Cisco ACI(シスコ エーシーアイ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
Cisco ACI(シスコ エーシーアイ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
シスコ ACI (シスコエイシーアイ)
英語表記
Cisco ACI (シスコ エーシーアイ)
用語解説
Cisco ACI (Application Centric Infrastructure) は、シスコシステムズが提供するソフトウェア定義ネットワーク(SDN)ソリューションの一つである。これは、データセンターにおけるネットワークの構築、運用、管理を大幅に効率化するために開発された。従来のネットワーク管理では、サーバーやアプリケーションの変更があるたびに、ネットワーク機器一台一台に対してコマンドラインインターフェース(CLI)を使って設定を手動で行う必要があった。この方法は複雑で時間と手間がかかり、人為的なミスも発生しやすかった。Cisco ACIは、このような課題を解決するために登場し、ネットワーク全体を中央で一元的に、しかも自動的に制御・管理することを可能にする。特に「アプリケーション中心」という考え方を採用しており、ネットワークの設定を個々の機器の物理的な設定から解放し、アプリケーションの要件に基づいて抽象化されたポリシーとして定義する点が最大の特徴である。これにより、アプリケーションを展開する際のネットワークプロビジョニングを劇的に迅速化し、セキュリティポリシーの適用も容易にする。
Cisco ACIの核となるのは、APIC (Application Policy Infrastructure Controller) と呼ばれるコントローラーである。APICは、ACIファブリックと呼ばれるネットワーク全体を管理する頭脳の役割を果たす。このファブリックは、物理的にはスパイン・リーフ構成と呼ばれる階層構造で構築される。スパインスイッチはデータセンター内の中心的なバックボーンとして機能し、リーフスイッチはサーバーやストレージ、他のネットワーク機器が直接接続されるアクセス層となる。APICは、この物理的なネットワークインフラストラクチャ(Underlay)上に、論理的なネットワーク(Overlay)を構築し、制御する。
ACIにおけるネットワーク管理の最も重要な概念は「ポリシーベース」である。従来のネットワークがIPアドレスやVLANといった物理的な情報を中心に設定されていたのに対し、ACIではアプリケーションの要求する振る舞いを抽象化されたポリシーとして定義する。このポリシーは、APICを通じてファブリック全体に自動的に適用される。ネットワーク管理者は、個々のスイッチにログインして設定変更を行うのではなく、APICのグラフィカルインターフェースやAPI(Application Programming Interface)を通じて、ポリシーを定義するだけでよい。
具体的なポリシーの構成要素として、EPG (Endpoint Group) がある。EPGは、共通の属性や要件を持つエンドポイント(サーバー、仮想マシン、コンテナなど)の集まりであり、例えば「Webサーバー群」「アプリケーションサーバー群」「データベースサーバー群」といったように定義される。EPG内のエンドポイントは、同じセキュリティポリシーやネットワークサービスを適用される。異なるEPG間の通信は、コントラクト (Contract) と呼ばれる契約によって厳密に制御される。コントラクトは、どのEPGからどのEPGへ、どのようなプロトコルやポート番号で通信を許可するかを明確に定義する。これにより、必要最小限の通信だけを許可する「ゼロトラスト」のような厳格なセキュリティモデルを容易に実装できる。EPGとコントラクトの関係は、まるでアプリケーションが利用する各サービス間のアクセス許可リストを作成するようなイメージである。
このポリシーベースの運用は、数多くのメリットをもたらす。まず、ネットワーク構成の柔軟性が飛躍的に向上する。アプリケーションの要件が変わった場合でも、APIC上でポリシーを変更するだけで、物理的な設定に手を加えることなくネットワークの振る舞いを迅速に変更できる。次に、ネットワークプロビジョニングの自動化と迅速化が実現される。新しいアプリケーションを展開する際に必要なネットワーク設定を、APICがポリシーに基づいて自動的に行うため、手動設定に比べて数分から数時間で完了できる場合もある。また、セキュリティの一元管理も容易になる。すべての通信がコントラクトによって制御されるため、セキュリティポリシーの整合性を保ちやすく、ネットワーク全体のセキュリティを俯瞰して管理できる。さらに、トラブルシューティングも簡素化される。APICがネットワーク全体の状態を把握しているため、問題発生時には迅速な原因特定と解決をサポートする。仮想化環境との連携も強力で、VMware vCenterなどの仮想環境とAPICを統合することで、仮想マシンの展開と同時に必要なネットワーク設定を自動的に適用することが可能となる。
Cisco ACIは、データセンターの運用において、手動設定による複雑性、時間、ミスのリスクを大幅に削減し、俊敏でセキュアなネットワーク環境を実現するための強力なツールである。システムエンジニアを目指す上で、このような自動化・ポリシーベースのネットワーク管理技術は、今後ますます重要となる。