【ITニュース解説】インフラエンジニア案件の平均年収、フロントエンドを上回る825万円──「SOKUDAN」掲載のデータから明らかに
2025年09月10日に「CodeZine」が公開したITニュース「インフラエンジニア案件の平均年収、フロントエンドを上回る825万円──「SOKUDAN」掲載のデータから明らかに」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
フリーランス求人サービス「SOKUDAN」の調査で、インフラエンジニア案件の平均年収が825万円に達し、フロントエンドエンジニアを上回ったことが判明した。システムの基盤を支えるインフラエンジニアの市場価値の高さを示す結果だ。(114文字)
ITニュース解説
IT業界におけるエンジニアの働き方や市場価値は、技術の進化とともに常に変化している。近年、フリーランスや副業という形で専門スキルを提供するエンジニアが増える中、その報酬額は個々の専門性や需要を測る重要な指標となっている。このたび、フリーランスや副業案件のマッチングサービス「SOKUDAN」が公開した調査データによって、ITインフラを支える「インフラエンジニア」の市場価値が非常に高まっていることが明らかになった。調査によると、フリーランスのインフラエンジニア向け案件の平均年収は825万円に達し、Webサイトやアプリケーションの見た目を担当する「フロントエンドエンジニア」の平均年収816万円を上回る結果となった。これは、現代のITサービスにおいて、その土台となるインフラの重要性がいかに増しているかを示す象徴的なデータであると言える。
そもそもインフラエンジニアとは、ITシステムやサービスが安定して稼働するための基盤、すなわちITインフラを専門に扱う技術者のことである。ITインフラは、サーバー、ネットワーク、データベース、OS、ミドルウェアなど、アプリケーションが動作するために不可欠な要素で構成される。インフラエンジニアは、これらの要素を組み合わせてシステムの要件に合ったIT基盤を設計し、実際に構築する。そして、構築後もシステムが停止することなく動き続けるように、24時間365日の監視や、障害発生時の迅速な復旧対応、性能を維持・向上させるためのメンテナンスといった運用・保守業務を担う。つまり、どんなに優れたアプリケーションやWebサービスも、堅牢で安定したITインフラがなければその価値を発揮できないため、インフラエンジニアはIT社会を根幹から支える極めて重要な役割を担っている。
では、なぜ今、インフラエンジニアの平均年収がこれほど高まっているのだろうか。その背景には、いくつかの大きな技術的トレンドが存在する。第一に、クラウドコンピューティングの急速な普及である。従来、企業は自社内に物理的なサーバーやネットワーク機器を設置してシステムを運用する「オンプレミス」という形態が主流だった。しかし、現在ではAmazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform (GCP) といったクラウドサービスを利用し、必要なITリソースをインターネット経由で柔軟に調達する形態が一般的になっている。このクラウド化の波により、クラウド環境の設計、構築、運用に精通したインフラエンジニアへの需要が爆発的に増加した。クラウド特有のサービスや技術を深く理解し、コスト効率やセキュリティを考慮した最適なクラウドインフラを構築できるスキルは、極めて高い価値を持つようになったのである。
第二に、DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速が挙げられる。多くの企業が競争力を維持・強化するために、AI、IoT、ビッグデータといった最新技術を活用した新しいビジネスモデルの創出や業務プロセスの改革を進めている。こうしたDXの取り組みは、膨大なデータを処理し、多数のユーザーからのアクセスに耐えうる、スケーラブルで信頼性の高いITインフラを前提とする。そのため、先進的なビジネスを支えるモダンなインフラを構築できるエンジニアの存在が不可欠となり、その需要を押し上げている。
さらに、サイバーセキュリティに対する意識の高まりも大きな要因だ。企業活動のデジタル化が進む一方で、ランサムウェアや標的型攻撃といったサイバー攻撃の脅威は年々深刻化している。システムの脆弱性を突いた攻撃から企業の重要な情報資産を守るためには、インフラレベルでの堅牢なセキュリティ対策が欠かせない。ネットワークの適切な設計やアクセス制御、サーバーのセキュリティ設定、脆弱性管理など、セキュリティに関する深い知識と実践的なスキルを持つインフラエンジニアは、事業継続の観点からも極めて重要視されている。
今回の調査でインフラエンジニアの平均年収がフロントエンドエンジニアを上回ったという事実は、これまでユーザーの目に直接触れる部分を開発する職種に注目が集まりがちだった状況から、その裏側でサービス全体を支えるIT基盤の専門性が再評価されていることを示している。ITサービスが社会にとって不可欠な存在となる中で、その安定稼働を保証するインフラエンジニアの役割は今後もますます重要になるだろう。これからシステムエンジニアを目指す者にとって、クラウド技術やセキュリティ、コンテナ技術といった現代的なスキルを習得し、インフラエンジニアとしてのキャリアを築くことは、高い専門性と市場価値を手にすることができる有望な選択肢の一つである。