【ITニュース解説】AIで重要性が増すランタイムの即時保護に注力--SysdigのナギブCEO
2026年10月20日に「ZDNet Japan」が公開したITニュース「AIで重要性が増すランタイムの即時保護に注力--SysdigのナギブCEO」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
AIの普及によりサイバーセキュリティの状況は変化している。SysdigのCEOは、クラウド環境でプログラムが動作する「ランタイム」の即時保護と、AIを活用したセキュリティに注力する。
ITニュース解説
現代のIT社会において、AI技術の進化は目覚ましく、私たちの生活やビジネスのあり方を大きく変えつつある。その一方で、AIの普及はサイバーセキュリティの分野にも大きな影響を与え、その情勢は日々変化している。特にシステムエンジニアを目指す皆さんにとって、この変化を理解し、どのようにシステムを保護していくかは非常に重要な課題となる。
SysdigのCEOであるハーテム・ナギブ氏が注目しているのは、クラウド環境における「ランタイム保護」と「AI支援のセキュリティ」である。これらがなぜ今、これほどまでに重要視されているのかを詳しく見ていこう。
まず「クラウド環境」について説明する。従来、企業は自社内にサーバーやネットワーク機器を設置し、それらを使ってシステムを運用するのが一般的だった。これを「オンプレミス環境」と呼ぶ。しかし、近年ではインターネットを通じて提供されるコンピューティングリソース(サーバー、ストレージ、データベース、ソフトウェアなど)を利用する「クラウド環境」が主流になっている。クラウドは、必要な時に必要な分だけリソースを利用でき、運用管理の手間も削減できるため、多くの企業で導入が進んでいる。
しかし、クラウド環境には独自のセキュリティ課題が存在する。自社で全てを管理するオンプレミスと異なり、クラウドではサービス提供者と利用者の間でセキュリティ責任が分担される「責任共有モデル」が採用される。例えば、クラウドの基盤部分のセキュリティはプロバイダが担当するが、その上で動くアプリケーションやデータのセキュリティは利用者が責任を持つ。この境界が曖昧になりやすく、設定ミスや管理の不備から脆弱性が生じることが少なくない。
次に「ランタイム」とは何か。これは「プログラムが実際に動いている状態」、つまりシステムが実行されている瞬間のことを指す。ソフトウェアは開発され、テストを経て、本番環境にデプロイ(配置)されるが、実際にユーザーからのリクエストを処理したり、データ処理を行ったりする際にプログラムが動作しているその時がランタイムである。
そして「ランタイム保護」とは、このプログラムが動いている最中に、外部からの不正アクセスや内部での異常な挙動を検知し、防御することである。これまでのセキュリティ対策では、システムが稼働する前(開発段階やデプロイ時)に脆弱性を特定したり、ネットワークの入り口で不正な通信をブロックしたりすることが中心だった。しかし、現代のサイバー攻撃はより巧妙化しており、これらの対策をすり抜けてシステム内部に侵入し、ランタイム中に悪意のある操作を行うケースが増えている。
なぜ「即時保護」が求められるのか。攻撃者はAIを活用して、より高速かつ複雑な攻撃を仕掛けてくるようになった。例えば、脆弱性を自動的に探し出し、数秒のうちに悪用するような攻撃も珍しくない。このような高速な攻撃に対して、従来のセキュリティ対策のように、ログを収集して後から分析したり、人間の手でアラートに対応したりする方法では間に合わない。攻撃が進行しているまさにその瞬間に、リアルタイムで脅威を検知し、自動的に対処する能力が不可欠なのである。システムが異常な挙動を示したその瞬間に、実行を停止させたり、隔離したりするような即時性が求められる。
この即時性を実現するために、「AI支援のセキュリティ」が大きな役割を果たす。AIは、大量のデータの中からパターンを学習し、異常を高速に検知する能力に優れている。例えば、通常のシステム挙動を学習させておき、ランタイム中にそのパターンから逸脱する挙動をAIが瞬時に発見し、セキュリティ担当者にアラートを出したり、自動で防御措置を講じたりすることが可能になる。これにより、人間の目では見逃してしまうような微細な異常や、従来のルールベースのセキュリティでは検知できない未知の脅威にも対応できる可能性が高まるのだ。
SysdigのナギブCEOがランタイムの即時保護に注力しているのは、このような背景があるからである。AIが攻撃と防御の両面で活用される現代において、システムが実際に稼働しているその瞬間をいかにして守りきるかが、サイバーセキュリティの最前線での勝利を決定づけると言える。
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、このランタイム保護とAI支援のセキュリティは、今後ますます重要となる分野である。クラウドネイティブな環境でのアプリケーション開発や運用に関わる際には、常にこれらのセキュリティ観点を持って設計・実装に取り組む必要がある。単に機能を実現するだけでなく、そのシステムがどのように動き、どのようなリスクにさらされるのかを深く理解し、ランタイムにおいて安全を確保できる能力が、これからのシステムエンジニアには不可欠となるだろう。Sysdigの取り組みは、この新しいセキュリティパラダイムの方向性を示唆していると言える。