【ITニュース解説】Developer Tooling #006
2025年09月13日に「Dev.to」が公開したITニュース「Developer Tooling #006」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
GoやRust等で開発されたECMAScript/TypeScript向け高速バンドラー・コンパイラを特集。既存ツール代替のrspack、esbuild、bun、rolldown、farmなどを紹介。速度、機能、開発言語に各々特徴がある。
ITニュース解説
現代のソフトウェア開発において、特にウェブアプリケーションの開発ではJavaScriptやTypeScriptが不可欠な存在となっている。これらを用いた開発が大規模化・複雑化するにつれて、開発効率やアプリケーションの実行速度が重要な課題となる。そうした中で、私たちが書いたプログラムのソースコードを効率的に処理し、高速なアプリケーションを生成するための新しい開発ツールが次々と登場している。これらのツールは、私たちが書いたプログラムをコンピュータが実行できる形に変換したり、複数のファイルを一つにまとめたりする役割を担い、開発プロセスを劇的に改善している。特に注目されているのが、GoやRustといったプログラミング言語で開発された「ECMAScript/TypeScriptネイティブバイナリバンドラー&コンパイラ」と呼ばれる種類のツールである。
「ECMAScript」とはJavaScriptの国際標準規格のことで、「TypeScript」はそのECMAScriptに型付けの概念を加えることで、より大規模な開発に適した形で拡張された言語である。私たちが普段書くこれらのソースコードは、そのままではコンピュータが直接実行しづらい場合があるため、「コンパイラ」というツールがコンピュータが理解しやすい機械語に近い形式に変換する。また、最近のウェブアプリケーションは多くの小さなファイルで構成されることが多く、それらを効率的に一つにまとめ上げるのが「バンドラー」の役割だ。これにより、アプリケーションの読み込み速度が向上したり、依存関係の管理が容易になったりする。そして、「ネイティブバイナリ」とは、GoやRustのような低レベル言語で書かれたプログラムが、OS上で直接実行される形式のことを指す。これにより、JavaScriptだけで書かれたツールよりもはるかに高速に動作するという特徴がある。
今回紹介するツールは、こうした背景の中で登場した最先端の選択肢であり、それぞれが異なるアプローチで開発効率の向上を目指している。
「rspack」は、Rust言語で開発されたモダンなJavaScriptコンパイラで、既存の「webpack」という強力なバンドラーの代替を目指して作られている。webpackは非常に多機能で広く利用されているが、その分設定が複雑になりがちという側面がある。rspackはwebpackが持つ豊富な機能との互換性を保ちつつ、Rustの高速性を活かしてパフォーマンスの向上を図っている。多くの機能をサポートしているため、webpackと同様に設定の複雑さに直面する可能性はあるが、活発な開発エコシステムの中で着実に進化を続けている点が評価されている。
次に「esbuild」は、Go言語で書かれたJavaScript、TypeScript、React向けのコンパイラである。このツールは、以前のコンパイラやバンドラーに比べて桁違いに高速な処理能力を持ち、登場当初は開発コミュニティに大きな衝撃を与えた。まさに「先駆者」として、高速なコンパイラ/バンドラーの分野を切り開いた存在と言える。しかし、その後に登場した「bun」のようなさらに高速な後発ツールに、一部で優位性を奪われつつあるのが現状だ。それでも、その高速性と安定性から、今でも多くのプロジェクトで利用されている。
「bun」は、Zig言語で開発された、バンドラー、コンパイラ、そしてパッケージマネージャの機能を一つに統合した、非常に多機能で高速なツールである。特に、アプリケーションのバンドルやコンパイルの速度はもちろんのこと、従来の「npm」の代替としてパッケージのインストール速度が驚異的に速いことで大きな注目を集めている。npmのコマンドラインインターフェースやAPIとの互換性も目指しており、開発者が慣れ親しんだnpmの操作感でbunの高速性を享受できる点が魅力だ。しかし、bunが開発に使っているZig言語は比較的新しい言語であり、長期的なメンテナンス性やコミュニティの成熟度については懸念の声も上がっている。
「rolldown」は、Rust言語で開発され、既存の「rollup」というバンドラーの代替を目指すツールである。rollupはJavaScriptモジュールを効率的にバンドルする優れたツールだが、大規模なプロジェクトでは処理速度の遅さが課題となることがあった。rolldownはその課題を解決するために、Rustの高速性を利用してrollupの機能を高速化することを目指している。開発は非常に活発に進められており、将来性が期待されているが、現時点ではドキュメントの充実度がまだ十分ではなく、利用する上で情報を見つけにくい場面があるかもしれない。
最後に「farm」もまた、Rustベースで開発されたバンドラーの一つである。このツールは、非常に質の高いドキュメントを提供しており、初心者でも導入や利用がしやすい点が大きなメリットだ。また、かなり以前から活発な開発が続けられており、これまでの開発履歴を見る限り、今後も長期間にわたって安定したメンテナンスが期待できるだろう。ただし、公式サイトで提示されている速度比較については、他の最先端ツール、特にbunのようなツールとの直接的な比較がないため、そのパフォーマンスの優位性を完全に評価しにくいという意見もある。これは、速度自体が偽りであるということではなく、比較の提示方法が利用者に誤解を与える可能性を指摘している。
これらの次世代ツールは、JavaScript/TypeScript開発のビルドプロセスに革命をもたらしつつある。それぞれが高速化、機能統合、開発体験の向上といった異なる強みを持っており、プロジェクトの規模や要件に応じて最適なツールを選ぶことが、効率的な開発と高性能なアプリケーション実現の鍵となるだろう。開発者は、これらのツールの進化を注視し、自身のプロジェクトに最適な選択を行うことが求められている。