【ITニュース解説】Vectorization in Python for Machine Learning
2025年09月17日に「Dev.to」が公開したITニュース「Vectorization in Python for Machine Learning」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
機械学習で大量のデータを扱う際、一つずつ処理するループは遅い。ベクトル化は、データ全体をまとめて一度に処理する技術で、計算を劇的に高速化する。PythonのNumPyやPandasライブラリは、C言語ベースの高速処理を活用し、ループより数十倍速く効率的なデータ処理を可能にする。
ITニュース解説
機械学習では、非常に多くのデータを扱うため、その処理速度は非常に重要になる。もしリストの中に1000個の数字があり、それぞれを2倍にするという単純な作業でも、一つずつ順番に処理していく方法と、一度にすべての数字を選んで「2倍にする」という指示を出す方法とでは、かかる時間が大きく異なる。この「一度にまとめて処理する」考え方が、機械学習における「ベクトル化」である。
ほとんどの機械学習のタスクは、大量のデータに対して同じ計算を繰り返し行う必要がある。ベクトル化を使わない場合、ごく簡単なモデルの学習でも数分かかってしまうことがあるが、ベクトル化を用いると、同じタスクが数秒で完了するようになる。計算結果自体はどちらの方法でも変わらないが、プログラムの実行速度が格段に速くなるのだ。
ベクトル化の基本的な考え方はシンプルだ。個々のデータを一つずつ処理するのではなく、データの集合全体をまとめて一つの操作で処理する。
なぜ、データを一つずつループで処理する方法が遅いのか。コンピュータはループの中で、各データポイントに対して計算を一つずつ順番に実行する必要があるため、データセットが大きくなると、処理にかなりの遅延が発生する。このような逐次処理は、基本的な操作でもデータ量に比例して処理時間がかかるという特性を持つ。特に機械学習のアルゴリズムでは、ループ内に複雑な数学的演算が含まれることが多いため、処理速度の低下がより顕著になる。
この問題は、Pythonが持つループ処理の特性によってさらに悪化する。Pythonは、C++やRustのようなコンパイル型の言語とは異なり、インタプリタ型の言語であるため、ループの各反復で変数の方を都度チェックしながらバイトコードを実行する。一方、C++のようなコンパイル言語は、プログラムの実行前にコードを最適化された機械語に変換しておくため、このような反復ごとのオーバーヘッドが大幅に削減される。
このループ処理の遅さを解決するために登場するのが、PythonライブラリのNumPyである。NumPyは、大きな多次元配列や行列に対して数学的演算を実行するための機能を提供する。NumPyの多くの機能は内部的にC言語で書かれており、これが高速化に大きく貢献している。C言語による実装に加え、NumPyは複数の仕組みによって高いパフォーマンスを実現している。例えば、メモリ上にデータを連続して配置することでCPUキャッシュの利用を最適化したり、Pythonの動的な型付けによる計算時のオーバーヘッドを排除したり、複数のデータを同時に処理できるSIMDのような低レベルなプロセッサ命令にアクセスしたりする。
NumPy配列(ndarrayと呼ばれる多次元配列)のすべてのデータは、同じデータ型である必要がある。これは、NumPyの基盤となっているC言語が、効率的なメモリ割り当てと演算のために均一なデータ型を要求するためだ。すべての要素が同じ型であれば、システムは各要素に必要なメモリ量を正確に予測し、どこにデータがあるかを把握できるため、より高速な処理が可能になる。
NumPyは、配列全体を単一の数学的オブジェクトとして扱うことで、配列演算を実行する。Pythonが個々の要素を反復処理する代わりに、NumPyは計算全体を最適化されたC言語のコードに渡す。このC言語の内部ループは、コンパイラによる最適化の恩恵を受け、Pythonからは直接アクセスできないCPUレベルの命令を利用できる。また、NumPyは「ブロードキャスト」という技術も使う。これは、異なる形状の配列間でも、明示的に大きな配列をメモリ上に作成することなく演算を可能にするものだ。
