【ITニュース解説】Streams and memory usage
2025年09月04日に「Dev.to」が公開したITニュース「Streams and memory usage」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
大容量ファイルを一度byte配列に変換してメモリに読み込むと、メモリ不足でシステムが停止する危険がある。ファイルアップロード時は、データを分割して少しずつ処理する「Stream」を直接使うことで、メモリ消費を大幅に抑え安定稼働できる。(119文字)
ITニュース解説
プログラム開発において、メモリの使用量はシステムの安定性を左右する非常に重要な要素である。特に、限られたリソースで動作するクラウド環境などでは、メモリの非効率な利用が原因でアプリケーションが予期せず停止してしまうことがある。今回は、大きなデータを扱う際にメモリ消費を抑えるための「ストリーム」という技術の重要性を、実際のシステムで発生した問題を例に解説する。
あるシステムにおいて、Excelファイルを生成し、それをクラウド上のストレージにアップロードする機能が、メモリを大量に消費することが原因で頻繁に強制終了する問題が発生した。これは「Out Of Memory (OOM)」と呼ばれる状態で、プログラムがOSから割り当てられたメモリをすべて使い果たしてしまったために、OSによって強制的にプロセスを停止させられる現象である。
問題となっていた処理の内部では、次のような非効率な実装が行われていた。まず、プログラム上で生成されたExcelのデータは、一時的にメモリ上に確保された「MemoryStream」という領域に書き込まれる。次に、このMemoryStreamに書き込まれたすべてのデータが、「バイト配列」という形式に変換されていた。バイト配列とは、ファイルの内容全体をひとかたまりのデータとしてメモリ上に展開するもので、この時点でファイルサイズと同じだけのメモリが一気に確保されることになる。さらに、このバイト配列は別の処理に引き渡され、最終的にファイルをストレージにアップロードする直前になって、再びバイト配列からMemoryStreamを生成し直し、そのストリームを使ってアップロード処理を行っていた。
この実装の最大の問題点は、ファイルの内容全体をバイト配列として一度にメモリ上に展開している点にある。例えば、10MBのファイルを処理する場合、最低でも10MBのメモリがバイト配列のために消費される。もし、このような処理が10個同時に並行して実行された場合、単純計算でも10MBの10倍、つまり100MBのメモリが必要となる。さらに、元のMemoryStreamや、アップロード直前に再生成されるMemoryStreamの分も考慮すると、実際には200MB近いメモリが余分に消費されることになり、システムのメモリ領域を著しく圧迫する。これが、メモリ不足による強制終了の直接的な原因となっていた。また、このように大きなメモリ領域を確保と解放を繰り返すことは、不要になったメモリを自動的にクリーンアップする「ガベージコレクション」という仕組みにも大きな負荷をかけ、アプリケーション全体のパフォーマンス低下を招く要因にもなる。
このメモリ問題を解決するために採用されたのが、ストリームを正しく活用する方法である。ストリームとは、データを一括でメモリに読み込むのではなく、まるで水道の蛇口から水が流れるように、データを小さな塊に分割して連続的に送受信するための仕組みである。この仕組みを利用することで、どれだけ巨大なデータであっても、その全体を一度にメモリ上に保持する必要がなくなり、ごくわずかなメモリ使用量で処理を完了させることが可能になる。
改善された実装では、中間的なバイト配列への変換プロセスが完全に排除された。具体的には、まずアップロード先であるクラウドストレージに対して、書き込み専用のストリームを直接開く。これは、データソースと保存先の間に直接的なデータの通り道(パイプライン)を確立するようなイメージである。そして、プログラムが生成するExcelのデータを、完成を待たずにこの開かれたストリームへ直接書き込んでいく。データは生成されながら少しずつストレージへと送られていくため、プログラム側でデータを溜め込む必要がなく、メモリ消費を最小限に抑えることができる。この単純な変更によって、メモリの大量消費問題は根本的に解決され、アプリケーションは安定して動作するようになった。
この事例は、ファイル処理やネットワーク通信といった大きなデータを扱う場面において、ストリームの概念を理解し、適切に利用することがいかに重要であるかを示している。特に、C#やJavaのようにメモリ管理の多くを言語機能が自動で行ってくれる高水準言語を使用していると、開発者はメモリ消費について意識しにくい傾向がある。しかし、コンテナ技術の普及によりアプリケーションごとに利用可能なリソースが厳密に制限される現代の開発環境では、メモリ効率を意識した設計と実装は、安定したサービスを提供するための不可欠なスキルと言える。システムエンジニアを目指す上で、このような基本的ながらも極めて重要な技術的知識を身につけておくことは、堅牢で高性能なシステムを構築するための第一歩となるだろう。