【ITニュース解説】We Split Our Monolith Into 12 Microservices. Our System Got Worse.
2026年09月28日に「Medium」が公開したITニュース「We Split Our Monolith Into 12 Microservices. Our System Got Worse.」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
「モノリス」と呼ばれる巨大なシステムを12個の「マイクロサービス」に分割したが、かえってシステムの性能が悪化した事例を紹介。アーキテクチャ設計図では進歩に見えても、実際の運用では期待と異なる結果になることがあるため、移行には慎重な検討が必要だ。
ITニュース解説
ニュース記事は、ある企業が彼らのシステムを「モノリス」と呼ばれる一つの大きな塊から「マイクロサービス」という小さな部品に分割したところ、かえってシステムの状態が悪化してしまったという衝撃的な事例を取り上げている。システムエンジニアを目指す上で、このようなアーキテクチャの選択がシステムの開発や運用にどれほど大きな影響を与えるかを理解することは非常に重要だ。
まず、「モノリス」と「マイクロサービス」とは何かを簡単に説明する。モノリスアーキテクチャとは、ウェブサイトやアプリケーションの全ての機能が、まるで一枚岩のように一つの大きなプログラムとして tightly coupled(密接に結合している)に構築されているシステムのことだ。例えば、ユーザー管理、商品管理、注文処理といった異なる機能が全て同じ大きなプログラムの中にまとめられている状態を指す。このモノリスは開発の初期段階ではシンプルで分かりやすく、システムを動かすサーバーに配置する作業(デプロイ)も比較的容易であるという利点がある。しかし、システムが大規模になり、機能が複雑になるにつれて、どこか一部に小さな変更を加えるだけでも、システム全体に予期せぬ影響が出ないか慎重に確認する必要があり、開発のスピードが落ちてしまうことがある。また、特定の機能だけ負荷が高まっても、システム全体をより高性能なサーバーに切り替える(スケールアップ)必要があり、効率が悪いという課題も抱えている。
一方、「マイクロサービスアーキテクチャ」は、モノリスが抱えるこれらの課題を解決するために考えられた方式だ。システムを独立した小さなサービスに分割し、それぞれが特定の機能だけを担当するように設計する。例えば、ユーザー管理はユーザーサービス、商品管理は商品サービス、注文処理は注文サービスといった具合に、明確な役割を持つ複数のサービスに分けることができる。それぞれのサービスは独立して開発され、個別にシステムをサーバーに配置(デプロイ)し、負荷に応じて必要なサービスだけを増強する(スケール)ことが可能だ。これにより、システム全体を停止することなく一部の機能を更新したり、特定の負荷の高いサービスだけを増強したりできるため、開発の柔軟性やスピードが向上し、大規模なシステムでも管理しやすくなると期待されている。
多くの企業がこのようなマイクロサービスのメリットに惹かれ、モノリスからマイクロサービスへの移行を検討したり、実際に実行したりしている。今回のニュース記事の企業も、システムをより良くするためにモノリスを12個のマイクロサービスに分割した。しかし、結果は「システムが悪化した」というものだった。作成されたアーキテクチャ図上では進歩に見えたものの、実際に動かしてみると異なる結果になったという。一体なぜこのような事態になったのだろうか。
考えられる失敗の要因はいくつかある。一つ目の大きな問題は、システムの複雑性が増大したことだ。モノリスでは一つのプログラム内で直接呼び出していた機能間の連携が、マイクロサービスではネットワークを介した通信となる。12個ものサービスが互いに連携し合うとなると、それぞれのサービスがどのような手順で、どのようなデータをやり取りするのか、そして通信中にエラーが発生した場合にどう対処するのかといった設計が非常に複雑になる。これにより、システム全体の構成や状態を把握することが極めて困難となり、結果として運用管理が非常に難しくなる。システムのどこに問題があるのかを突き止める作業(デバッグ)も、単一のモノリスに比べて格段に複雑になり、時間と労力がかかるようになる。
