コミュニティクラウド (コミュニティクラウド) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
コミュニティクラウド (コミュニティクラウド) の読み方
日本語表記
コミュニティクラウド (コミュニティクラウド)
英語表記
Community Cloud (コミュニティクラウド)
コミュニティクラウド (コミュニティクラウド) の意味や用語解説
コミュニティクラウドは、クラウドコンピューティングのデプロイメントモデルの一つである。特定の共通目的や関心事を共有する複数の組織によって、コンピューティングリソースが共同で利用、管理される形態を指す。この「コミュニティ」とは、例えば同じ業界団体に所属する企業群、共通の規制下にある政府機関、共同研究を行う大学や研究機関などが該当する。インフラストラクチャは、コミュニティを構成する組織の一つ、あるいは複数が所有・管理する場合もあれば、第三者のクラウド事業者が管理する場合もある。その設置場所は、組織の内部（オンプレミス）でも外部（オフプレミス）でも構わない。コミュニティクラウドは、不特定多数のユーザーが利用するパブリッククラウドと、単一の組織が占有するプライベートクラウドの中間的な性質を持つモデルとして位置づけられる。 コミュニティクラウドの最大の特徴は、共通の要件を持つ組織群がリソースを共有する点にある。例えば、特定の業界で求められる高度なセキュリティ要件、業界標準の遵守、あるいは特定の法規制への対応といった、コミュニティ全体で満たすべき課題が存在する場合に有効である。参加組織は、これらの共通要件を満たすように設計されたクラウド環境を共同で利用することで、個別にシステムを構築する手間とコストを削減できる。 このモデルのメリットとして、第一にセキュリティとコンプライアンスの強化が挙げられる。プライベートクラウドのように閉じた環境で運用されるため、パブリッククラウドと比較して高いセキュリティレベルを確保しやすい。また、医療情報保護法（HIPAA）や金融業界のセキュリティ基準（FISC安全対策基準）など、特定の業界規制に準拠した環境をコミュニティ全体で構築・維持できるため、コンプライアンス遵守の負担が軽減される。 第二に、コスト効率の良さが挙げられる。単一の組織が専用のプライベートクラウドを構築・運用する場合、初期投資や維持管理コストは非常に高額になる。しかし、コミュニティクラウドでは、これらのコストを参加する複数の組織で分担できるため、一組織あたりの経済的負担を抑えつつ、プライベートクラウドに近い高水準のサービスを利用することが可能となる。 第三に、組織間のコラボレーション促進が期待できる。共通のプラットフォーム上でアプリケーションやデータを共有することで、コミュニティ内の組織間連携が円滑になる。例えば、研究機関コンソーシアムが共同で大規模なデータ解析基盤を利用したり、サプライチェーンを構成する企業群が受発注システムを共有したりするケースが考えられる。 一方で、コミュニティクラウドにはデメリットや考慮すべき点も存在する。まず、ガバナンスの複雑さが挙げられる。複数の利害関係者が関わるため、運用ポリシー、セキュリティレベル、コストの負担割合、責任分界点などについて、参加組織間での合意形成が必要となる。この調整プロセスが難航する場合がある。 また、コスト面では、パブリッククラウドと比較すると割高になる傾向がある。利用者が限定されるため、パブリッククラウド事業者が提供するような大規模なスケールメリットは享受しにくい。さらに、柔軟性の制約も課題となり得る。クラウド環境はコミュニティ全体の共通要件に基づいて設計されるため、個々の組織が持つ独自の要求や特殊な仕様に完全に対応することは難しい場合がある。 具体的な利用シーンとしては、政府機関や地方自治体が挙げられる。複数の自治体が共同で住民情報システムや電子申請システムのためのクラウド基盤を構築・利用することで、コストを削減し、行政サービスの標準化と効率化を図ることができる。金融業界では、複数の金融機関が共同で、高度なセキュリティが要求される市場データ分析プラットフォームやリスク管理システムを運用する事例がある。医療分野では、複数の病院や研究施設が、患者のプライバシーを保護しつつ電子カルテ情報やゲノムデータを共有・分析するためのセキュアな基盤として利用する。 このように、コミュニティクラウドは、パブリッククラウドのコスト効率と、プライベートクラウドの高いセキュリティやカスタマイズ性という、両者の利点を部分的に兼ね備えた選択肢である。単独でプライベートクラウドを導入するにはコスト負担が大きすぎるが、パブリッククラウドではセキュリティやコンプライアンス要件を満たせない、という特定のニーズを持つ組織群にとって、非常に合理的なソリューションとなり得る。