具体的な例を見てみよう。二つの同じサイズの配列から対応する要素を掛け合わせる「要素ごとの乗算」は、機械学習で特徴量の重みを適用したり、データ変換を行ったりする際によく使われる。ループで一つずつ計算する方法と、NumPyの配列を直接掛ける方法を比較すると、NumPyを使ったベクトル化された方法が圧倒的に高速であることがわかる。例えば、100万個の要素を持つ配列でこの計算を行うと、ループ処理に約0.3秒かかったのに対し、NumPyでは約0.005秒で完了し、約62倍の速度向上が見られた。
また、二つのベクトルから対応する要素を掛け合わせ、その結果をすべて合計して一つの数値を得る「ドット積」という計算も、線形回帰の予測やニューラルネットワークの基本的な演算として広く使われる。この計算でも、NumPyのnp.dot()関数を使うと、ループで計算するよりもはるかに高速に処理できる。10万個の要素を持つベクトルで比較すると、ループ処理に約0.02秒かかったのに対し、NumPyでは約0.0002秒で完了し、約100倍以上の速度向上が確認された。
Pandasは、NumPyのベクトル化能力をさらに拡張し、データフレームやシリーズといったラベル付きデータ構造に適用する。NumPyが均一なデータ型の配列に焦点を当てるのに対し、Pandasは異なるデータ型や欠損値を含むデータも扱うことができ、構造化されたデータセットに対して直感的な操作を提供する。データクリーニング、変換、分析といった作業で、異なる列の型や欠損値を持つ実際のデータセットを扱う際に、Pandasのベクトル化は非常に有効だ。
Pandasは、列全体やデータフレーム全体に対して同時に操作を行う組み込みメソッドを通じてベクトル化を実現する。ベクトル化された操作中に、データのアライメント(データの位置合わせ)、欠損値の伝播、型の変換などを自動的に処理するため、表形式のデータを扱う探索的データ分析やデータ前処理タスクに最適である。
Pandasの具体的な例として、データセット内の二つの列の対応する値を掛け合わせる「列間の要素ごとの演算」を考えてみよう。これは、数量と価格の列から合計を計算したり、スコアに重みを適用したりする際によく使われる。ループでPythonのリストを操作する方法と、Pandasのデータフレームで列を直接掛け合わせる方法を比較すると、Pandasを使ったベクトル化された方法がはるかに速い。50万個の要素を持つデータで比較すると、ループ処理に約0.13秒かかったのに対し、Pandasでは約0.003秒で完了し、約38倍の速度向上が見られた。
さらに、値の範囲に基づいてデータを分類する「条件付き演算とデータ分類」も、Pandasで効率的に行える。例えば、数値スコアから成績を割り当てるような操作は、データ分析でカテゴリ変数を作成したり、顧客をセグメント化したりする際によく利用される。ループでif-elif-else文を使って一つずつ成績を割り当てる方法と、Pandasのpd.cut()関数を使って一括で分類する方法を比較すると、ここでもベクトル化された方法が高速であることがわかる。50万個のスコアで比較すると、ループ処理に約0.13秒かかったのに対し、Pandasでは約0.015秒で完了し、約9倍の速度向上が見られた。
このように、ベクトル化は機械学習におけるデータ処理の方法を根本的に変える。個々のデータポイントを処理するループを記述する代わりに、データセット全体に対して一度に操作を適用することで、大幅な速度向上を実現する。NumPyは均一な数値データに対する数学的演算に、Pandasは構造化されたデータ操作、特に列間の演算や条件付きロジックの適用に優れている。
個別のデータポイントの処理から、データ集合全体を扱う操作へと発想を転換することは、最初は少し慣れないかもしれない。しかし、これは練習を重ねることで自然に身につき、より高速で、より簡潔なコードを書くことを可能にする。今後は、既存のループ処理を今回学んだパターンを使ってベクトル化したり、NumPyのブロードキャスト機能やPandasの組み込み関数を試したりして、実際にこれらの技術を自身のデータセットに適用してみると良い。ベクトル化を実践することで、機械学習の作業においてこれらのテクニックがより身近になるだろう。