【ITニュース解説】JavaScript30 — 30 Days of Vanilla JS Fun

Webアプリケーション開発の世界で広く使われているプログラミング言語、JavaScriptは、システムエンジニアを目指す上で習得が不可欠な技術の一つである。しかし、現代の開発現場ではReactやVue.jsといった「フレームワーク」や「ライブラリ」と呼ばれる便利なツール群が主流となっており、多くの初学者がJavaScriptそのものの基礎的な理解を飛ばして、いきなりこれらのツールから学習を始めてしまう傾向がある。これは、便利な道具の使い方は知っていても、その道具がどのような仕組みで動いているのかを理解していない状態であり、応用的な開発や予期せぬエラーに直面した際に大きな壁となる可能性がある。この課題を解決するために最適な学習教材として、Wes Bos氏が提供する無料のオンラインコース「JavaScript30」が注目されている。「JavaScript30」は、30日間で30個の小規模なWebアプリケーションを構築することを通じて、純粋なJavaScript、通称「Vanilla JS」のスキルを徹底的に鍛えることを目的としたチャレンジ形式のプログラムである。このコースの最大の特徴は、前述のフレームワークやライブラリ、さらには開発を効率化するための定型的なコード群であるボイラープレートなどを一切使用しない点にある。学習者は、Webブラウザとテキストエディタさえあれば、JavaScriptが本来持っている機能だけを駆使して、ゼロからアプリケーションを作り上げる経験を積むことができる。

なぜ、このように「素のJavaScript」にこだわる学習が重要なのか。それは、Web開発の根幹をなす技術への深い理解を得るためである。フレームワークは、複雑な処理を短いコードで実現できるように設計されているが、その内部では素のJavaScriptがWebブラウザの機能と連携して動作している。具体的には、JavaScriptを用いてHTMLの要素を取得したり、内容を書き換えたり、新しい要素を追加したりする「DOM操作」や、ユーザーのマウスのクリックやキーボード入力といったアクションを検知して特定の処理を実行する「イベント処理」などが、あらゆるWebアプリケーションの土台となっている。フレームワークはこれらの基本的な処理を抽象化し、開発者から見えにくくしている。「JavaScript30」では、ドラムキット、デジタル時計、画像ギャラリーといった具体的で面白いテーマのプロジェクトを通じて、これらのDOM操作やイベント処理を直接自分の手で実装していく。このプロセスを通じて、Webページがどのように動的に変化するのか、ユーザーの操作にどう応答するのかという本質的な仕組みを、身体で覚えるように学ぶことができる。これは、将来的にどのようなフレームワークを使うことになっても揺らぐことのない、開発者としての強固な基礎体力を養うことに直結する。

「JavaScript30」は、初心者から中級者までを対象として設計されている。学習はすべて短いビデオチュートリアル形式で進められ、各プロジェクトにはコーディングをすぐに開始できるスターターファイルと、行き詰まった際に参考にできる完成版のソースコードが用意されている。そのため、JavaScriptの基本的な文法（変数、関数、条件分岐、繰り返しなど）を一通り学んだ学習者が、次に何をすればよいかという段階で、実践的なスキルを身につけるのに最適である。また、このコースで扱われるコードは、ES6以降のモダンなJavaScript構文で書かれているため、現代的な開発スタイルを自然に習得できる点も利点だ。30日間のチャレンジを終える頃には、単に文法を知っているというレベルから、JavaScriptを使って実際に動くものを作り出せるという自信と、複雑な問題に直面したときに自ら解決策を導き出すための問題解決能力が身についているだろう。システム開発の世界では、新しい技術が次々と登場するが、その根底にある原理原則を理解しているエンジニアは、変化に強く、継続的に成長していくことができる。「JavaScript30」は、そのための確かな一歩を踏み出すための、非常に価値のある学習機会を提供している。