【ITニュース解説】How to show multi-quality video streaming (HD, SD, FHD)
2025年09月11日に「Dev.to」が公開したITニュース「How to show multi-quality video streaming (HD, SD, FHD)」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
動画の画質(HD/SD/FHD)を再生中に切り替える機能の実装方法について、システム的な疑問を投げかける記事。HLSのような再生リストの必要性や、サーバーとクライアント(ExoPlayer等)間のデータ形式、単一URLで複数画質を配信する仕組みが焦点だ。
ITニュース解説
多くの動画配信サービスやアプリケーションで、動画を再生している最中にHD、SD、FHDといった様々な画質オプションをユーザーが自由に切り替えられる機能を目にする機会は多いだろう。この便利な機能の裏側には、どのような技術が隠されているのか、そしてそれは単一のURLで実現可能なのか、という疑問を持つのは当然のことだ。
結論から言えば、この画質切り替え機能は「アダプティブビットレートストリーミング(Adaptive Bitrate Streaming、略してABR)」という技術によって実現され、それは単一のURL、具体的にはプレイリストやマニフェストと呼ばれるファイルへのURLを介して行われる。
まず、この仕組みの基本的な考え方を理解しよう。ユーザーに複数の画質オプションを提供するためには、まずサーバー側で、同じ動画コンテンツを異なる画質(解像度とビットレート)で複数種類用意しておく必要がある。例えば、SD画質(低解像度、低ビットレート)、HD画質(中解像度、中ビットレート)、FHD画質(高解像度、高ビットレート)といった具合だ。これらの異なる画質の動画は、それぞれ独立したファイルとして存在するように見えるが、実際にはさらに小さな「セグメント」と呼ばれる単位に分割されている。
動画コンテンツを細かく分割し、さらに各画質バージョンで用意する理由は、ユーザーのネットワーク環境や再生デバイスの性能が常に変動するためだ。例えば、スマートフォンでモバイルネットワークを使っている場合と、高速なWi-Fiに接続されたPCで視聴している場合とでは、必要なデータ転送速度が大きく異なる。ABR技術は、再生中のネットワーク帯域幅(データを送れる速さ)やデバイスの処理能力、バッファの状態(動画データを一時的に蓄えておく領域)を常に監視し、その状況に応じて最適な画質のセグメントを動的に選択して配信する。これにより、ユーザーは途切れることなくスムーズに動画を視聴できる。もしネットワークが混雑すれば自動的に画質を落とし、空いていればより高画質へと切り替えることで、快適な視聴体験を提供するのだ。ユーザーが手動で画質を切り替える機能も、このABRの仕組みを利用して、特定の画質バージョンへの切り替えをクライアントアプリに指示するものだ。
このABRを実現するための代表的な技術としては、「HLS(HTTP Live Streaming)」と「MPEG-DASH(Dynamic Adaptive Streaming over HTTP)」の二つが挙げられる。
HLSはAppleが開発した技術で、ウェブ上での動画ストリーミングにおいて非常に広く利用されている。HLSでは、動画コンテンツは小さなMPEG-2 TS(Transport Stream)形式のファイル(セグメント)に分割され、これらがHTTPサーバーを通じて配信される。重要なのは、「プレイリストファイル」の存在だ。特に「マスタープレイリスト(.m3u8ファイル)」と呼ばれるものが、単一URLでマルチストリームを管理する鍵となる。このマスタープレイリストは、利用可能なすべての画質バージョン(異なるビットレートや解像度の動画ストリーム)への参照を含んでいる。各画質バージョンにはそれぞれ専用の「メディアプレイリスト」があり、そこにはその画質の動画を構成する個々のセグメントファイルへのURLがリストアップされている。クライアント(例えばExoPlayerのような動画プレイヤー)は、まずこのマスタープレイリストのURLにアクセスし、どの画質の動画が利用可能か、それぞれの画質がどのような特性を持っているかといった情報を取得する。そして、自身のネットワーク状況などに基づいて最適なメディアプレイリストを選択し、その中から動画セグメントを順次ダウンロードして再生していく。これにより、クライアントは単一のマスタープレイリストURLから、複数の画質オプションを持つ動画コンテンツ全体にアクセスできるのだ。
一方、MPEG-DASHは国際標準化されたABR技術で、HLSと同様の目的を持つ。HLSが主にAppleのエコシステムで普及したのに対し、MPEG-DASHはより幅広いデバイスやプラットフォームでの互換性を目指して設計されている。MPEG-DASHでも、動画コンテンツは小さなセグメントに分割される。HLSにおけるプレイリストに相当するのが、MPEG-DASHにおける「メディアプレゼンテーション記述(Media Presentation Description、略してMPD)」ファイルだ。このMPDファイル(通常は.mpd拡張子を持つXML形式のファイル)が、利用可能なすべての画質バージョン(「Representation」と呼ばれる)の情報、それらを構成するセグメントの場所、再生順序などを記述している。クライアントは、このMPDファイルのURLにアクセスすることで、やはり単一の入り口から全ての画質オプションにアクセスし、動的に最適な画質を選択してストリーミング再生を行うことができる。
サーバー側の役割は、これらの仕組みを実現するために不可欠だ。まず、元の高品質な動画コンテンツを、様々な解像度とビットレートを持つ複数のバージョンに「エンコード」(圧縮変換)する。次に、これらのエンコードされた動画を、数秒程度の小さなセグメントファイルに分割する。そして、HLSであればマスタープレイリストと各メディアプレイリスト、MPEG-DASHであればMPDファイルを生成し、これらのすべての動画セグメントとプレイリスト/MPDファイルをHTTPサーバーに配置して、クライアントからのリクエストに応じて配信できるようにする。
クライアント側、例えばAndroidアプリでよく利用されるExoPlayerのようなオープンソースの動画プレイヤーは、これらのABR技術に標準で対応している。プレイヤーはまず、前述のHLSマスタープレイリストやMPEG-DASH MPDファイルのURLを受け取り、それを解析する。その後、現在利用可能なネットワーク帯域幅やCPU使用率、バッファの状況などをリアルタイムで測定し、その情報に基づいて次にダウンロードすべき最適な画質の動画セグメントを決定する。例えば、ネットワークが混雑してきたと判断すれば、より低いビットレートの画質のセグメントに自動的に切り替え、逆にネットワークが安定していれば、より高いビットレートの画質のセグメントへと移行する。ユーザーが手動で画質を切り替えた場合も、プレイヤーはその選択に基づいて次に取得するセグメントの画質を変更する。このように、プレイヤーは常に状況を判断し、スムーズな再生を維持しようと努めるのだ。
まとめると、動画再生中に画質を切り替える機能は、「アダプティブビットレートストリーミング」という技術に基づいている。この技術では、サーバー側で同じ動画コンテンツを様々な画質で事前にエンコードし、それぞれを小さなセグメントに分割しておく。そして、これらの異なる画質バージョンの動画セグメントへの情報を含む「プレイリスト」や「マニフェスト」ファイル(HLSの.m3u8やMPEG-DASHの.mpdなど)が作成される。クライアント(動画プレイヤー)は、このプレイリスト/マニフェストファイルの「単一のURL」にアクセスすることで、利用可能なすべての画質オプションに関する情報を取得し、ネットワーク状況やユーザーの選択に応じて、最適な画質の動画セグメントを動的に選択・ダウンロードして再生する。このように、単一のURLが情報の入り口となり、その背後にある複雑なマルチストリーム配信を巧みに管理しているのだ。