【ITニュース解説】Building an AI-Powered Semantic Search with Django, FAISS, and OpenAI

2025年09月06日に「Dev.to」が公開したITニュース「Building an AI-Powered Semantic Search with Django, FAISS, and OpenAI」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

AIで文章の意味を理解する「セマンティック検索」システムを、人気技術のDjango、FAISS、OpenAIで構築する方法を紹介する記事だ。キーワードではなく文脈を読み取るため、従来の検索より賢く、ECやチャットボットなどで活用できる。OpenAIでテキストをベクトル化し、FAISSで高速検索、DjangoでAPI化する手順を学ぶ。

ITニュース解説

現代のIT分野で注目されている「セマンティック検索」は、従来の検索システムとは一線を画す画期的な技術だ。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、この技術の仕組みと応用を理解することは、これからのキャリアにおいて非常に重要となるだろう。この記事では、Django、FAISS、OpenAIといった主要な技術を組み合わせ、どのようにしてAIを活用したセマンティック検索システムを構築できるのかを具体的に解説する。

従来のキーワード検索は、入力された単語と完全に一致する単語を含む文書を見つけ出す仕組みに依存していた。例えば、「タシュケントの安いホテル」と検索すると、「タシュケント」「安い」「ホテル」という単語がすべて含まれる文書だけが検索対象となる。しかし、もし文書中に「タシュケントの手頃な宿泊施設」と書かれていた場合、意味は同じでもキーワードが一致しないため、検索結果から漏れてしまう可能性があった。これは、私たちが日常的に使う言葉が持つ多様な表現や類義語を、従来の検索が理解できなかったためだ。

これに対してセマンティック検索は、キーワードの一致だけでなく、言葉の「意味」そのものを理解しようとする。これにより、「タシュケントの安いホテル」という検索クエリに対して、「タシュケントの手頃な宿泊施設」のような、異なる表現でも意味が同じであれば関連性の高い情報として認識し、提供できるのだ。この「意味を理解する」という能力は、ECサイトでの商品探し、顧客サポートのチャットボット、企業内の膨大な知識ベース検索など、多岐にわたる分野でその価値を発揮する。

このセマンティック検索を実現するための鍵となるのが、「埋め込み(Embedding)」と呼ばれる技術である。埋め込みとは、テキストの持つ意味を数値の並び(ベクトル)に変換したものだ。例えば、「リンゴ」と「ミカン」は似たような果物なので、それらを表現するベクトルも数値的に近い位置に配置される。一方、「リンゴ」と「自動車」は全く異なるものなので、ベクトルも遠く離れた位置に配置される。このように、意味が近いテキストは近いベクトルとして、意味が遠いテキストは遠いベクトルとして表現されることで、コンピュータがテキストの意味を数値的に扱えるようになる。

このセマンティック検索システムを構築する主要な技術要素は以下の通りだ。まず、ウェブアプリケーションのバックエンド(サーバー側)を担当するのが「Django」である。DjangoはPythonで書かれた強力なウェブフレームワークで、ユーザーからのリクエストを受け付けたり、データベースと連携したり、検索結果をウェブページとして返したりする役割を担う。具体的には、セマンティック検索のためのREST API(アプリケーション同士が通信するための規約)を構築する際に利用される。

次に、このシステムの頭脳とも言える部分が「OpenAI」の提供する「text-embedding-3-large」モデルだ。これは、あらゆるテキストを先ほど説明した「埋め込み(ベクトル)」に変換するAIモデルである。ユーザーの検索クエリも、検索対象となる文書も、すべてこのモデルを通して、意味を表現する高次元の数値ベクトルに変換される。

そして、変換された膨大な数のベクトルデータを効率的に管理し、高速に検索するための心臓部となるのが「FAISS(Facebook AI Similarity Search)」である。FAISSは、大量のベクトルデータの中から、特定のベクトルと「最も似ている(距離が近い)」ベクトルを非常に高速に見つけ出すために特化されたライブラリだ。OpenAIで生成された文書の埋め込みベクトルはFAISSのインデックスに保存され、ユーザーからの検索クエリのベクトルと照合されることで、意味的に関連性の高い文書が迅速に特定される。

