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【ITニュース解説】ジョンソンコントロールズ、中央監視をサブスク化--ビル管理を「資産」から「経費」へ

2025年09月08日に「ZDNet Japan」が公開したITニュース「ジョンソンコントロールズ、中央監視をサブスク化--ビル管理を「資産」から「経費」へ」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

ジョンソンコントロールズは、ビル管理システム「Metasys」をクラウドベースのサブスクリプションで提供開始した。これにより、システムを資産として購入する売り切り型に加え、月額利用料を経費として処理する方式も選べるようになり、ビル管理のコスト運用が柔軟になる。

ITニュース解説

ジョンソンコントロールズが、ビルオートメーションシステム(BAS)である「Metasys(メタシス)」を、従来の販売方式とは異なる新しいサービスモデルで提供すると発表した。この新しいサービスは「Managed Metasys Server(MMS)」と名付けられ、中央監視システムの利用形態が大きく変わる可能性を示している。これまでビル管理システムは、建物の「資産」として所有することが一般的だったが、今後は「経費」として利用するサブスクリプション型サービスへと選択肢が広がる。

まず、ビルオートメーションシステム(BAS)とは何かを理解する必要がある。BASは、大規模なオフィスビルや商業施設、病院といった建物の設備を自動で管理・制御するシステムのことだ。例えば、冷暖房や空調、照明、換気、電力消費、そして防犯カメラや入退室管理といったセキュリティシステムまで、建物内のあらゆる設備がネットワークでつながり、連携して動作するように設計されている。BASの目的は、建物の利用状況に応じてこれらの設備を最適な状態に保ち、快適な環境を提供しながら、エネルギー消費を最小限に抑え、運用コストを削減することにある。ジョンソンコントロールズが提供する「Metasys」は、このBASの一つであり、世界中で多くのビルに導入されている実績を持つ製品だ。

これまでのMetasysの提供形態は、いわゆる「オンプレミス・売り切り・資産モデル」が主流だった。オンプレミスとは、システムを導入するビル内に必要なサーバー機器やソフトウェアを直接設置し、管理・運用する方式を指す。企業はMetasysのシステム一式を「購入」し、自社の「資産」として所有する。これは、車や不動産を購入するのと似た考え方だ。一度購入すれば、そのシステムは自社のものとなり、会計上は減価償却という形で何年かにわたって費用として計上される。このモデルのメリットは、システムを自社で完全にコントロールできる点や、セキュリティ面で自社の管理下に置ける安心感があることだ。しかし、デメリットも大きい。まず、システムの導入には多額の初期投資が必要となる。さらに、導入後のサーバーのメンテナンス、OSやソフトウェアのアップデート、障害対応、セキュリティ対策といった運用・保守作業はすべて自社で行う必要があり、これには専門知識を持つ人材や継続的なコストがかかる。また、技術の進化が速いITの世界では、一度導入したシステムが数年で陳腐化してしまうリスクも抱えていた。

今回発表された新サービス「Managed Metasys Server(MMS)」は、この従来のモデルに、クラウドベースの「サブスクリプションモデル」という新たな選択肢を加えるものだ。サブスクリプションモデルとは、製品やサービスを「購入」するのではなく、一定期間「利用」する権利に対して定額の料金を支払う方式のこと。身近な例では、Netflixのような動画配信サービスや、Microsoft 365のようなソフトウェアサービスがこれにあたる。MMSの場合、ビル管理システムMetasysのサーバー機能がクラウド上で提供され、ビルを管理する企業はインターネットを通じてこれにアクセスし、サービスとして利用することになる。

この「クラウドベース」という点が非常に重要だ。従来のオンプレミスでは、各ビルにサーバーを設置する必要があったが、クラウドサービスを利用すれば、ジョンソンコントロールズが持つデータセンターのサーバー資源を共有して利用するため、導入企業は自社でサーバーを所有したり、物理的な管理を行う必要がなくなる。これにより、サーバーの購入費用や設置スペース、電気代、冷却設備などの初期投資が不要となる。

また、MMSの導入によって、ビル管理が「資産モデル」から「利用・経費モデル」へと移行する点も大きな変化だ。「資産モデル」では、システム購入時に多額の費用が発生し、それが会社の資産として計上され、減価償却を通じて数年かけて費用化される。これに対し、「利用・経費モデル」では、毎月あるいは毎年定額の利用料を支払う形となるため、その費用は会社の「経費」として計上される。これは、初期投資を大幅に抑えられ、予算計画を立てやすくなるというメリットがある。企業は、大きな初期投資のハードルを越えなくても、最新のビル管理システムを導入できるようになるのだ。

サブスクリプションモデルのメリットはこれだけではない。システムの運用・保守はサービス提供者であるジョンソンコントロールズ側が担当するため、システムの監視、トラブル対応、セキュリティパッチの適用、機能のアップデートといった専門的な作業から解放される。これにより、導入企業はITインフラの管理にかかる手間やコスト、人材の負担を大幅に軽減できる。常に最新の機能やセキュリティ対策が適用された状態でシステムを利用できるため、陳腐化の心配も少ない。また、ビルの規模や利用状況の変化に合わせて、必要なリソースを柔軟に増減させることも容易になる。例えば、新しいフロアができた際に監視対象を増やしたり、一時的にビルの一部を閉鎖する際にリソースを減らしたりといった対応が迅速に行える。

もちろん、クラウドベースのサブスクリプションモデルにも考慮すべき点はある。サービス提供者への依存度が高まるため、クラウドサービスが停止した場合のリスクや、データのセキュリティ、プライバシー保護に関する契約内容を十分に理解する必要がある。また、長期的に利用した場合の総コストが、オンプレミスでシステムを所有し続けた場合と比べてどうなるのか、慎重に評価することも重要だ。

ジョンソンコントロールズのこの動きは、SaaS(Software as a Service)と呼ばれるクラウドサービスが、より専門的で大規模なシステムであるビルオートメーションの分野にも浸透しつつあることを示している。このようなビジネスモデルの変化は、技術の進化だけでなく、ITが社会や企業のビジネスにどのように影響を与えているかを理解する上で非常に重要な事例だ。今後は、自社でインフラを所有するオンプレミスと、サービスとして利用するクラウドの両方のモデルを理解し、それぞれのメリット・デメリットを把握した上で、最適なソリューションを提案できる能力が求められるようになるだろう。

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