【ITニュース解説】wabt 使用小记

2025年09月04日に「Dev.to」が公開したITニュース「wabt 使用小记」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

wabtは、WebAssembly(Wasm)開発を支援するツールセットだ。テキスト形式のWATコードをWasmにコンパイルしたり、Wasmファイルを解析して関数情報などを確認したりできる。また、WATコードの整形や、WasmをWATやC言語の擬似コードに逆変換する機能も持ち、開発の効率向上に貢献する。

出典: wabt 使用小记 | Dev.to公開日:

ITニュース解説

WebAssembly(WASM)は、Webブラウザやサーバーサイドなど、様々な実行環境で高性能なアプリケーションを動かすためのバイナリ形式のコードである。CやC++、Rustなどの言語で書かれたプログラムをWeb上で効率的に実行できるため、Web開発の可能性を大きく広げる技術として注目されている。wabt(WebAssembly Binary Toolkit)は、このWebAssemblyのバイナリフォーマットを扱うためのツールキットであり、WASMコードのコンパイル、分析、デバッグ、検証といった幅広い機能を提供する。

まず、wabtを使ってWebAssemblyコードを生成する方法を解説する。WebAssemblyのコードは、人間が読みやすいテキスト形式であるWAT(WebAssembly Text format)で記述することが可能だ。提供された例では、フィボナッチ数列を計算するWATコードが示されている。このコードは、WebAssemblyモジュールとして構成され、実行環境からlog関数をインポートする。また、WebAssemblyが利用するメモリを確保し、$heap_ptrというグローバル変数を用いてメモリの空き領域を管理し、$allocate関数で必要なサイズのメモリブロックを割り当てる仕組みを持つ。メインのfib関数は、指定された長さのフィボナッチ数列を計算し、その結果を確保したメモリ上に格納し、数列の開始アドレスを返す。例えば、i32.storeは32ビット整数値をメモリに書き込む命令であり、i32.addi32.mulはそれぞれ加算や乗算といった基本的な算術操作を実行する。

このWAT形式のコードを、wat2wasmコマンドを用いてWebAssemblyのバイナリ形式であるWASMファイルに変換できる。具体的には、wat2wasm ./fib.wat -o ./fib.wasmというコマンドを実行することで、fib.watファイルがコンパイルされ、fib.wasmという実行可能なバイナリファイルが生成される。このWASMファイルは、TypeScriptなどのホスト言語から利用される。TypeScriptのコード例では、WebAssembly.instantiateStreamingというAPIを通じてWASMファイルをロードし、そのモジュールがエクスポートするfib関数とmemoryオブジェクトを取得している。fib関数を呼び出してフィボナッチ数列を計算させると、その結果はWebAssemblyが管理するメモリ上に格納され、ホスト側(TypeScript)からはmemory.bufferを介してメモリの内容を読み取り、計算結果を配列として取得できる。ここで特筆すべきは、WATファイルに比べてWASMファイルが大幅に小さくなる点である。これはWASM形式が本来持つコンパクトさに加え、LEB128という効率的な圧縮方式が採用されているため、データサイズを削減できる。

次に、WASMファイルを分析する方法について説明する。wasm-objdumpコマンドは、一般的なオペレーティングシステムで使われるobjdumpコマンドと同様に、WASMファイルの内部構造を詳細に調査するツールである。開発者が未知のWASMモジュールを手にした際、このツールを使うことで、どのような関数やメモリが外部に公開されているか、それぞれの関数の引数と戻り値の型といった情報を迅速に把握できる。例えば、wasm-objdump ./fib.wasm -j Export -xというコマンドを実行すると、fib.wasmmemoryfibという関数をエクスポートしていることがわかる。さらに、-j Function -x-j Type -xといったオプションを組み合わせることで、fib関数が32ビット整数(i32)型の引数を一つ受け取り、32ビット整数(i32)型の戻り値を返すといった、より詳細な関数シグネチャ情報まで特定することが可能だ。-xオプションを単独で使うと、WASMファイル内の全てのセクション情報が出力されるが、情報量が多い場合は特定のセクションに絞って出力することで、より効率的に分析を進められる。

また、wat-desugarコマンドは、既存のWATコードを整理し、特定の規範に沿った形式に整形するために使用される。WATコードは比較的柔軟な記述が可能だが、WebAssemblyが「スタックマシン」という計算モデルに基づいて動作することを考えると、操作数を先にスタックに積んでから命令を実行するという標準的な書き方がある。提供されたフィボナッチ数列のコードでは、一部で操作数と命令の記述順がこの標準的な形式とは異なっている部分があった。wat-desugarは、このようなコードを、よりスタック指向の範式に沿った、よりコンパクトで整理された形式に変換する。この整理されたコードは、見た目には簡潔になるものの、元のコードよりも直感的に理解しにくくなる場合もあるため、可読性と規範性の間でトレードオフが存在する。

最後に、wabtが提供する逆アセンブル機能について解説する。逆アセンブルとは、バイナリ形式のWASMコードを人間が読める形式のコードに変換するプロセスである。wabtには、主に三つの逆アセンブルコマンドがある。一つ目はwasm2watで、WASMファイルを元のWATテキスト形式に逆変換する。二つ目はwasm2cで、WASMファイルをC言語のソースコードとヘッダファイルに逆変換する。そして三つ目はwasm-decompileで、WASMファイルをC言語風の、より読みやすい擬似コードに逆変換する。これらのツールは、WASMモジュールの内部動作を理解したり、デバッグしたりする際に非常に有用だ。特にwasm-decompileを使ってコードの機能を分析し、もし軽微な修正が必要であればwasm2watでWATファイルに戻し、それを編集してから再度wat2wasmでコンパイルするというような開発サイクルで活用できる。これらの逆アセンブルツールを用いることで、WASMバイナリというブラックボックスの内部を可視化し、その動作を詳細に把握することが可能になる。wabtは、WebAssemblyを利用するシステムエンジニアにとって、開発、分析、デバッグのあらゆる段階で不可欠なツールセットであると言える。

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