では、これらの技術をどのように連携させてシステムを構築していくのか、その基本的な流れを追ってみよう。

最初のステップは、必要なソフトウェアライブラリをコンピュータにインストールすることだ。これには、DjangoとそれをREST APIとして機能させるためのdjangorestframework、OpenAIの埋め込みモデルを利用するためのopenaiライブラリ、そしてベクトル検索の核となるfaiss-cpu(CPUで動作するFAISS版)が含まれる。これらをインストールすることで、各技術を利用するための準備が整う。

次に、OpenAIのライブラリを使ってテキストから埋め込みを生成する。これは、任意のテキスト(例えば、ウェブサイトの記事や商品情報など)をOpenAIのモデルに渡し、そのテキストの意味を表す数値のベクトルを受け取る作業だ。このベクトルは、先ほど述べたように、3072個の数値の並びとして表現される(使用モデルによって次元数は異なる)。

生成された埋め込みベクトルは、次のステップでFAISSに保存される。まず、FAISSのインデックス(検索のためのデータ構造)を初期化する。このとき、埋め込みベクトルの次元数(ここでは3072)を指定する。そして、OpenAIで生成した各文書の埋め込みベクトルをFAISSのインデックスに追加していく。これにより、FAISSはこれらのベクトルデータを効率的に管理し、高速な類似性検索を実行できる状態になる。

最後に、Djangoを使って、これらの機能をウェブサービスとして提供するためのAPIを構築する。ユーザーがウェブサイトやアプリケーションから検索クエリを送信すると、DjangoのAPIがそれを受け取る。受け取った検索クエリも、OpenAIのモデルを使って埋め込みベクトルに変換される。そして、このクエリベクトルをFAISSのインデックスに問い合わせることで、保存されている大量の文書ベクトルの中から、意味的に最も近い(類似性の高い)文書のベクトルを高速に探し出す。FAISSは、類似度の高い上位数件の文書のインデックス(FAISSに登録した時の識別番号)を返し、Djangoはそのインデックスに対応する元の文書情報を取得し、検索結果としてユーザーに返す。

このシステムが稼働すると、「タシュケントの安いホテル」という検索クエリに対して、「タシュケントの最高のホテル」や「ブハラの高級リゾート」といった、意味的に関連する(場合によっては類義語で表現される)文書が結果として表示される可能性がある。これは、単なるキーワードの一致ではなく、意味的な類似度に基づいて情報を提示できるようになった証拠だ。

このようなセマンティック検索の仕組みは、現実世界で非常に多くの応用例を持つ。例えば、銀行業界のAIチャットボットでは、顧客からの複雑な質問に対しても、表面的なキーワードに惑わされず、質問の真意を理解した上で適切な情報を提供できる。ECサイトでは、顧客が漠然としたイメージで商品を検索した場合でも、意味的に近い商品を推薦することで、顧客満足度と売上向上に貢献する。また、企業内の膨大なドキュメントから必要な情報を探し出す知識ベースシステムにおいても、セマンティック検索は従業員が求める情報を迅速かつ正確に見つけ出す手助けをする。

セマンティック検索は、もはや特別な技術ではなく、現代のデジタル環境における標準的な検索体験を向上させるための必須要素となりつつある。Djangoという堅牢なウェブフレームワーク、OpenAIという強力なAIモデル、そしてFAISSという高速なベクトル検索エンジンを組み合わせることで、システムエンジニアを目指す皆さんでも、スケーラブルで多言語に対応した高性能な検索システムを構築することが可能だ。これらの技術を学び、実践することで、よりスマートで人間らしい情報探索体験を社会に提供できるエンジニアへと成長できるだろう。

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