【ITニュース解説】How do I Structure Projects for Scalability
2025年09月11日に「Dev.to」が公開したITニュース「How do I Structure Projects for Scalability」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
プロジェクトが大規模化すると、ずさんなフォルダ構造は開発の妨げとなる。記事では、スケーラブルなフロントエンドプロジェクトを実現する構造を提案。`entities`でデータ、`features`で機能、`pages`で画面を構成し、`shared`で共通部品を集約する。新規開発者も理解しやすく、拡張性・保守性も向上する。
ITニュース解説
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、ソフトウェア開発プロジェクトの「骨格」となる構造を理解することは非常に重要である。小規模なプロジェクトであれば、ファイルやコードを一つの場所にまとめても大きな問題にはならないかもしれない。しかし、アプリケーションが成長し、機能が複雑化し、複数の開発者が関わるようになると、整理されていない構造は開発速度を低下させ、バグの特定や修正を困難にし、新しいチームメンバーがコードを理解する障壁となる。これは「スパゲッティコード」と呼ばれる状態を引き起こし、プロジェクトの維持を極めて困難にする。
この記事では、このような課題を解決し、プロジェクトをスケーラブル(拡張可能)、予測可能、そしてチームでの作業を便利にするためのフロントエンドプロジェクトの構造に関する具体的な考え方が提示されている。この構造は、単にファイルを整理するだけでなく、将来の成長を見越した設計思想に基づいている。
まず、プロジェクト構造を設計する上での三つの重要な原則が示されている。一つ目は「明示的であることは、暗黙的であることよりも優れている」という原則だ。これは、たとえフォルダが一つ増えたとしても、コードのインポート元が不明確な「魔法」のような挙動よりも、どこに何があるのかが一目でわかる方が良いという意味だ。コードの意図が明確であるほど、理解しやすく、エラーも減る。二つ目は「機能がレイヤーよりも重要である」という原則だ。これは、単に「コンポーネント」や「サービス」といった技術的な層でファイルを分類するのではなく、「ログイン」や「検索」といったビジネス上の具体的な機能ごとにモジュールをまとめるべきだという考え方を示している。これにより、ある機能に関連する全てのコードが特定の場所に集まり、変更や追加が容易になる。三つ目は「初日からスケーラビリティを考慮する」という原則である。プロジェクトが小さいうちから、将来の成長に対応できるような構造にしておくことで、規模が大きくなったときに大規模な手直し(リファクタリング)を避けることができる。
これらの原則を踏まえた上で、具体的なプロジェクトの基本構造が提案されている。主要なディレクトリはsrc/以下に配置され、それぞれが明確な役割を担っている。
src/
├── app/: アプリケーション全体のレベルの設定を管理する。具体的には、アプリケーション全体で共有されるコンテキストプロバイダ、テーマ設定、ルーティングの設定、グローバルな状態管理(ストア)、そして各種定数や環境設定などがここに含まれる。これはアプリケーションの基盤となる部分であり、全体に影響を与える重要な設定が集約されている。
├── entities/: アプリケーション内で扱う「モノ」や「概念」を定義する。例えば「ユーザー」「製品」「TODO」などがこれにあたる。各エンティティのフォルダ内には、そのエンティティに関するAPI操作、データモデルの型定義、状態管理ロジック、そしてエンティティの最小単位となるUIコンポーネントが格納される。これにより、一つのエンティティに関する全ての情報が一箇所にまとまり、再利用性や保守性が向上する。
├── features/: 具体的なビジネス上の「機能」を実装する。これは複数のエンティティを組み合わせて特定の課題を解決する役割を持つ。例えば、「ログイン機能」や「商品検索機能」、「カート機能」などがここに含まれる。各機能のフォルダ内には、その機能に特化したUIコンポーネントや、ビジネスロジックを実装するローカルフックなどが配置される。featuresはentitiesを利用してより複雑な振る舞いを実現する。
├── pages/: アプリケーションの「画面」を定義する。ユーザーが実際に目にするウェブページの各画面がここに配置される。各ページのコンポーネントは、featuresやentitiesで定義された機能や部品を組み合わせて、一つの完成された画面を構成する。pagesはUIレベルのルーティングと密接に関連している。
├── shared/: アプリケーション全体で再利用される、特定のエンティティや機能に依存しない汎用的なコードを格納する。これには、ボタンや入力フィールドといった共通のUIコンポーネント、日付フォーマットや文字列操作などのヘルパー関数、基本的なHTTPクライアントなどが含まれる。sharedは他のどの部分にも依存せず、独立して機能するべきであり、ビジネスロジックを含まないことが重要だ。
└── index.TSX: アプリケーションのエントリポイント、つまりプログラムが最初に実行される場所である。
具体的な例で見てみよう。例えば「TODO」というエンティティがあるとする。entities/todo/の中には、TODOリストを取得したり、TODOを作成・更新・削除したりするためのAPI関数、TODOのデータ構造(型)、そして個々のTODO項目を表示する基本的なUIコンポーネントTodoItemが格納される。
次に、このentities/todoを使って「TODOリスト表示」という機能を作成する場合、それはfeatures/todoList/に配置される。TodoListというUIコンポーネントは、entities/todo/api/todoApi.tsからTODOデータを取得し、それをentities/todo/ui/TodoItem.tsxを使って一覧表示する。ここで重要なのは、features/todoListがentities/todoの詳細な実装を知る必要はなく、提供されたAPIとUIコンポーネントを利用する点だ。
さらに、これらの機能やエンティティを組み合わせて「ホーム画面」を作成する場合、それはpages/home/HomePage.tsxに配置される。HomePageコンポーネントは、features/todoList/ui/TodoListを読み込み、ページ上に表示する。このように、各レイヤーが上位のレイヤーに「部品」として提供され、依存関係が明確になる。
shared/は、例えば共通のHTTPリクエストを行うための汎用関数httpを提供することで、各エンティティや機能がAPI通信を行う際に同じ方法を使えるようにする。これにより、コードの重複を防ぎ、変更が一箇所で済むようになる。
なぜこの構造がうまく機能するのか。その理由はいくつかある。まず、新しい開発者がプロジェクトに参加した際に、コードベースを容易に理解できるという点だ。彼らは「何がエンティティなのか(最小単位のデータと操作)」、「どのような機能があるのか(具体的なビジネスロジック)」、「それらがどのように組み合わさってページを形成しているのか」という順序でシステム全体を把握できる。つまり、「中核となるデータ定義」→「具体的な機能」→「それらを組み合わせた画面」という明確な流れでコードを追うことができるのだ。
次に、コードのスケーラビリティが高いという点がある。新しい機能を追加する際も、既存のアーキテクチャ全体を見直す必要はほとんどない。関連するエンティティや機能を適切に配置するだけで済み、変更の影響範囲が限定されるため、開発がスムーズに進む。また、shared/ディレクトリがコンパクトで予測可能に保たれるため、ビジネスロジックが意図せずそこに混入する「ビジネスロジックの漏洩」を防ぐことができる。これはshared/が特定のビジネス要件に依存しない汎用的なコードのみを保持するという原則が守られているからである。
結論として、ここで紹介されているプロジェクト構造は、実際の大小様々なプロジェクトで実践され、その有効性が証明されている。これは唯一の「正しい」構造ではないかもしれないが、プロジェクトが成長するにつれて陥りがちな「スパゲッティコード」の状態を避け、長期的なメンテナンスとチーム開発を容易にするための強力な指針となる。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、このような構造化の考え方を理解し、実践することは、効率的で持続可能なソフトウェア開発能力を身につける上で不可欠な要素と言えるだろう。