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【ITニュース解説】“野良SaaS増え過ぎ”問題で「ID管理」がカオス化 その根本原因と対策とは?

2025年09月17日に「TechTargetジャパン」が公開したITニュース「“野良SaaS増え過ぎ”問題で「ID管理」がカオス化 その根本原因と対策とは?」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

社員が知らない間にSaaSを利用し始め、企業内でID管理が行き届かない「野良SaaS」が問題だ。誰がどのサービスを使っているか把握できないとセキュリティリスクが高まる。その根本原因を理解し、適切なID管理体制を築くことが急務だ。

ITニュース解説

現代のビジネスにおいて、インターネットを通じて手軽に利用できる「SaaS」(Software as a Service)は、企業の業務効率化に欠かせない存在となっている。しかし、このSaaSの普及に伴い、「野良SaaS」と呼ばれる問題が広がり、企業の「ID管理」が混乱している。これは、組織のセキュリティや運営に深刻な影響を及ぼす事態だ。

野良SaaSとは、企業のIT部門が正式に承認したり管理したりしていないにもかかわらず、個々の従業員や部署が独自に導入して利用しているSaaSのことだ。例えば、ある部署がプロジェクト管理のために無料のオンラインツールを使い始めたり、営業担当者が顧客情報共有のためにIT部門に無断でクラウドサービスを契約したりするケースがこれに該当する。SaaSは、多くの場合、クレジットカードさえあれば簡単に契約でき、すぐに利用を開始できるため、現場の従業員が目の前の課題を迅速に解決しようとして、IT部門を通さずに導入してしまう傾向がある。

しかし、この手軽さが「ID管理のカオス化」を招く主要な原因となる。組織内で利用されるSaaSの数が増えれば増えるほど、それぞれのSaaSにログインするための「ユーザーID」と「パスワード」が際限なく増えていく。従業員はこれらの多数のIDとパスワードを全て正確に覚えて管理することが難しくなる。その結果、多くのSaaSで同じパスワードを使い回したり、推測されやすい単純なパスワードを設定したりする危険な行為が増えてしまう。もし、そのうち一つのSaaSからパスワードが漏洩した場合、他の全てのSaaSにも不正アクセスされるリスクが格段に高まり、組織全体のセキュリティが大きく損なわれることになる。

さらに、IT部門は、どの従業員が、どのSaaSを、どのような目的で、どのような権限で利用しているのかを正確に把握できなくなる。この管理の抜け穴は「シャドーIT」の一部であり、組織の管理が行き届かない場所で情報システムが運用されている状態を指す。特に深刻なのは、従業員が退職した後も、利用していた野良SaaSのアカウントがそのまま放置され、削除されないケースが多発することだ。もし、これらの放置されたアカウントが悪意のある第三者に悪用されれば、企業の機密情報が外部に漏洩したり、システム内部への不正侵入を許したりする重大なセキュリティインシデントに発展しかねない。組織のセキュリティポリシーに反する情報資産が、管理外のSaaS上に存在する状況は、常に情報漏洩のリスクを抱えることになる。

ID管理がカオス化する根本的な原因は、SaaSが持つ導入の手軽さに加えて、組織側の「ガバナンス」(統治・管理体制)の不足にある。多くの企業では、SaaSの導入や利用に関する明確なルールやガイドラインが整備されておらず、従業員が自由にサービスを選んで利用できる状態になっている。また、IT部門が全てのSaaS利用状況を一元的に把握し、管理する仕組みが十分に確立されていないことも、問題を深刻化させている。ビジネス部門が迅速な業務改善や課題解決を求める一方で、IT部門がそのスピード感に対応しきれず、結果として部門間で連携が不足していることも、野良SaaSが増加する背景にある。

この「野良SaaS増え過ぎ」問題とID管理のカオス化を解決するためには、計画的かつ多角的な対策が求められる。

第一に、組織内で利用されているSaaSを全て「可視化」することが不可欠だ。ネットワークトラフィックの監視ツールや、シャドーITを検出する専用のセキュリティソリューションなどを活用し、従業員がどのようなSaaSを利用しているのかを洗い出す必要がある。これにより、どのような機密情報がどのSaaSで扱われているのか、誰がアクセス権を持っているのかを正確に把握できるようになる。

第二に、ID管理の仕組みを強化することが極めて重要だ。そのための有効な解決策の一つが、「IDaaS」(Identity as a Service)の導入である。IDaaSとは、クラウド上で複数のSaaSに対する認証や認可をまとめて管理するサービスのことだ。IDaaSを導入することで、従業員は一度ログインすれば、複数の異なるSaaSにアクセスできるようになる「シングルサインオン(SSO)」を実現できる。これにより、従業員のパスワード管理の負担が大幅に軽減され、パスワードの使い回しといったセキュリティリスクも低減される。

IDaaSは、アカウントの「プロビジョニング」機能も提供する。プロビジョニングとは、新しい従業員が入社した際に、必要なSaaSのアカウントを自動で作成したり、退職時にそれらのアカウントを一括して自動的に削除したりする機能のことだ。これにより、IT部門の手作業による負担が大幅に軽減されるだけでなく、退職者のアカウントが放置されるリスクがなくなり、セキュリティが大幅に向上する。さらに、IDaaSを通じて「多要素認証(MFA)」を導入することで、ユーザーIDとパスワードだけでなく、スマートフォンアプリで生成されるワンタイムパスワードや生体認証などを組み合わせた、より強固な認証を全てのSaaSに対して適用できるようになる。

最後に、組織全体としてのガバナンスと明確なポリシーを確立することが最も重要だ。SaaSの導入に関する明確な承認プロセスを設け、無許可での利用を禁止するルールを策定する。どのSaaSを導入すべきか、どのような種類の情報を取り扱うことができるか、といった具体的なガイドラインを定めることで、従業員が迷わず適切な行動を取れるようにする。そして、これらのルールやガイドラインを全従業員に周知徹底し、SaaS利用に関する定期的な教育を行うことも欠かせない。IT部門とビジネス部門が密接に連携し、現場のニーズに応えつつも、セキュリティと管理のバランスを取る体制を構築することが、持続的な解決策となるだろう。

野良SaaSとID管理のカオス化は、現代のデジタル環境において多くの企業が直面する課題である。しかし、現状を正確に把握し、IDaaSのような先進的なツールを導入し、そして何よりも組織全体で適切なガバナンスを確立することで、これらの課題は克服可能だ。安全で効率的なSaaS利用環境を構築することは、企業の競争力を高める上で不可欠な取り組みなのである。

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