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【ITニュース解説】「製品セキュリティ」が日本復活の鍵かもしれない件

2025年09月17日に「ZDNet Japan」が公開したITニュース「「製品セキュリティ」が日本復活の鍵かもしれない件」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

IoTデバイスを含む製品のセキュリティが、国際的に重要度を増している。米国や欧州では法的枠組みの整備が進み、日本の製造業もその対応が不可欠となる。これは製品の信頼性を高め、日本の国際競争力向上と経済復活の鍵を握る重要な課題だ。

ITニュース解説

製品セキュリティとは、IoTデバイスや組み込みシステムなど、物理的な製品に搭載されるソフトウェアやハードウェアが、サイバー攻撃に対して安全であることを確保するための取り組みである。これは、従来の情報セキュリティが企業のデータやネットワークを守ることに主眼を置いていたのに対し、製品そのものが持つ脆弱性や、それが引き起こす物理的なリスクに焦点を当てている点で異なる。近年、家電製品から自動車、産業機器に至るまで、あらゆるものがインターネットに接続されるIoT(モノのインターネット)時代が到来し、製品の利便性が飛躍的に向上した一方で、そのセキュリティリスクも増大している。

サイバー攻撃の標的は、これまで企業の情報システムが中心だったが、IoTデバイスの普及に伴い、日常生活に密接に関わる製品が狙われるケースが増えている。例えば、スマート家電が乗っ取られてプライバシーが侵害されたり、医療機器が停止させられて生命に関わる事態になったり、工場設備が遠隔操作されて生産ラインが停止したりする可能性がある。このような脅威が現実となる中で、製品メーカーは、自社製品が安全であることをユーザーに対して保証する責任を強く求められるようになった。この責任を果たすための活動が製品セキュリティである。

米国や欧州では、この製品セキュリティに関する法的な枠組みの整備が急速に進んでいる。例えば、米国では、大統領令14028(Executive Order 14028)が発令され、連邦政府に製品やサービスを提供するベンダーに対し、サプライチェーン全体のセキュリティ強化を義務付けた。この大統領令は、ソフトウェアの構成要素を明らかにするSBOM(Software Bill of Materials)の提出を求めるなど、具体的な要件を示している。SBOMは、製品に組み込まれているオープンソースソフトウェアや商用ソフトウェアのリストであり、これによって開発元は、自社製品にどのようなコンポーネントが含まれており、それらに既知の脆弱性がないかを追跡しやすくなる。これは、製品の安全性を透明化し、もし脆弱性が見つかった場合に迅速に対応するための重要な基盤となる。

欧州連合(EU)では、サイバーレジリエンス法案(Cyber Resilience Act: CRA)が策定されており、デジタル要素を持つ製品の製造業者、輸入業者、流通業者に対して、製品のライフサイクル全体にわたるセキュリティ要件を課そうとしている。具体的には、設計段階からのセキュリティ考慮、脆弱性の定期的なテストと修正、ユーザーへのセキュリティ情報の提供、そしてセキュリティインシデント発生時の報告義務などが含まれる。CRAは、EU市場で流通する製品全てに適用されるため、日本企業がEUに製品を輸出する場合も、この厳しい規制に対応する必要がある。これらの動きは、単に情報セキュリティ対策を講じるだけでなく、製品そのものの安全性に起因するリスクを、製品開発の初期段階からサプライチェーン全体を通じて管理していくという、パラダイムシフトを意味している。

これらの国際的な動きに対し、日本の製造業はどのような状況にあるのだろうか。長年にわたり、日本企業は高品質なモノづくりで世界に信頼されてきた。しかし、その「高品質」が必ずしも「高いセキュリティ」を意味するわけではないという認識が不足しているのが現状だ。製品の機能や性能には非常に高い基準を持つ一方で、セキュリティに関する取り組みは、後回しにされたり、最小限の対策に留まったりすることが少なくない。特に、製品開発の初期段階でセキュリティを考慮する「セキュリティ・バイ・デザイン」の思想が十分に浸透していないケースや、サプライチェーン上のパートナー企業との連携におけるセキュリティ管理が不十分なケースが散見される。

また、セキュリティに関する専門知識を持つ人材の不足も大きな課題である。情報セキュリティの専門家は少しずつ増えているが、製品に特化した「組み込みセキュリティ」や「OT(Operational Technology)セキュリティ」の専門家はまだ希少だ。国際的な法規制や標準に適合するための知見も不足しており、どのように対応すれば良いか戸惑っている企業も多い。このような状況では、グローバル市場での競争において不利になるだけでなく、サイバー攻撃による重大な被害を受けるリスクも高まる。

日本企業が国際競争力を維持し、さらには強化していくためには、製品セキュリティへの対応が喫緊の課題である。具体的に取るべき対策としては、まず経営層が製品セキュリティの重要性を深く理解し、全社的な取り組みとして推進する姿勢を示すことが不可欠だ。単なるコストではなく、企業の信頼性やブランド価値を高めるための投資と捉える必要がある。次に、製品開発の企画・設計段階からセキュリティ要件を組み込む「セキュリティ・バイ・デザイン」のプロセスを確立する。これには、脅威モデリングや脆弱性診断などの専門的な手法を取り入れることが求められる。

また、サプライチェーン全体でのセキュリティ管理を徹底する必要がある。部品サプライヤーから最終製品メーカーまで、関わる全ての企業がセキュリティ基準を共有し、協力して脆弱性管理やインシデント対応に取り組む体制を構築する。SBOMの作成と活用は、そのための強力なツールとなるだろう。さらに、製品出荷後も脆弱性情報を収集し、必要に応じて迅速にパッチを提供するなど、製品ライフサイクル全体にわたるセキュリティ運用体制を整備することも重要だ。

人材育成も避けて通れない課題である。製品開発に携わるエンジニアに対し、セキュリティに関する基礎知識だけでなく、専門的な技術や最新の脅威動向を学ぶ機会を提供し、セキュリティ意識の向上とスキルの習得を促す必要がある。外部の専門機関との連携や、セキュリティ人材の採用も有効な手段となる。

製品セキュリティへの対応は、単なる規制遵守に留まらない。これは、日本の製造業が再び世界で競争力を発揮し、信頼を勝ち取るための重要な戦略的投資である。製品の安全性を確保することは、ユーザーの信頼を獲得し、企業のブランド価値を高め、ひいては新たなビジネス機会を創出することにも繋がる。米国や欧州の動きは、日本の製造業にとって大きな課題であると同時に、世界をリードする製品セキュリティを実現し、「日本復活」の鍵を握る好機となる可能性を秘めている。この機会を逃さず、積極的かつ戦略的に製品セキュリティに取り組むことが、これからの日本の製造業に求められている。

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