【ITニュース解説】I Built a Web3 App in an Afternoon That Kept Failing. Ditching the Smart Contract Was the Answer.
2025年10月05日に「Medium」が公開したITニュース「I Built a Web3 App in an Afternoon That Kept Failing. Ditching the Smart Contract Was the Answer.」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Web3アプリ開発で、当初スマートコントラクトを採用したがエラーが頻発し失敗した。結局、スマートコントラクトを使わないシンプルな構成に変更したところ、無事に動作するアプリを短時間で実現できた。
ITニュース解説
今回のニュース記事は、Web3アプリケーションの開発に挑戦した筆者が、スマートコントラクトの利用で直面した困難と、それを解決するためにとった意外な選択について語っている。Web3は、ブロックチェーン技術を基盤とした次世代のインターネットを目指す概念であり、その中心的な技術の一つが「スマートコントラクト」だ。スマートコントラクトは、あらかじめ決められた条件が満たされたときに、自動的にプログラムが実行される仕組みで、中央集権的な管理者なしに信頼性の高い取引や処理を可能にする。
筆者は当初、このスマートコントラクトを全面的に活用してWeb3アプリを開発しようと試みた。理想とするのは、全てのデータと処理がブロックチェーン上で完結する「オンチェーン」なアーキテクチャだった。オンチェーンとは、データやロジックがブロックチェーン上に記録され、分散型ネットワーク全体で共有・検証される状態を指す。これにより、透明性、改ざん耐性、そして単一障害点がない高い信頼性が得られると考えられていた。しかし、実際にスマートコントラクトを組み込んだアプリを開発し、テストを繰り返す中で、筆者は度重なる失敗に直面することになる。
スマートコントラクトには、その特性ゆえの課題がいくつか存在する。まず、ブロックチェーン上での処理には「ガス代」と呼ばれる手数料が発生する。これは、ネットワークのリソースを使用することへの対価であり、トランザクションの複雑さやネットワークの混雑状況によって変動する。筆者のアプリでは、頻繁な処理がスマートコントラクトで行われるため、このガス代が開発コストを押し上げ、実用的な運用を妨げる要因となった可能性が高い。また、スマートコントラクトは一度ブロックチェーンにデプロイされると、原則として変更が非常に難しいという性質がある。バグが見つかった場合でも簡単に修正できず、新たなコントラクトをデプロイし直す必要があり、その度にコストと手間がかかる。デバッグ(プログラムの誤りを見つけて修正する作業)の難しさも大きな課題だ。通常のWebアプリケーションであれば、サーバーログやデバッガを使って詳細な情報を確認できるが、ブロックチェーン上のスマートコントラクトのデバッグは複雑で、問題の特定と解決に時間がかかることが多い。さらに、ブロックチェーンの処理速度は一般的なデータベースと比較して遅く、大量のデータを扱うようなアプリケーションにはスケーラビリティ(拡張性)の面で限界がある。
筆者はこうしたスマートコントラクトの課題に直面し、最終的に「スマートコントラクトを捨てる」という決断を下した。これは、全ての機能をオンチェーンで実現するという当初の「完璧な」構想を諦め、より実用的なアプローチへと舵を切ることを意味する。具体的には、アプリケーションの重要なロジックやデータの一部、あるいはほとんどを、ブロックチェーン上ではなく、従来のWeb技術(Web2の技術)を使って管理することを選んだと考えられる。これを「オフチェーン」処理と呼ぶ。オフチェーン処理では、従来のサーバーやデータベース(例えばSQLデータベースなど)を利用してデータの保存や複雑なロジックの実行を行う。ブロックチェーンは、あくまで必要最低限の、例えばトークンの所有権管理や重要なトランザクションの最終的な確定といった部分に限定して利用する、あるいは全く利用しないという選択肢もある。
コントラクトレスな、つまりスマートコントラクトを多用しない解決策に切り替えた結果、筆者のアプリはついに正常に動作するようになった。このアプローチの利点は明白だ。まず、開発の複雑さが大幅に軽減される。既存のWeb技術は成熟しており、開発ツールやフレームワークも豊富に揃っているため、開発者は慣れた環境で迅速に開発を進めることができる。デバッグも容易になり、問題発生時の対応もスムーズになる。ガス代の心配もほとんどなくなるため、コストを抑えることが可能だ。また、従来のデータベースはブロックチェーンよりもはるかに高速に動作し、大量のデータや高頻度なアクセスにも対応できるため、スケーラビリティの問題も解消される。
この筆者の経験は、システムエンジニアを目指す初心者にとって重要な教訓を与えている。それは、新しい技術や理想的なアーキテクチャに飛びつく前に、その技術が持つメリットだけでなく、デメリットや現実的な制約を十分に理解することがいかに大切かということだ。Web3やブロックチェーンは革新的な可能性を秘めているが、全てのアプリケーションに万能な解決策というわけではない。時には、Web2の成熟した技術と組み合わせたり、一部の機能に限定してWeb3技術を適用したりするなど、ハイブリッドなアプローチが最も現実的で効果的な場合がある。
技術選定の際には、「何が技術的に可能か」だけでなく、「何が最も効率的で、コストパフォーマンスが高く、そして最終的にユーザーに価値を提供できるか」という視点を持つことが重要だ。完璧なオンチェーンアーキテクチャを目指すよりも、実際に動き、ユーザーに利用されるアプリケーションを開発することの方が、はるかに価値がある。開発者は常に、与えられた要件と制約の中で最適な技術スタックを選び、実用性を追求する姿勢が求められる。今回の記事は、Web3開発における「理想」と「現実」のギャップを示し、そのギャップを埋めるための柔軟な思考と実用的なアプローチの重要性を教えてくれる事例と言えるだろう。