【ITニュース解説】Modern Micro Frontend Template and Demo
2025年09月07日に「Dev.to」が公開したITニュース「Modern Micro Frontend Template and Demo」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
Web開発で既存Micro Frontend (MFE) 環境の開発体験の悪さに悩んだ筆者が、これを改善するためRsbuildを利用したモダンでシンプルなMFEテンプレートを作成し、GitHubで公開した。
ITニュース解説
このニュース記事は、現代のウェブアプリケーション開発における特定の課題と、その解決策となる新しい技術アプローチについて述べている。特に、マイクロフロントエンド(MFE)という開発手法における具体的な問題点とその改善策が示されている。システムエンジニアを目指す初心者にとって、実際の開発現場で直面する可能性のある課題と、その解決のためにどのような技術が使われているのかを知る上で非常に参考になるだろう。
マイクロフロントエンド(MFE)とは、巨大なウェブアプリケーションを、複数の独立した小さなフロントエンドアプリケーション(マイクロアプリ)に分割して構築するアーキテクチャのことである。従来のモノリス(一枚岩)なアプリケーションでは、すべての機能が密接に結合しており、開発規模が大きくなるにつれてコードの変更が困難になり、保守性やスケーラビリティが低下するという問題があった。MFEは、この問題を解決するために、アプリケーションを機能ごとに独立した部品に分け、それぞれを異なるチームが独立して開発・デプロイできるようにする。これにより、開発の並行性を高め、リリースサイクルを短縮し、特定の技術スタックに縛られずに柔軟な開発が可能になる。
記事の筆者は、現在関わっているプロジェクトのMFEアーキテクチャが非常に劣悪な状態にあると述べている。その主な原因として、Webpackというビルドツールの使用が挙げられている。Webpackは、JavaScriptアプリケーションのソースコードをブラウザが読み込める形にバンドル(複数のファイルを一つにまとめること)するためのツールとして長年広く利用されてきたが、大規模なプロジェクトではビルドに時間がかかり、開発効率を低下させるという課題があった。筆者は、新しいプロジェクトでWebpackを使うのは時代遅れだと考えている。
特に深刻なのは、開発体験(DX: Developer Experience)の著しい悪化である。DXとは、開発者がソフトウェアを開発する際の快適さや効率性を指す言葉で、開発ツールや環境、プロセスなどが使いやすいかどうかが評価のポイントとなる。筆者の環境では、わずかなコード変更を行っただけでも、その変更がアプリケーションに反映されるまでに数秒から数分もの時間を要したという。これでは、開発者はコードの修正と結果の確認を繰り返す「フィードバックループ」が非常に遅くなり、開発の生産性が大幅に低下する。さらに、HMR(Hot Module Replacement)という重要な機能がまともに動作していなかったとも述べている。HMRは、開発中にコードを変更した際、アプリケーション全体をリロードすることなく、変更されたモジュールだけをリアルタイムで置き換え、アプリケーションの状態を維持したまま変更を反映する機能である。これが機能しないということは、開発者はコードを変更するたびに手動でアプリケーションを再起動したり、ブラウザをリロードしたりする必要があり、開発のスピードが著しく落ちてしまう。筆者がこの状況を「.NET Framework 4.0開発をまたやっているかのようだ」と表現しているのは、生産性の低い、非常に古い開発環境を強いられているという強い不満の表れである。
このような不満から、筆者は既存のアーキテクチャを改善するために、新しいMFEアーキテクチャのデモプロジェクトを作成し始めた。その過程で、モダンでクリーン、かつシンプルなMFE開発のためのテンプレートが生まれたと説明している。このテンプレートでは、Webpackの代替となる新しいビルドツールであるRspackとRsbuildが採用されている。
RspackとRsbuildは、Rust言語で開発された次世代のビルドツールである。Rustは非常に高速でメモリ安全性の高いプログラミング言語であり、その特性を活かしてRspackはWebpackと高い互換性を持ちながらも、ビルド速度を劇的に向上させている。RspackはWebpackの主要な機能やAPIをサポートしており、既存のWebpackベースのプロジェクトから比較的容易に移行できる。Rsbuildは、Rspackをベースにして構築された、より高レベルなビルドツールキットである。Rsbuildは、開発者が最小限の設定でプロジェクトをセットアップできるように設計されており、高速なビルドと優れた開発体験を提供することを目指している。
これらの新しいツール、特にRsbuildを活用することで、筆者は以前の環境で直面していたDXの悪さを解消し、より効率的で快適なMFE開発を実現できたと述べている。この新しいテンプレートは、GitHubで「module-federation-template-rsbuild-rspack」という名前で公開されている。このテンプレートで利用されている「モジュールフェデレーション」は、Webpack 5から導入された機能であり、MFEアーキテクチャにおいて非常に重要な役割を果たす。これは、複数の独立したアプリケーション(各マイクロフロントエンド)が、実行時に互いのコードを動的に共有・利用できるようにする強力な仕組みである。これにより、異なる開発チームが開発したフロントエンド部品を、まるで一つのアプリケーションの一部であるかのようにシームレスに統合することが可能になる。
このニュース記事は、現在のフロントエンド開発におけるビルドツールと開発体験の重要性を浮き彫りにしている。システムエンジニアを目指す上で、単に特定の技術の使い方を学ぶだけでなく、その技術がどのような課題を解決するのか、そしてより良い解決策としてどのような新しい技術が登場しているのかという視点を持つことが不可欠だ。フロントエンド開発の分野は進化が速く、常に新しいツールやフレームワークが登場するため、古い技術に固執せず、より良い開発体験と効率性を追求する姿勢が求められる。筆者の経験と作成したテンプレートは、モダンなMFE開発の一つの具体的な実践例として、今後の学習やプロジェクト構築において貴重な参考資料となるだろう。