LLC(エルエルシー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
LLC(エルエルシー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
合同会社 (ゴウドウガイシャ)
英語表記
LLC (エルエルシー)
用語解説
LLCは、Logical Link Controlの略称であり、コンピュータネットワークにおける通信機能を階層的に定義したOSI参照モデルの第2層、データリンク層を構成する副層(サブレイヤ)の一つである。データリンク層は、同一ネットワークに接続された機器間のデータ転送を担う層であり、その機能をより詳細化するために、上位層側を担当するLLC副層と、下位の物理層側を担当するMAC(Media Access Control)副層の二つに分割して定義されている。LLCの主な役割は、ネットワーク層をはじめとする上位層のプロトコルと、物理的な伝送媒体へのアクセスを管理するMAC副層との間のインターフェースとして機能することである。この階層分割により、イーサネットやWi-Fiといった物理的な通信媒体の種類が異なっていても、上位層はその違いを意識することなく通信を行うことが可能となる。LLCは、IEEE 802.2という規格で標準化されている。
LLCの具体的な機能は多岐にわたるが、主要なものとして、上位層プロトコルの多重化、フロー制御、エラー制御の三つが挙げられる。まず、多重化とは、一つの物理的な通信回線上で、IPやIPXといった複数の異なるネットワーク層プロトコルを同時に識別し、それぞれを適切に処理するための機能である。LLCは、データにDSAPおよびSSAPという送信元と宛先のサービスアクセスポイント識別子を付加することで、どのプロトコルから来たデータであるかを識別し、受信側で正しく上位層にデータを渡すことを可能にする。次に、フロー制御は、データの送信側と受信側の処理能力の差を調整する機能である。受信側のバッファが溢れてデータを取りこぼすことがないように、送信側に対してデータ送信量や送信速度を一時的に制御する信号を送ることで、安定した通信を実現する。最後に、エラー制御は、通信経路上で発生したデータの破損や消失を検出し、訂正するための機能である。主に、受信側がデータフレームを正しく受信したことを送信側に通知する確認応答(ACK)と、エラーを検出した場合にデータの再送を要求する仕組みによって実現される。
LLCが提供するサービスは、その制御の方式によって三つのタイプに分類される。タイプ1は、コネクションレス型サービスと呼ばれる。これは、通信前に事前の接続手続き(コネクション確立)を行わず、確認応答や再送制御も行わない、データを一方的に送信するだけの最もシンプルな方式である。信頼性は低いが、制御のためのオーバーヘッドが少ないため高速な通信が可能であり、現在のイーサネット通信で一般的に利用されている。タイプ2は、コネクション指向型サービスである。通信を開始する前に送信側と受信側でコネクションを確立し、全てのデータフレームに対して順序管理、フロー制御、エラー制御を行う。高い信頼性が保証されるが、制御が複雑でオーバーヘッドが大きくなる。タイプ3は、確認応答付きコネクションレス型サービスと呼ばれ、タイプ1とタイプ2の中間的な性質を持つ。コネクションは確立しないが、送信したデータフレームごとに受信側からの確認応答を待つ方式である。
データリンク層のもう一つの副層であるMACとの役割分担は明確である。LLCが上位層との論理的なリンクの確立や制御を担当するのに対し、MACは物理的な伝送媒体へのアクセス権を制御する役割を担う。具体的には、MACアドレスを用いて通信相手を物理的に特定したり、複数の機器が同時にデータを送信して衝突が起きるのを防ぐためのアクセス制御(CSMA/CDなど)を行ったり、データフレームの始まりと終わりを識別するための情報を付加したりする。このように、論理的な制御を担うLLCと物理的なアクセス制御を担うMACに機能を分離することで、ネットワーク技術の柔軟性と拡張性が高められている。
現代のTCP/IPを基本とするネットワーク環境においては、LLCが持つ高度な機能の多くは、より上位のトランスポート層に位置するTCPプロトコルが担っている。TCPがコネクション指向で信頼性の高い通信を実現するため、データリンク層ではLLCのタイプ1サービス、つまりシンプルなコネクションレス型通信が用いられることがほとんどである。そのため、現在ではLLCの役割は、主に上位層のプロトコルがIPであることを示す識別子としての機能に限定されることが多い。しかし、ネットワークの基本構造を理解する上で、LLCがデータリンク層において論理的な通信制御を担うという概念は、システムエンジニアにとって依然として重要な知識である。