【ITニュース解説】Building PersonaPrep: An AI Personality Coach with Kiro

2025年09月06日に「Dev.to」が公開したITニュース「Building PersonaPrep: An AI Personality Coach with Kiro」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

AI会話コーチ「PersonaPrep」は、新しい環境での会話練習を支援し自信を育む。開発にはAIツールKiroが大きく貢献。Kiroのコード生成や開発指針管理機能により、Spring BootとMongoDBで構成されたシステムをハッカソンで短期間に構築できた。

ITニュース解説

このニュース記事は、AIを活用した「PersonaPrep」というパーソナリティコーチアプリの開発と、その開発過程で「Kiro」というAIコーディングツールがいかに役立ったかを解説している。

まず、PersonaPrepとは何かから説明する。これは、AIの力を使って、新しい環境での会話に不安を感じる人々を助けるためのパーソナリティコーチアプリだ。例えば、新しい職場に加わる時、大学で初めての授業に出席する時、あるいは異なる文化や言語が関わる場面で、コミュニケーションに緊張を感じることは誰にでもある。PersonaPrepは、そのような場面での会話練習を安全でサポートの行き届いた環境で提供し、ユーザーが自信を持って会話に臨めるようにすることを目的としている。 このAIコーチは、単に質問に答えるだけのチャットボットとは違い、ユーザーのニーズや過去の会話履歴に基づいて練習内容を調整し、適切なアドバイスをくれる。具体的には、職場での自己紹介や会議での発言練習、カジュアルな雑談の練習、そして新しい言語や文化での一般的なフレーズの練習といった、社会的な不安の解消や、ユーザーに合わせた個別学習、言語の壁の克服に役立つように設計されている。

次に、このPersonaPrepがどのような技術で作られているか、いわゆる「技術スタック」について説明する。 アプリの裏側で動く機能(「バックエンド」と呼ぶ)には、Java 17というプログラミング言語と、そのためのフレームワークであるSpring Bootが使われている。これは、アプリとユーザーのやり取りを処理したり、他のシステムと連携するための「REST API」と呼ばれるプログラムの窓口を作ったり、後述するリアルタイムな会話を可能にする「WebSocket」という技術をサポートしたりする中心的な役割を果たす。 ユーザーの練習セッションや会話の履歴といった大切な情報は、MongoDB Atlasというデータベースに保存される。これは、ユーザーの成長を記録したり、過去の情報を参照したりするために必要だ。 そして、AIとのリアルタイムでスムーズな対話を実現するために、WebSocketsという技術が使われている。一般的なウェブサイトではページを読み込むたびにサーバーと通信するが、WebSocketを使うと、一度接続すれば常にサーバーとつながった状態になり、チャットのような高速なやり取りが可能になる。 さらに、過去の練習セッションの中から似たようなシナリオを見つけ出して提案するために、「Vector Search」(ベクトル検索)という技術も利用されている。これにより、ユーザーは自分の学習履歴を効果的に活用できる。 ユーザーが実際に目に触れる部分(「フロントエンド」と呼ぶ)は、ReactというJavaScriptのライブラリと、TailwindというCSSフレームワークを使って作られている。これらは、ユーザーが使いやすく、見た目もきれいで、素早く動作する画面を作るために選ばれた技術だ。

