Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

ISO 9660(アイエスオー きゅうまんろくぜろぜろ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

ISO 9660(アイエスオー きゅうまんろくぜろぜろ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

アイエスオーきゅうろくまるぜろ (アイエスオーきゅうろくまるぜろ)

英語表記

ISO 9660 (アイエスオー きゅうまんろくぜろぜろ)

用語解説

ISO 9660とは、CD-ROMをはじめとする光学ディスクで利用されるファイルシステムの国際標準規格である。ファイルシステムとは、コンピュータがディスク上のデータをファイルとして認識し、その名前や保存場所、属性といった情報を管理するための仕組みを指す。この規格が策定された最大の目的は、異なるメーカーのコンピュータや、Windows、macOS、UNIX系といった異なるオペレーティングシステム(OS)間でのデータの互換性を確保することにある。1980年代にCD-ROMが普及し始めた当初は、各社が独自のファイルシステムを採用していたため、あるコンピュータで作成したCD-ROMが他のコンピュータでは読み込めないという問題が頻繁に発生した。この非互換性の問題を解決するため、業界の主要企業が集まって標準仕様を策定し、それが国際標準化機構(ISO)によって「ISO 9660」として正式に定められた。この規格の登場により、一度作成したCD-ROMはOSの種類を問わず多くのコンピュータで利用できるようになり、ソフトウェアの配布やデータの交換が飛躍的に容易になった。

ISO 9660規格が成立するまでには、その前身となる「High Sierra Format」の存在があった。1985年、CD-ROMの論理フォーマットを統一することを目指し、コンピュータ業界の主要企業によって「High Sierra Group」という団体が結成された。このグループが策定した仕様がHigh Sierra Formatであり、これが基礎となって1988年にISO 9660が発行された。この規格は、幅広いシステムでの互換性を最優先に設計されたため、ファイルやディレクトリの命名規則には厳しい制約が課せられている。最も基本的なレベル(Level 1)では、ファイル名に使用できる文字は半角の英大文字、数字、アンダースコアのみに限定され、ファイル名の長さは8文字以内、拡張子は3文字以内という、MS-DOSなどで採用されていた「8.3形式」に準拠していた。また、ディレクトリ(フォルダ)の階層構造も最大8階層までという制限があった。これらの制約は、当時の多様なコンピュータ環境のいずれにおいても確実にデータを読み出せるようにするための配慮であったが、現代の基準から見ると非常に限定的なものであった。

この基本的な制約を緩和し、より現代的な利用シーンに対応させるため、後年にいくつかの拡張規格が策定された。その中でも代表的なものが「Joliet」と「Rock Ridge」である。JolietはMicrosoft社が提唱した拡張規格で、ファイル名を最大64文字まで使用可能とし、文字コードにUnicodeを採用することで、日本語を含む多言語のファイル名を扱えるようにした。これは主にWindows環境での利便性を大きく向上させた。一方のRock Ridgeは、UNIX系OS向けの拡張規格である。ファイル名の大文字と小文字の区別、最大255バイトまでの長いファイル名のサポートに加え、ファイルの所有者やアクセス権(パーミッション)、シンボリックリンクといったUNIXのファイルシステムが持つ固有の属性情報を記録できるようになった。これにより、UNIX系OSのデータをその特性を保ったままCD-ROMにバックアップしたり配布したりすることが可能になった。これらの拡張規格は、ISO 9660の基本構造を維持しつつ、付加的な情報を記録する形で実装されているため、拡張に対応していないシステムでも基本的なファイルとして読み出すことができ、後方互換性が保たれている。さらに、CD-ROMから直接コンピュータを起動(ブート)させるための拡張規格として「El Torito」も存在する。これはOSのインストールディスクなどで広く利用されている技術である。

ISO 9660はCD-ROMのために策定された規格だが、その後のDVDやBlu-ray Discといった大容量の光学ディスクにおいても、互換性を維持するための基盤的なファイルシステムとして利用され続けている。ただし、特にDVD以降のメディアでは、より大きなファイルサイズや高度な機能を扱うために策定された「UDF(Universal Disk Format)」が主流となった。市販の映像ソフトであるDVD-Videoやデータ記録用のDVDでは、ISO 9660とUDFの両方のファイルシステム情報をディスクに記録する「UDF Bridge」という形式が採用されることも多い。これにより、古いシステムではISO 9660として、新しいシステムではUDFとして認識され、幅広い環境での読み取り互換性が確保されている。

現代では光学ディスクドライブを搭載しないコンピュータが増え、データのやり取りもインターネット経由が主流となったため、物理的なディスクとしてのISO 9660の利用機会は減少した。しかし、この規格は論理的なフォーマットとして形を変え、今なお重要な役割を果たしている。その代表例が、ディスクイメージファイルである「ISOファイル(.iso)」である。ISOファイルは、CDやDVDの内容をISO 9660のファイルシステム構造ごと一つのファイルにまとめたものであり、OSのインストールメディアの配布や、仮想マシン環境へのOS導入、ソフトウェアの配布などで広く活用されている。物理的なディスクを介さずに、手軽にメディアの内容を複製・配布できるため、システム開発や運用の現場では不可欠な存在となっている。このようにISO 9660は、物理メディアの時代にコンピュータ間の相互運用性を確立した歴史的な規格であると同時に、その論理構造はディスクイメージという形で仮想化時代においても生き続けている、ITの基礎を支える重要な技術の一つである。

関連コンテンツ