【ITニュース解説】The Vanilla JavaScript Renaissance: Rediscovering the Artisan's Tools

2025年09月04日に「Dev.to」が公開したITニュース「The Vanilla JavaScript Renaissance: Rediscovering the Artisan's Tools」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

JavaScript開発でReactなどのフレームワークが主流だが、純粋なVanilla JavaScriptの価値が見直されている。これは言語の基礎理解を深め、自身で設計する力を養い、パフォーマンス向上や長期的なコード寿命に繋がる。大規模開発にはフレームワーク、小規模や学習にはVanilla JSと使い分け、両方の習得が重要だ。

ITニュース解説

現代のWeb開発の現場では、React、Angular、VueといったJavaScriptフレームワークが広く使われている。これらはWebアプリケーション開発を非常に効率的に進めるための強力なツールであり、多くの開発者にとって不可欠な存在となっている。これらのフレームワークは、コンポーネントという部品を組み立てる設計思想を提供したり、複雑な状態管理や画面遷移を容易にする機能を提供したり、開発環境の準備を自動化するツール(CLI)を提供したりすることで、開発者が製品を早く市場に出せるよう支援してきた。特に大規模なチームで開発を進める際や、初心者開発者がプロジェクトに加わる際には、フレームワークが提供する共通のルールやツールが、開発のスピードと品質を保つ上で非常に役立つ。

しかし、最近では、これらの便利なフレームワークに頼り切るだけでなく、JavaScriptという言語そのものの基本に立ち返り、素のJavaScript(Vanilla JavaScript)の力を再認識しようという動きが強まっている。これは、最新技術の進歩を否定するものではなく、熟練した職人が、既成の道具だけでなく、自分自身で材料を加工し、道具を調整することによって、より深く技術を理解し、本質的な力を養うことに似ている。

Vanilla JavaScriptへの回帰は、「より少ないものでより多くを成し遂げる」ことではなく、「必要なものを、必要なだけ、正確な道具で」作り上げることを目指す。それは、あらかじめ用意された定食を食べるのではなく、食材を選び、調理法を考え、すべて自分で料理を作ることに近い。開発者は、フレームワークが提供する仮想的な要素ではなく、Webページを構成する実際の要素(DOM: Document Object Model)そのものと向き合う。要素を選択するためのdocument.querySelector、イベントを処理するためのelement.addEventListener、クラスを操作するclassListといった基本的な機能が、開発者の直接の道具となる。さらに、非同期通信を行うfetchや、非同期処理を簡単に書けるPromisesasync/awaitといった現代的なJavaScriptの機能も、強力なツールとして活用できる。

フレームワークを使わずにVanilla JavaScriptで開発を進めることは、開発者にとっていくつかの重要な学びと利点をもたらす。

まず、開発者はフレームワーク特有の書き方(ReactのJSXやVueのディレクティブなど)ではなく、純粋なJavaScriptの文法や概念を深く理解するようになる。イベントループがどのように動作するのか、オブジェクト指向の基本的な考え方であるプロトタイプ継承とは何か、コードを分割して管理するモジュールシステムとは何かといった、言語の根幹に関わる知識を学ぶ機会となる。これは、特定のフレームワークの操作方法だけでなく、Webブラウザがどのように情報を処理し、画面に表示するのかという、より本質的な理解につながる。

次に、フレームワークが用意した設計パターンに沿うのではなく、開発者自身がアプリケーションの構造を設計する能力を養うことができる。例えば、状態管理の仕組みをどう作るか、データフローをどう設計するかといった課題に対して、既存のフレームワークが解決したかった問題点を自ら考え、その解決策を独自に設計する経験を積む。この過程で、Publisher-Subscriberパターンなどのデザインパターンを学び、自分のプロジェクトに最適な、よりシンプルで効率的な解決策を見出すことができるようになるかもしれない。

さらに、パフォーマンスの面で大きな利点がある。フレームワークは内部的に多くの処理を行っており、例えば仮想DOMと呼ばれる技術を使って画面の更新を最適化しているが、それでも一定のオーバーヘッドは発生する。Vanilla JavaScriptで直接DOMを操作する場合、開発者は何がいつどのように変更されるかを正確にコントロールできるため、不要な処理を排除し、極めて高速なアプリケーションを構築することが可能になる。これにより、アプリケーションのファイルサイズを小さく抑え、ユーザーがWebページを操作できるようになるまでの時間(Time to Interactive)を大幅に短縮できる場合が多い。

そして、コードの移植性と長期的な保守性が向上する。フレームワークは絶えず進化し、バージョンアップや破壊的な変更、時にはプロジェクト自体の終了という可能性もはらんでいる。しかし、Vanilla JavaScriptで書かれたコードは、Webブラウザが標準でサポートする機能に基づいており、特定のフレームワークのライフサイクルに縛られることがない。WebブラウザのDOM APIは非常に安定しており、過去との互換性が高く保たれているため、今書いたコードが10年後も動作する可能性が高い。これは、作成した資産が長く使えることを意味する。

現代のVanilla JavaScriptは、もはや昔のjQueryのような単純なものではない。Webブラウザ自体が進化し、非常に強力な機能を提供している。例えば、Web Componentsという標準技術を使えば、フレームワークなしでカプセル化された再利用可能なUIコンポーネントを作成できる。ES Modulesを使えば、JavaScriptのコードを適切に分割し、依存関係を管理しながら効率的に利用できる。非同期処理についても、fetchasync/awaitといったモダンな機能が標準で用意されている。記事に示されたArticleCardというカスタム要素の例は、まさにその良い例だ。このコードは、特別なライブラリを使わずに、HTML要素を拡張し、シャドウDOMで内部をカプセル化し、データを受け取って表示し、ボタンのクリックイベントを処理し、独自のカスタムイベントを発行するといった、フレームワークが提供するようなコンポーネント機能をVanilla JavaScriptだけで実現できることを示している。

結局のところ、フレームワークとVanilla JavaScriptのどちらが優れているという単純な答えはない。どちらを選ぶかは、プロジェクトの性質や目的による。大規模なチームで一貫性を保ちながら迅速に開発を進めたい場合は、フレームワークが提供する恩恵は大きい。一方、最高のパフォーマンスが求められる小規模なWebサイトや、特定のインタラクティブな要素、あるいは学習目的の個人プロジェクトなどでは、Vanilla JavaScriptが最適な選択となる場合がある。

この「Vanilla JavaScriptのルネサンス」は、フレームワークを完全に捨てることを意味するものではない。それは、開発者自身のスキルセットに、より深く、より普遍的な基礎知識を加えることを意味する。大工が電動のこぎりだけでなく、手のこぎりも使いこなし、それぞれの道具の最適な使い方を知っているように、開発者もフレームワークとVanilla JavaScriptの両方を理解し、状況に応じて使い分けることで、より深い洞察力と問題解決能力を身につけられる。この学びの旅を通じて、開発者はフレームワークの価値をより深く理解しつつ、それらに過度に依存しない、より自立した技術者へと成長できるだろう。

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