【ITニュース解説】RabbitMQ vs. Apache Kafka: Choosing the Right Messaging Backbone for Microservices

2025年09月06日に「Dev.to」が公開したITニュース「RabbitMQ vs. Apache Kafka: Choosing the Right Messaging Backbone for Microservices」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

マイクロサービスで使われるRabbitMQとKafkaの比較。RabbitMQはタスク配布が得意な低遅延のメッセージブローカーだ。一方、Kafkaは大量のイベントを記録・再生できる高スループットなイベントストリーミング基盤。それぞれ特性が異なり、用途に応じた使い分けが重要である。

ITニュース解説

現代の多くのシステムは、マイクロサービスアーキテクチャという設計手法で構築されている。これは、一つの巨大なシステムを、機能ごとに独立した小さなサービスに分割し、それらを連携させて全体を動かす考え方である。このサービス間の連携方法には、直接相手の応答を待つ「同期通信」と、応答を待たずに処理を進める「非同期通信」がある。同期通信はシンプルだが、一つのサービスが停止すると、それを利用する他のサービスも影響を受ける「連鎖障害」のリスクを抱えている。一方、非同期通信は、メッセージングシステムと呼ばれる仲介役を置くことで、サービス同士が直接依存しないようにする。これにより、一部のサービスに障害が発生しても、システム全体が停止するのを防ぎ、回復力や柔軟性を高めることができる。この非同期通信を実現するための代表的な技術が、RabbitMQとApache Kafkaである。両者は広く利用されているが、その設計思想や得意なことは大きく異なり、どちらを選ぶかはシステムの根幹に関わる重要な判断となる。

RabbitMQは、伝統的なメッセージブローカーとして機能する。その役割は、メッセージの送信者である「プロデューサー」からメッセージを受け取り、受信者である「コンシューマー」に確実に届けることである。これは、郵便局が手紙を預かり、正確に宛先へ配達する仕組みに似ている。プロデューサーがメッセージを「Exchange」という振り分け役に送ると、Exchangeが設定されたルールに従って、メッセージを保管する「Queue」という箱に入れる。コンシューマーは、そのQueueからメッセージを取り出して処理を行い、処理が完了したことを通知すると、メッセージはQueueから削除される。このモデルは、「ユーザーにメールを送信する」「支払い処理を実行する」といった、個別のタスクを依頼し、それをワーカーが確実に処理するようなコマンド駆動型のワークフローに非常に適している。重要なのは、メッセージを「届けて処理させる」ことであり、一度処理されたタスクは完了となる。

対してApache Kafkaは、分散イベントストリーミングプラットフォームと位置づけられる。Kafkaの役割は、システム内で発生したあらゆる出来事、すなわち「イベント」を、発生した順にすべて記録し続けることである。これは、全ての取引が時系列で記録される巨大な台帳のようなものだ。プロデューサーがイベントを「Topic」というカテゴリ別のログに書き込むと、そのデータは追記されるだけで、基本的には削除されない。コンシューマーはTopicからイベントを読み出すが、データはそのまま残るため、後から別のコンシューマーが同じデータを読んだり、あるいは同じコンシューマーが過去に遡ってデータを再読み込み(リプレイ)したりすることが可能である。この仕組みは、Webサイトのクリック操作のような大量のイベントデータをリアルタイムで収集・分析したり、複数のシステム間で発生したデータの変更履歴を一元管理したりする、イベント駆動型のシステムやデータ分析基盤の構築に最適である。

両者の技術的な特性を比較すると、その違いはさらに明確になる。まず、速度の指標であるレイテンシ(遅延)において、RabbitMQは個々のメッセージを極めて高速に配送することに最適化されており、通常は1ミリ秒未満という非常に低い遅延を実現する。リアルタイム性が厳しく求められるタスク処理に向いている。一方、Kafkaは大量のデータをまとめて処理するスループット(処理能力)を重視するため、個々のメッセージの遅延はRabbitMQより大きくなる傾向があるが、秒間数百万件という圧倒的な量のデータを処理できる。次に、データの順序性について、Kafkaは「パーティション」という単位内であれば、イベントの発生順序を厳密に保証する。これはイベントの順序が重要な意味を持つシステムで不可欠な特性である。加えて、Kafkaの最大の特徴であるデータの再生(リプレイ)機能は、障害からの復旧や新たな分析ロジックの適用を容易にする。RabbitMQでは、メッセージは処理後に削除されるのが基本であり、このようなデータの再生はサポートされていない。

データの永続性、つまりデータを安全に保管する能力においても大きな違いがある。Kafkaは、受け取った全てのデータをディスク上のログファイルに書き込むことを前提として設計されており、データを複製することで高い耐障害性と耐久性を確保している。その性質は、もはやメッセージングシステムというより、書き込みに特化した分散データベースに近い。対照的に、RabbitMQもメッセージをディスクに保存する永続化オプションを持つが、基本的にはメモリ上での高速なメッセージングを優先する設計であり、永続化はスループットを低下させる要因になり得る。長期的なデータ保管庫としての役割は意図されていない。

これらの特性から、どちらを選択すべきかは、構築するシステムの要件によって決まる。もしシステムが必要とするのが、個別のタスクを低遅延かつ確実に実行するための軽量なメッセージング基盤であれば、RabbitMQが適している。導入や運用も比較的容易で、開発者にとって扱いやすい。一方で、システムが扱うのが大量のイベントデータストリームであり、そのデータを永続的に保存し、リアルタイムでの分析や、後からの再利用を必要とするならば、Kafkaが唯一の選択肢となるだろう。Kafkaは運用が複雑になる傾向があるため、専門的な知識や、クラウド事業者が提供するマネージドサービスの利用が推奨されることが多い。重要なのは「どちらが優れているか」を問うのではなく、「自分のシステムが解決しようとしている課題は、タスクの配送か、イベントの記録か」を自問し、その通信パターンに最も合致する技術を選択することである。場合によっては、システム内で両者を併用し、タスク処理にはRabbitMQを、データ分析基盤にはKafkaを利用するという構成も考えられる。

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