利用する際、私たちはウェブサイトのURLやメールアドレスにドメイン名を使う。例えば「example.com」のような文字列だ。しかし、コンピューターが実際に通信を行う際には、このドメイン名ではなく「IPアドレス」という数字の並び(例: 192.0.2.1や2001:db8::1)が必要となる。このドメイン名とIPアドレスの変換を行う仕組みが「DNS(Domain Name System)」であり、そのDNSの中核を担うデータが「ゾーンファイル」である。 ゾーンファイルとは、特定のドメイン名(これをDNSでは「ゾーン」と呼ぶ)に関するすべてのDNS情報が記述された、人間が読み書きできる形式のプレーンテキストファイルだ。このファイルは、そのドメインの情報を管理する権威DNSサーバーに配置され、世界中のDNSサーバーがドメイン名をIPアドレスに解決したり、メールの送信先を特定したりする際に参照するデータベースのような役割を果たす。私たちが普段インターネットを利用できるのは、このゾーンファイルに正確な情報が記述され、DNSを通じて適切に公開されているおかげである。ウェブサイトへのアクセス、メールの送受信、様々なオンラインサービスの利用など、あらゆるインターネット通信の基盤を支える、極めて重要な情報源の一つと言える。 ゾーンファイルは、複数の「リソースレコード(Resource Record: RR)」と呼ばれる行の集まりで構成されている。各リソースレコードは、特定の情報を持つデータの単位であり、それぞれがゾーンに関する異なる種類の情報を提供する。 ゾーンファイルの先頭には通常、「SOA(Start of Authority)レコード」が記述される。これは、そのゾーンに関する最も重要な情報、つまりゾーンの権威の開始点を示すレコードだ。SOAレコードには、そのゾーンのプライマリDNSサーバーのホスト名、ゾーン管理者のメールアドレス、およびゾーン転送(後述)に関する一連のタイマー値(ゾーン情報の更新間隔や有効期限など)が含まれる。特にシリアル番号は、ゾーンファイルの内容が更新されたかどうかを判断するために用いられ、変更時にはこの番号を増やすことで、他のDNSサーバーに変更を通知する。 次に「NS(Name Server)レコード」が登場する。このレコードは、そのゾーン(ドメイン)の権威DNSサーバーがどれであるかを宣言する。通常、冗長性を確保するため、複数のDNSサーバーが指定される。これにより、一つのDNSサーバーに障害が発生しても、他のサーバーが引き続き名前解決サービスを提供できる。 最も頻繁に利用されるレコードの一つが「A(Address)レコード」である。これは、特定のホスト名(例: www.example.com)とIPv4アドレス(例: 192.0.2.1)を対応付けるレコードだ。ウェブサイトにアクセスする際、ブラウザはこのAレコードを参照して、目的のウェブサーバーのIPアドレスを取得する。同様に、「AAAA(IPv6 Address)レコード」は、ホスト名とIPv6アドレス(例: 2001:db8::1)を対応付けるために使用される。 メールの送受信に関連するのが「MX(Mail Exchanger)レコード」だ。このレコードは、そのドメイン宛のメールを処理するメールサーバーのホスト名と、複数のメールサーバーがある場合の優先度を定義する。優先度は数値で表され、小さいほど優先度が高い。 「CNAME(Canonical Name)レコード」は、あるホスト名(エイリアス)を別のホスト名(正規名)に別名として対応付けるために使用される。例えば、`www.example.com` を `example.com` のエイリアスとして設定する場合などに用いられる。これにより、正規のホスト名一つを変更するだけで、それに紐づく複数のエイリアス名も同時に更新できる利点がある。 「TXT(Text)レコード」は、任意のテキスト情報を記述するためのレコードだ。近年では、SPF(Sender Policy Framework)やDKIM(DomainKeys Identified Mail)といったメール認証情報の記述に利用されることが多い。これらは、メールのなりすましを防ぎ、正当なメール送信元であることを証明するために重要な役割を果たす。 各リソースレコードには、「TTL(Time To Live)」という値が設定されている。これは、DNSキャッシュサーバーがその情報をキャッシュとして保持しておく期間を秒単位で指定するものだ。TTLが短いほど、ゾーンファイルの内容が変更された際に、その変更がインターネット全体に迅速に反映されるが、DNSサーバーへの問い合わせ頻度が増加する。逆にTTLが長いと、問い合わせ頻度は減るが、変更の反映に時間がかかる。 権威DNSサーバーは通常、プライマリDNSサーバーとセカンダリDNSサーバーという形で複数運用される。プライマリDNSサーバーでゾーンファイルの内容が更新されると、SOAレコードのシリアル番号が変更され、セカンダリDNSサーバーはその変更を検知してプライマリから新しいゾーンファイルの内容を取得する。この同期プロセスを「ゾーン転送」と呼ぶ。ゾーン転送により、ゾーン情報が複数のサーバーで複製され、冗長性と可用性が保たれる。 ゾーンファイルはドメインの機能に直接影響するため、その記述には正確性が求められる。誤った記述は、ウェブサイトが表示されなくなったり、メールが届かなくなったりする原因となる。システムエンジニアにとって、ゾーンファイルの内容を理解し、適切に管理できる能力は、ドメインやネットワークサービスを構築・運用する上で不可欠なスキルとなるだろう。

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