Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

【ITニュース解説】Credit: @xaviermac

2025年09月09日に「Dev.to」が公開したITニュース「Credit: @xaviermac」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

システム開発では、既存コードを整理・改善する「リファクタリング」と、新たな機能を追加する作業のどちらを優先すべきか、エンジニアは常に悩む。このジレンマを表現したミームが話題となっている。

出典: Credit: @xaviermac | Dev.to公開日:

ITニュース解説

Webサービスやアプリケーション開発の初期段階では、システム構成は非常にシンプルであることが多い。しかし、サービスが成長し、利用者や機能が増えるにつれて、その構成は複雑化していく。この変化は、システムが直面する様々な課題を解決するための必然的な進化の過程である。ここでは、シンプルな構成から複雑な現代的システムアーキテクチャへと変化していく背景と、その中で導入される各技術要素の役割について解説する。

開発の初期段階でよく見られるのは、「クライアント」「API」「データベース」という3つの要素で構成される、いわゆる3層アーキテクチャである。クライアントは、ユーザーが直接操作するウェブブラウザやスマートフォンアプリなどのインターフェース部分を指す。ユーザーからのリクエストは、アプリケーションのビジネスロジックを処理するAPIサーバーに送られる。APIサーバーは、受け取ったリクエストに基づいて必要な処理を行い、データの永続的な保存や読み出しのためにデータベースと通信する。この構成は理解しやすく、迅速な開発が可能であるため、多くのプロジェクトの出発点となる。しかし、このシンプルな構成には限界も存在する。全ての処理が一つのAPIサーバーに集中するため、アクセスが増加するとサーバーに過大な負荷がかかり、応答速度の低下やシステムダウンを引き起こす可能性がある。また、データベースも単一であるため、ここが故障するとサービス全体が停止してしまう「単一障害点」となりうる。

サービスが成長し、ユーザー数が増え、より高い可用性やパフォーマンスが求められるようになると、前述の課題を解決するために新しい技術要素が導入され、システムは複雑化していく。

まず、アクセスの増加に対応するため、「ロードバランサー」が導入される。これは、外部からのリクエストを複数のAPIサーバーに均等に振り分ける役割を担う装置である。一台のサーバーに負荷が集中することを防ぎ、システム全体の処理能力を向上させるとともに、一台のサーバーが故障しても他のサーバーでサービスを継続できるため、可用性が向上する。

次に、アプリケーションの機能が多様化し、開発チームの規模が拡大すると、一つの大きなアプリケーション(モノリスアーキテクチャ)を維持することが困難になる。そこで、「マイクロサービスアーキテクチャ」への移行が検討される。これは、機能を「ユーザー管理」「商品管理」「決済」といった小さな独立したサービス(マイクロサービス)に分割する設計手法である。各サービスは独立して開発、デプロイ、スケールが可能になるため、開発の俊敏性が高まり、特定の機能に障害が発生しても他の機能への影響を最小限に抑えることができる。この多数のマイクロサービスへの入り口を統一し、認証やリクエストの振り分けなどを一元管理するのが「APIゲートウェイ」である。また、ユーザー認証のように多くのサービスで共通して必要となる機能は、専門の「認証サービス」として独立させることで、セキュリティの強化と管理の効率化を図る。

マイクロサービス間でデータを連携させる際には、「メッセージキュー」が重要な役割を果たす。これは、サービス間の通信を直接的な呼び出しではなく、メッセージという単位で非同期に行うための仕組みである。例えば、注文処理サービスが注文を受け付けた後、在庫管理サービスや発送サービスに処理を依頼する際に、メッセージキューに「依頼メッセージ」を投入する。各サービスは自分のタイミングでキューからメッセージを取り出して処理を進めるため、一時的に特定サービスに負荷が集中してもシステム全体が停止することなく、リクエストを安定して処理し続けることができる。

システムの応答速度を向上させるためには、「キャッシュ」の導入が不可欠である。キャッシュは、頻繁にアクセスされるデータを、低速なデータベースからではなく、高速なメモリ上に一時的に保存しておく仕組みである。ユーザー情報や商品カタログなど、一度読み込んだデータをキャッシュしておくことで、次回以降のデータベースへの問い合わせを省略し、ユーザー体験を大幅に改善する。

データの永続化を担うデータベース層も強化が必要になる。書き込み処理と読み込み処理の負荷を分散させるため、データベースを複製(レプリケーション)する構成がとられる。書き込みは一つの「プライマリ」データベースで行い、その内容を複数の「レプリカ」データベースに同期する。読み込みリクエストは複数のレプリカに分散させることで、データベース全体の負荷を軽減し、パフォーマンスを向上させる。さらに、日々のトランザクション処理とは別に、ビジネス分析やデータサイエンスのために大量のデータを蓄積・分析する必要が生じた場合、本番のデータベースに影響を与えないよう、分析専用の「データウェアハウス」が構築される。

最後に、これら複雑なシステムを安定して運用し、継続的に改善していくための仕組みも不可欠となる。システムの稼働状況や各コンポーネントの動作記録(ログ)を収集・分析するための「ロギングサービス」や「モニタリングサービス」は、障害発生時の迅速な原因究明や、問題の予兆検知に役立つ。また、ソースコードの変更からテスト、本番環境へのデプロイまでの一連のプロセスを自動化する「CI/CDパイプライン」は、開発のスピードと品質を両立させるために重要な役割を担う。新しい機能を安全にリリースするために、特定のユーザーにだけ機能を先行公開したり、問題があれば即座に機能を無効化したりできる「フィーチャーフラグサービス」も導入されることがある。

このように、システムが初期のシンプルな構成から複雑なアーキテクチャへと進化するのは、ビジネスの成長に伴う様々な要求に応えるための合理的な判断の積み重ねの結果である。スケーラビリティ、可用性、パフォーマンス、開発効率、運用性といった、多岐にわたる課題を解決するために、それぞれの目的に特化した技術要素が段階的に組み込まれていく。システムエンジニアを目指す初心者は、まず基本的な3層アーキテクチャをしっかりと理解した上で、なぜシステムが複雑化するのか、それぞれの技術要素がどのような問題を解決するために存在するのかという背景を学ぶことが、現代のシステム開発を深く理解するための鍵となる。一見すると複雑怪奇に見える構成図も、その一つ一つの要素には明確な存在理由があるのである。

関連コンテンツ