IPデータグラム(アイピーデータグラム)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
IPデータグラム(アイピーデータグラム)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
IPデータグラム (アイピーデータグラム)
英語表記
IP datagram (アイピーデータグラム)
用語解説
IPデータグラムは、インターネットプロトコル(IP)を用いてネットワーク上で送受信されるデータの基本単位である。一般的に「IPパケット」という呼称で知られていることも多い。コンピュータやスマートフォンなどの機器がインターネットを通じて通信を行う際、送信したいデータは、このIPデータグラムという形式に分割・整形されてからネットワークに送り出される。IPデータグラムは、主に二つの部分、すなわち「ヘッダ」と「ペイロード」から構成される。ヘッダは、データグラムを目的地まで正しく届けるための制御情報が格納される領域であり、宛先IPアドレスや送信元IPアドレスといった重要な情報が含まれる。一方、ペイロードは、実際に送りたいデータ本体、例えば電子メールの本文やウェブページのコンテンツ、動画データなどが格納される部分である。
IPは、データグラムが確実に目的地に到着することや、送信した順序通りに到着することを保証しない。この性質は「ベストエフォート型」通信と呼ばれる。ネットワークの混雑や障害によってデータグラムが消失したり、異なる経路を通過することで到着順序が入れ替わったりすることがある。通信の信頼性を確保するためには、IPの上位層に位置するプロトコル、例えばTCP(Transmission Control Protocol)が、データの再送制御や順序制御といった役割を担う。つまり、IPはデータグラムを届けるという基本的な配送機能に特化し、信頼性に関する複雑な処理は上位層に委ねるという役割分担がなされている。
IPデータグラムのヘッダ構造をより詳細に見ると、その役割が明確になる。現在広く利用されているIPv4のヘッダには、様々な制御情報が含まれている。まず、「バージョン」フィールドは、そのデータグラムがIPv4とIPv6のどちらのプロトコルに基づいているかを示す。「ヘッダ長」は、ヘッダ自体の長さを指定する。IPヘッダはオプションフィールドによって長さが可変であるため、どこまでがヘッダでどこからがペイロードかを区別するためにこの情報が必要となる。「全長」は、ヘッダとペイロードを合わせたデータグラム全体のサイズを示す。
「生存時間(TTL: Time to Live)」は、データグラムがネットワーク上で無限にループし続けることを防ぐための重要な仕組みである。データグラムはルータを経由するたびにTTLの値が一つずつ減らされ、この値がゼロになるとそのデータグラムは破棄される。「プロトコル」フィールドは、ペイロード部分のデータがどのプロトコル(TCP、UDP、ICMPなど)で処理されるべきかを示す番号である。宛先ホストはこの番号を見て、受信したデータを適切なアプリケーションやサービスに引き渡す。「ヘッダチェックサム」は、ヘッダ部分に伝送エラーが発生していないかを確認するための値である。そして最も重要なのが、「送信元IPアドレス」と「宛先IPアドレス」であり、これらがデータグラムの出発地と目的地を特定する。
ネットワーク上では、一度に送信できるデータの最大サイズ(MTU: Maximum Transmission Unit)が経路ごとに定められている。もしデータグラムのサイズがルータの先のネットワークのMTUを超える場合、データグラムは複数の小さなデータグラムに分割される。この処理を「フラグメンテーション」と呼ぶ。分割された各データグラムのヘッダには、元のデータグラムを識別するための「識別子」や、分割されたデータのうちのどの部分であるかを示す「フラグメントオフセット」などの情報が付与される。これらの情報に基づき、最終的な宛先ホストで分割されたデータグラムが再び元のデータに再構成される。なお、IPv6では、ネットワークの効率化を図るため、経路上のルータでのフラグメンテーションは原則として行われず、送信元ホストが適切なサイズに調整して送信する仕様となっている。このようにIPデータグラムは、その巧妙なヘッダ構造によって、多様なネットワークを跨いだデータの転送を実現しており、インターネット通信の根幹を支える技術である。