このプロジェクトでは、「Kiro」というAIコーディングツールが開発を大きく加速させた。システムエンジニアにとって、プロジェクトの初期設定や、繰り返し発生する定型的なコードの作成は多くの時間を要する作業だが、Kiroはこれらの負担を軽減した。 Kiroの主な機能の一つは「AIコード生成」だ。これにより、Spring BootのAPIを処理するコントローラ部分、MongoDBデータベースにデータを保存・取得するためのリポジトリ部分、そしてリアルタイムチャットのためのWebSocketの設定など、アプリの骨格となるコードを非常に迅速に作成できた。これにより、開発チームは基本的な設定に時間を費やすことなく、すぐにアプリの核となる機能開発に取り掛かることができた。 次に「Spec Mode(スペックモード)」という機能が重要だった。これは、単に「コードを生成して」と漠然と指示するのではなく、開発したい機能の概要を高レベルで記述することで、Kiroがその内容を理解し、具体的なコード生成のタスクを段階的に実行してくれるというものだ。これはまるで、熟練したエンジニアと一緒にプログラミングをしているような感覚で、開発の進行状況も自動で管理されるため、非常に効率的だった。 また、「Steering Docs(ステアリングドキュメント)」もプロジェクトの成功に不可欠な要素だった。これは、プロジェクトのビジョンや目指す方向性を明確に定義した文書のことだ。PersonaPrepのビジョンとして、「ユーザー中心であること(一般的なQ&Aではなく会話練習であること)」、「リアルタイム対話であること」、「過去の記憶やベクトル検索によって文脈を考慮した応答をすること」などが定義された。開発を進める中で、Kiroは常にこのステアリングドキュメントを参照し、コードの提案や開発の方向性がビジョンから外れないようにガイドした。これにより、余計な機能を追加してしまったり、プロジェクトの目的を見失って手戻りが発生したりするリスクを防ぎ、限られた時間の中でアプリを完成させることに貢献した。 さらに「Hooks(フック)」という機能も時間を節約した。これは、特定のアクション(例えば、コードが変更された後など)が起きたときに、自動的に実行されるべきタスクをKiroに定義させる機能だ。これにより、手動で行っていた繰り返し作業を自動化し、開発者はより創造的な作業に集中できた。

PersonaPrepが実際にどのように動くか、具体的な流れを見てみよう。 まずユーザーは、「私はドイツで新しい仕事を始めるのですが、流暢なドイツ語は話せません」といった形で、自分が練習したい具体的なシナリオを入力する。 するとAIコーチは、そのシナリオに合わせて「自己紹介はこんな風に試してみてはどうでしょうか…」といった具体的な対話で応答する。 ユーザーとAIの会話の履歴は、先ほど説明したMongoDBデータベースに全て保存される。これにより、ユーザーは後から自分の練習内容を振り返り、どれだけ成長したかを確認できる。 また、Vector Searchの機能を使って、過去の練習セッションの中から今回のシナリオに似たものを見つけ出し、関連する練習履歴を提示することもできる。 ユーザーはWebSocketsを通じて、AIコーチとリアルタイムで対話を続けながら、自分のペースで練習を深めていくことができるのだ。

このプロジェクトを通じて得られた教訓は、システムエンジニアを目指す上でも非常に重要だ。 まず、KiroのようなAIツールは単なるコード生成マシンではなく、プロジェクトの構造化、仕様の明確化、そして開発の方向性を示す「チームメイト」として機能することがわかった。 AIが定型的なコードや初期設定を担ってくれることで、開発チームはアプリの核となるユニークな機能や、ユーザーにとって本当に価値のある部分の開発に集中できるようになった。これは、限られた時間で行われる開発イベントのような状況では特に強力なメリットとなる。 そして、Steering Docsのような形でプロジェクトのスコープ(範囲)を明確に定義し、それに従う規律が非常に重要であることも学んだ。これにより、ただ「クールなデモ」を作るだけでなく、実際に動作する「出荷可能な」アプリを完成させることができた。

PersonaPrepの開発は、単なる開発イベントでのプロジェクトに終わらず、KiroのようなAIツールが、アイデアと実際に動くコードとの間の隔たりを埋める強力な力を持っていることを示した。KiroのSpec ModeやSteering Docsを効果的に活用することで、開発チームは短期間で、フルスタックのAIアプリケーションを完成させることができた。システムエンジニアを目指す皆さんにとっても、このようなAIを活用した開発手法は、これからのプロジェクトを加速させる上で非常に役立つだろう。

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