jQuery(ジェイ クエリー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
jQuery(ジェイ クエリー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ジェイクエリ (ジェイケエリ)
英語表記
jQuery (ジェイ クエリ)
用語解説
jQueryは、JavaScriptをより簡単かつ効率的に使用するために開発されたオープンソースのJavaScriptライブラリである。そのスローガンである「Write Less, Do More」(より少ない記述で、より多くのことをする)が示す通り、複雑になりがちなJavaScriptのコードを、短く直感的な記述で実現することを目指している。主な役割は、HTMLドキュメントの操作(DOM操作)、イベント処理、アニメーション効果の実装、そしてAjaxによる非同期通信の簡素化である。かつてはWebフロントエンド開発における事実上の標準技術として、世界中の多くのWebサイトで利用されていた。
jQueryの最大の特徴は、HTML要素の選択方法にある。CSSのセレクタと同じ構文を用いて、目的の要素を簡単に特定できる。例えば、特定のIDを持つ要素を選択する場合は$('#id名')、特定のクラスを持つすべての段落を選択する場合は$('p.クラス名')のように記述する。この選択機能は、jQueryのすべての操作の起点となるものであり、$(ドル記号)がそのための関数として定義されている。この強力なセレクタ機能により、開発者は複雑なDOMツリーの中から目的の要素を素早く見つけ出し、操作対象とすることができる。
要素を選択した後は、その内容や属性を自在に操作できる。これをDOM操作と呼ぶ。例えば、選択した要素のテキスト内容を変更する.text()メソッドや、HTML構造ごと変更する.html()メソッドがある。また、要素に新しいクラスを追加する.addClass()、属性値を設定する.attr()、要素を非表示にする.hide()など、多彩なメソッドが用意されている。これらのメソッドはチェーン(連鎖)させて記述することが可能で、$('p').hide().text('非表示にしました').show();のように、一つの要素に対して複数の操作を連続して実行できるため、コードの記述量を大幅に削減できる。
ユーザーの操作に応じた処理を記述するイベント処理も、jQueryを使えば非常に簡潔になる。例えば、ボタンがクリックされた時に特定のアクションを実行する場合、.on('click', function() { ... })という形式で記述できる。このfunction()内に、クリックされた時に実行したい処理を記述するだけで、イベントハンドラを実装できる。クリック以外にも、マウスが要素の上に乗った時(mouseover)、フォームの入力内容が変更された時(change)など、様々なイベントに対応している。
さらに、jQueryはWebページに視覚的な動きを与えるアニメーションも容易に実装できる。要素をゆっくり表示させる.fadeIn()、徐々に消す.fadeOut()、スライドしながら表示・非表示を切り替える.slideToggle()といった基本的なアニメーション効果がメソッドとして提供されている。より複雑な動きも.animate()メソッドを使えば、CSSプロパティを時間経過とともに変化させることで実現可能である。
サーバーとの非同期通信、すなわちAjax(Asynchronous JavaScript + XML)の実装もjQueryの得意分野である。ページ全体を再読み込みすることなく、サーバーから新しいデータを取得してページの一部だけを更新する、といった処理を$.ajax()メソッドを用いて比較的簡単に記述できる。これにより、ユーザー体験を損なうことなく、動的なWebアプリケーションを構築することが可能になる。
jQueryが広く普及した歴史的な背景には、ブラウザ間の互換性の問題があった。かつては、WebブラウザごとにJavaScriptの実装が微妙に異なっており、同じコードでもブラウザによって動作しないという問題が頻発していた。jQueryは、これらのブラウザ間の差異を内部で吸収する仕組みを持っており、開発者はブラウザの違いを意識することなく、一度書いたコードが主要なブラウザで同じように動作することを期待できた。このクロスブラウザ対応は、当時のWeb開発者にとって非常に大きな福音であった。
現代のWeb開発においては、React、Vue.js、Angularといった、より大規模で宣言的なUI構築を得意とするJavaScriptフレームワークやライブラリが主流となっている。これらのモダンなツールは、仮想DOMという技術を用いてUIの状態を効率的に管理し、コンポーネントベースでアプリケーションを構築するアプローチを取る。これは、HTML要素を直接選択して操作するjQueryの命令的なアプローチとは設計思想が異なる。そのため、新規の大規模なWebアプリケーション開発でjQueryが第一選択肢となることは少なくなった。
しかし、jQueryが完全に過去の技術になったわけではない。世界中に存在する膨大な数の既存Webサイト、特にWordPressのようなコンテンツ管理システム(CMS)で構築されたサイトでは、今なお広く利用され、その動作を支えている。また、小規模なWebサイトに簡単な動的要素を追加する場合や、レガシーシステムのメンテナンス、あるいはJavaScriptの学習初期段階においてDOM操作の概念を理解する上では、その学習コストの低さと手軽さから、依然として有用な選択肢であり続けている。