二つ目は、データの一貫性の維持が困難になったことだ。モノリスでは多くの場合、データは一つの大きなデータベースに集約されているため、データの間違いや矛盾を防ぎやすい。しかし、マイクロサービスでは各サービスが独自のデータベースを持つことが一般的である。例えば、ユーザーが商品を注文する際に、注文サービス、在庫サービス、支払いサービスなど複数のサービスが連携してそれぞれのデータベースを更新する必要がある。この際、もし途中で何らかの問題が発生し、一部のサービスだけがデータを更新できなかった場合、システム全体でデータに不整合が生じてしまう可能性がある。このような分散された環境でデータの整合性を保つための設計は非常に難しく、高度な専門知識と技術が求められる。
三つ目は、デバッグや問題解決の難しさが増したことだ。もし顧客から「商品が注文できない」という問い合わせがあった場合、モノリスであれば一つのアプリケーションのログを調べることで原因を特定しやすかった。しかし、マイクロサービスでは、それが注文サービスの問題なのか、商品サービスとの連携に失敗したのか、支払いサービスに障害が発生しているのか、あるいはサービス間のネットワーク通信に問題があるのか、原因を特定するまでに多くの時間と手間がかかる。複数のサービスをまたがる処理の流れを追跡(トレース)するためには、専用のツールや仕組みが必要となり、これが適切に導入・運用されていないと、問題の解決は極めて困難になる。
四つ目は、開発チームのスキルや組織文化がマイクロサービスに適応できていなかった可能性である。マイクロサービスアーキテクチャは単なる技術的な分割にとどまらず、開発チームの組織体制や働き方にも大きな影響を与える。各サービスを独立した小さなチームが担当し、自律的に開発から運用までを行う文化が求められる。もし、モノリス開発に慣れていたチームが、分散システムの設計、開発、運用に必要な知識(例えば、サービスの通信方式の設計、障害時の回復方法など)やスキルを十分に持たないまま移行を進めてしまうと、予想外のトラブルに直面した際に適切に対処できず、システムの悪化を招くことになりかねない。記事の「アーキテクチャ図では進歩に見えたが、本番環境は異なる意見だった」という言葉は、机上の理想と現場の現実とのギャップを強く示唆している。
五つ目は、サービスの分割が適切でなかった可能性だ。マイクロサービス化を成功させるには、ビジネス上の意味のある単位でサービスを分割することが非常に重要だ。単にモノリスのコードを機械的に分割しただけでは、サービス間の依存関係が解消されず、かえって複雑性が増してしまうことがある。例えば、Aサービスを変更すると必ずBサービスも変更する必要があるような密接な関係にある機能を別々のマイクロサービスとして独立させてしまうと、メリットは少なく、かえって開発・運用の手間が増えるだけになってしまう。
そして最後に、コストの増加も無視できない要因だ。マイクロサービスを運用するためには、各サービスを動かすためのインフラ(サーバーや、それらを効率的に管理する仕組み)、サービス間の通信を管理する仕組み、システムの状況を監視するツール、ログを収集・分析するツールなど、多岐にわたるミドルウェアやツールが必要となる。これらの導入、設定、そして継続的な運用には初期投資だけでなく、ランニングコストがかかる。また、前述したように複雑性が増すことで、開発や運用にかかる人件費も増大する可能性がある。
この事例は、マイクロサービスアーキテクチャが常に万能な解決策ではないという重要な教訓を与えている。マイクロサービスは確かに多くのメリットを持つ一方で、その導入には高い技術力、周到な計画、適切な設計、そして成熟した開発・運用文化が不可欠だ。流行の技術だからといって安易に飛びつくのではなく、自分たちのプロジェクトや組織にとって本当にそれが最適なのか、メリットとデメリットを慎重に比較検討し、段階的に導入していく姿勢がシステムエンジニアには求められる。新しい技術の表面的な側面に惑わされることなく、その技術がなぜ必要なのか、どのような課題を解決できるのかを深く理解することが、システムエンジニアとして成長していく上で非常に重要なのだ。