CDMA(シーディーエムエー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
CDMA(シーディーエムエー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
符号分割多元接続 (グコードディビジョンマルチプルアクセス)
英語表記
CDMA (シーディーエムエイ)
用語解説
CDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多重接続)は、携帯電話などの無線通信において、複数のユーザーが同じ周波数帯を同時に共有して通信を行うための多重接続技術の一種だ。この技術は、各ユーザーの通信信号を固有の「符号(コード)」で識別することにより、互いの干渉を最小限に抑えつつ効率的な通信を実現する。FDMA(周波数分割多重接続)がユーザーごとに異なる周波数帯を割り当てるのに対し、TDMA(時分割多重接続)がユーザーごとに異なる時間枠を割り当てるのに対し、CDMAは周波数も時間も共有し、符号によってユーザーを区別するという点が最大の特徴である。
CDMAの根幹をなす技術は「スペクトル拡散」と呼ばれる。これは、送信する情報信号が占める周波数帯域を、非常に広い帯域に意図的に「拡散」させることで、信号の秘匿性や耐干渉性を高める手法だ。具体的には、ユーザーが送信したいデータ信号(例えば音声やデータ)に、そのユーザー固有の高速な「拡散符号(スプレッディングコード)」を掛け合わせる。この拡散符号は、データ信号のビットレートよりもはるかに高いビットレートを持つ疑似雑音系列で、これにより元のデータ信号の周波数スペクトルが広範囲にわたって拡散される。ちょうど、狭い水流を広い水路に流し込むようなイメージだが、実際には信号のエネルギーが広帯域に薄く分散される。
受信側では、受信した広帯域の信号の中から、自分に割り当てられた拡散符号と全く同じ符号を再度掛け合わせる。この処理によって、自分の信号は元の狭帯域のデータ信号に「復元(逆拡散)」される。一方で、同じ周波数帯で同時に送信されている他のユーザーの信号は、異なる拡散符号で拡散されているため、受信側で自分の拡散符号を掛け合わせても復元されず、単なる低レベルのノイズとして扱われることになる。この「復元」と「ノイズ化」のプロセスは、数学的な相関処理によって実現される。つまり、固有の拡散符号を持つことで、数多くのユーザーが同じ周波数帯を同時に使用しても、それぞれの受信機は自分の信号だけを正確に取り出すことができるのだ。
このスペクトル拡散技術にはいくつかの重要な利点がある。一つは、通信の「秘匿性」が高いことだ。正しい拡散符号を知らない第三者が受信しても、信号はノイズのようにしか見えず、元のデータを復元することは極めて困難だ。また、信号エネルギーが広帯域に拡散されるため、特定の狭い周波数帯に集中するノイズや他の電波による干渉に対しても非常に「強い耐性」を持つ。さらに、電波が壁や建物で反射して複数の経路をたどって受信機に到達する「マルチパスフェージング」に対しても、CDMAは比較的高い耐性を示す。これは、異なる経路から届いた同じ信号を、拡散符号の相関性を利用して合成し、信号品質を向上させることが可能だからだ。
CDMAの大きな特徴として、「周波数利用効率の高さ」が挙げられる。全てのユーザーが同じ周波数帯を同時に利用できるため、周波数の割り当てが柔軟になり、システム全体としての収容容量を最大化できる。また、TDMAやFDMAとは異なり、厳密なユーザー数の上限がなく、ユーザー数が増加すると各ユーザーの通信品質が徐々に低下していく「ソフト容量(Soft Capacity)」という特性を持つ。これにより、一時的なトラフィックの増加にも柔軟に対応できる。さらに、携帯電話端末が複数の基地局から同時に信号を受信し、最も良好な信号を合成する「ソフトハンドオフ(Soft Handover)」が可能であるため、基地局間の移動時にも通信が途切れにくく、高品質な通話やデータ通信を実現できる。端末の送信電力も、信号を拡散することで必要な信号対雑音比を低減できるため、バッテリーの長寿命化にも寄与する。
しかし、CDMAにも課題は存在する。最も重要なのが「近距離・遠距離問題(Near-Far Problem)」である。これは、基地局に近い場所にある端末の電波が、基地局から遠い場所にある端末の電波よりもはるかに強く基地局に届いてしまい、弱い信号が強い信号によってかき消されてしまう現象だ。これを解決するためには、基地局が各端末の受信電力を常に監視し、各端末の送信電力を適切に制御する「精密な電力制御」が不可欠となる。これにより、全ての端末からの信号が基地局でほぼ同じ強度で受信されるように調整される。また、各ユーザーの拡散符号の同期を高精度に行う必要があり、システムの設計と実装には高度な技術が求められる。
CDMA技術は、2G世代の「CDMAOne(IS-95)」や3G世代の「W-CDMA(UMTS)」といった主要な携帯電話通信規格の基盤技術として広く採用され、移動体通信の発展に大きく貢献した。その後の4G(LTE)や5Gでは、OFDM(直交周波数分割多重)などの他の技術が主要な多重接続方式となっているが、CDMAが培ってきたスペクトル拡散の思想や電力制御、ハンドオフなどの技術は、現代の無線通信システムにおいてもその根底に流れる重要な要素として受け継がれている。