【ITニュース解説】From Simplicity to Complexity: My Love-Hate Journey with Next.js

2025年09月09日に「Dev.to」が公開したITニュース「From Simplicity to Complexity: My Love-Hate Journey with Next.js」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

WebフレームワークNext.jsは、v13のApp Router導入で大きく変化した。以前はファイル配置だけでページを作成できたが、新機能で設計が複雑化。大規模開発では強力な反面、学習コストが高まり、シンプルさは失われた。(118文字)

ITニュース解説

Webアプリケーション開発の世界で広く使われているフレームワーク「Next.js」は、Reactというライブラリを基盤として、より高機能で効率的な開発を可能にするツールである。React単体では実装が難しいページの表示速度向上策や、サーバーとの連携などを容易に実現できるため、多くの開発者に支持されてきた。しかし、このNext.jsがバージョン13で大きな進化を遂げ、その変化が開発者の間で大きな話題となっている。かつてのシンプルさから一転し、より強力で複雑なフレームワークへと変貌したのである。

以前のNext.jsは、その直感的な設計で知られていた。特に象徴的だったのが「ファイルベースルーティング」という仕組みだ。これは、「pages」という名前の特別なフォルダの中にファイルを作成するだけで、そのファイル名がそのままWebページのURLになるというものだった。例えば、「pages」フォルダ内に「about.js」というファイルを作れば、自動的に「/about」というURLでアクセスできるページが完成した。この単純明快なルールにより、開発者は複雑な設定に悩まされることなく、コンテンツの作成に集中することができた。さらに、サーバーサイドレンダリング(SSR)や静的サイト生成(SSG)といった、Webサイトの表示速度を高速化するための高度な技術も、簡単な設定で利用可能だった。この手軽さと生産性の高さが、Next.jsが多くの開発者の心を掴んだ理由であった。

しかし、Next.js 13で「App Router」という新しい概念が導入され、そのシンプルさは大きく変化した。従来の「pages」フォルダに代わり、「app」フォルダが推奨されるようになったのだ。このApp Routerは、Webアプリケーションをより高性能かつ大規模に構築するための新しい設計思想に基づいている。その中心的な技術が「React Server Components(RSC)」である。これは、Webページを構成する部品(コンポーネント)を、サーバー側で処理するものと、ユーザーのブラウザ(クライアント)側で処理するものに明確に分ける考え方だ。サーバーコンポーネントは、データベースへのアクセスなどサーバーでしか行えない処理を担当し、必要なデータだけをクライアントに送信する。これにより、ブラウザがダウンロードするプログラムの量を減らし、ページの表示速度を劇的に向上させることができる。

この強力な機能を手に入れる一方で、開発者が考えなければならないことは格段に増えた。以前は「ファイルを作ればページになる」という単純な世界だったが、App Routerでは「このコンポーネントはサーバーで動かすべきか、クライアントで動かすべきか」「データを取得する最適な場所はどこか」「複数のページで共通のレイアウトをどう管理するか」といった、アプリケーション全体の設計を深く考慮する必要が生じた。コンポーネントをクライアントで動作させたい場合は、ファイルの冒頭に「"use client"」という記述が必須になるなど、新しいルールも覚えなければならない。この変化は、Next.jsの学習コストを大幅に引き上げ、長年のユーザーでさえ戸惑うほどの大きなメンタルモデルの転換を要求するものだった。

この複雑化は、決してデメリットばかりではない。大規模で複雑なアプリケーションを開発する際には、App Routerの提供する機能は絶大な効果を発揮する。React Server Componentsによるパフォーマンス向上はもちろん、複数のページでヘッダーやフッターといった共通部分を効率的に管理できる「Layout」機能など、コードを整理し、保守性を高めるための仕組みが豊富に用意されている。つまり、Next.jsは、よりプロフェッショナルで、パフォーマンスを極限まで追求するような要求に応えるために、あえて複雑な道を選んだと言える。

結論として、現在のNext.jsは、かつてのような手軽さだけを求めるフレームワークではなくなっている。Webアプリケーションのパフォーマンスと拡張性を真剣に考える開発者のための、強力だが習熟を要するツールへと進化した。これからシステムエンジニアを目指し、Next.jsを学ぼうとする者は、このApp Routerという新しい仕組みが現在の主流であることを理解しておく必要がある。最初は戸惑うことも多いかもしれないが、その複雑さの裏にある技術的な利点を学び乗り越えたとき、より高度なWebアプリケーションを構築する能力が身についているだろう。Next.jsの進化は、Web開発の未来がどこへ向かっているのかを示す、一つの重要な道標なのである。

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