【ITニュース解説】A Git like Database
2025年09月11日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「A Git like Database」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
DoltDBは、Gitのようにデータベースの変更履歴を管理できる新しいデータベースだ。`dolt diff`や`dolt merge`といったコマンドでデータの差分確認や結合ができ、バージョン管理システムの概念をデータベースに応用している。開発における履歴追跡や共同作業を効率化する。
ITニュース解説
DoltDBは、データベースの分野に新しいアプローチをもたらすシステムである。このデータベースの最大の特徴は、「Gitライク」という表現で示される、バージョン管理システムGitの概念をデータ管理に適用している点にある。システムエンジニアを目指す上で、Gitはプログラムのソースコードを管理するための不可欠なツールとして学ぶことになるが、DoltDBはそのGitの強力な機能を、コードではなく「データ」に使うことを可能にする。
まず、Gitの基本的な働きを理解すると、DoltDBのユニークさがより明確になるだろう。Gitは、ソフトウェア開発においてプログラムのソースコードの変更履歴を管理するために広く利用されている。開発者はコードに変更を加えるたびに、その変更内容を「コミット」として記録する。コミットは、いつ、誰が、どのような目的でコードを変更したかという情報をまとめた記録で、これにより過去のあらゆる時点のコードの状態を正確に把握したり、必要であれば古い状態に戻したりできる。また、Gitには「ブランチ」という機能がある。これは、メインのコードの流れから一時的に枝分かれして、新しい機能の開発やバグ修正などを並行して行うための仕組みだ。複数の開発者がそれぞれ異なるブランチで作業し、開発が完了した段階で、それぞれの変更を「マージ」してメインのコードに統合する。この過程で、異なる変更箇所を比較する「差分(diff)」表示や、過去のコミットの状態に切り替える「チェックアウト」といった操作も頻繁に行われる。これにより、チームでの共同開発を効率的かつ安全に進めることができる。
DoltDBは、このようなGitの概念をデータベースのテーブルデータにそのまま適用する。従来のデータベースでは、データの変更は即座に反映され、その変更履歴を詳細に追跡したり、過去の特定の時点のデータ状態に簡単に戻したりすることは、特別な仕組みを導入しない限り困難だった。しかし、DoltDBでは、プログラムコードと同じように、データベースに加えた変更をコミットし、ブランチを作成してデータの実験的な変更を行ったり、複数の変更をマージして統合したりできる。
ニュース記事の例を見ると、その操作が具体的にどのように行われるかがわかる。まず、dolt sql -q "insert into docs values (10,10)"というコマンドは、一般的なSQLと同じように、docsというテーブルに新しいデータ(10,10)を挿入する。この時点ではまだ、この変更は一時的なもので、コミットされていない。次に、dolt diffコマンドを実行すると、データベースに加えた変更内容がGitの差分表示と同じ形式で示される。どのテーブルのどの行が追加されたのか、具体的な値とともに表示されるため、変更内容を一目で確認できる。この例では、pkが10、c1が10の行が新しく追加されたことがわかる。
変更内容を確認したら、dolt commit -am "Added a row on a branch"というコマンドで、その変更をデータベースの履歴として永続的に記録する。これはGitにおけるコミットと全く同じ考え方で、データベースの特定の状態に名前(コミットメッセージ)とタイムスタンプ、作者情報を付けて保存する。これにより、将来的にこの時点のデータ状態に戻したり、他のコミットと比較したりすることが可能になる。
次に、dolt checkout mainというコマンドは、データベースの状態をmainという名前のメインブランチに切り替えることを意味する。これはGitで異なるブランチに切り替える操作と同様で、これにより、直前のコミットで追加したデータが一時的に見えなくなる。dolt sql -q "select * from docs"でデータを確認すると、確かにmainブランチでは変更が反映されておらず、以前の状態のデータが表示される。これは、変更がmainブランチとは別のブランチ(おそらく自動的に作成された作業ブランチ、または明示的に作成したブランチ)で行われたためである。
最後に、dolt merge check-out-new-branchというコマンドは、別のブランチで行われた変更を現在のブランチ(この場合はmain)に統合する。これにより、check-out-new-branchというブランチでコミットされた新しいデータがmainブランチに取り込まれる。マージが完了した後、再びdolt sql -q "select * from docs"でデータを確認すると、10,10という新しい行がmainブランチのデータとして表示される。これは、異なるデータ変更の流れを一つにまとめるGitのマージ操作と全く同じだ。
DoltDBが提供するこのような機能は、データベースの管理と運用に新たな可能性をもたらす。例えば、データの変更履歴を詳細に追跡できるため、誤ってデータを削除したり、不適切な変更を加えてしまったりした場合でも、簡単に過去の健全な状態にロールバックできる。これは、従来のデータベースではバックアップからの復元や複雑なログ解析が必要だった作業を、Gitの簡単なコマンドで実現できることを意味する。また、複数の開発者が同じデータベースの異なる部分を同時に変更し、後でそれらの変更を安全に統合するといった共同作業も容易になる。データに関する実験的な試みをメインのデータに影響を与えることなくブランチで実施し、問題がなければマージするといったワークフローも可能になるだろう。これは、データの変更管理における安全性の向上と、チーム開発の効率化に大きく貢献する可能性がある。DoltDBは、プログラムコードの世界で常識となっているバージョン管理のメリットを、データの領域に持ち込み、データ管理のあり方を根本的に変える可能性を秘めた技術だと言えるだろう。