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ラテラルムーブメント(ラテラルムーブメント)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

ラテラルムーブメント(ラテラルムーブメント)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

ラテラルムーブメント (ラテラルムーブメント)

英語表記

Lateral Movement (ラテラル・ムーブメント)

用語解説

ラテラルムーブメントとは、サイバー攻撃者がネットワークへの最初の侵入に成功した後、その侵入したシステムやユーザーアカウントから、さらに別のシステムやアカウントへとアクセスを広げていく行為を指す。これは水平移動、あるいは横展開とも呼ばれる。攻撃者が単一のシステムを侵害しただけで目的を達成するケースは稀であり、多くの場合、より価値のある情報や、ネットワークの中心に位置する重要なシステムへのアクセスを目指す。そのため、最初の侵入ポイントから足がかりを得て、ネットワーク内部を探索し、最終的な攻撃目標に到達するために、このラテラルムーブメントが不可欠な段階となる。システムエンジニアにとって、この動きを理解することは、防御戦略を立案し、インシデント発生時の対応を適切に行う上で極めて重要である。

ラテラルムーブメントの具体的な手法は多岐にわたるが、その根底には、攻撃者がネットワーク内でより広範な権限とアクセス経路を獲得しようとする意図がある。

最も一般的な手法の一つとして「資格情報の窃取」が挙げられる。攻撃者は、最初の侵入ポイントでシステムにアクセスした後、そのシステム上にキャッシュされているユーザー名やパスワード、ハッシュ値、あるいはチケット情報といった認証情報を不正に入手する。窃取した資格情報を用いて、攻撃者は正当なユーザーを装い、他のサーバーやワークステーション、ネットワーク共有フォルダなど、別のシステムへ正規のプロトコル(RDP、SMBなど)を使って接続を試みる。これにより、セキュリティソフトウェアによる検知を回避しやすくなる。

次に、「リモートサービスの悪用」がある。これは、Windowsのリモートデスクトッププロトコル(RDP)、サーバーメッセージブロック(SMB)、Windows Management Instrumentation(WMI)、あるいはLinux/Unix系のSecure Shell(SSH)といった、システム管理や通信に通常使用されるプロトコルを悪用して、他のシステムへアクセスする手法である。攻撃者は、窃取した資格情報を用いてこれらのサービスにログインしたり、あるいはこれらのサービスに存在する脆弱性を利用して認証を迂回したりすることで、ネットワーク内の他のホストに侵入する。

また、「脆弱性の悪用」もラテラルムーブメントの手法の一つである。攻撃者は、ネットワーク内部のシステムに存在するOSやアプリケーションの既知または未知の脆弱性を発見し、それを悪用して権限を昇格させたり、リモートコード実行を可能にしたりして、新たなシステムへの侵入を図る。パッチが適用されていない古いシステムや、設定ミスが存在するシステムは特に狙われやすい。さらに、マルウェアを横展開させる手法もある。最初の侵入ポイントにマルウェアを感染させた後、そのマルウェア自身がネットワーク内の他のシステムをスキャンし、脆弱性を探したり、パスワードを推測したりして、自己増殖的に他のシステムへ感染を広げる。

これらの手法を駆使して、攻撃者はネットワーク内部で「情報収集」を行う。侵害したシステムから、ネットワーク構成情報、IPアドレスレンジ、ユーザーアカウントリスト、アクセス権限などを把握し、次にどのシステムを狙うべきかを判断する。特に「ドメインコントローラー」は、Active Directory環境においてユーザー認証やグループポリシー管理を一元的に行う極めて重要なサーバーであるため、攻撃者は最終的な目標の一つとしてドメインコントローラーへの到達を目指す。ドメインコントローラーを掌握すれば、ネットワーク全体のユーザーアカウントやコンピューターに対する完全な制御権を得ることが可能となり、攻撃の目的をほぼ達成できる状態となる。

システムエンジニアは、ラテラルムーブメントに対する防御策を講じることが責務となる。具体的な防御策としては、まず「ネットワークセグメンテーション」が挙げられる。これは、ネットワークを機能や重要度に応じて複数の小さなセグメントに分割し、セグメント間の通信を厳しく制限する手法である。次に、「特権アクセス管理(PAM)」の導入は不可欠である。管理者アカウントなど、高い権限を持つアカウントの利用を厳格に管理し、必要な時だけ、最小限の時間と権限でアクセスを許可する。また、「最小権限の原則」を徹底し、ユーザーやサービスが必要最低限の権限のみを持つように設定することも重要である。

さらに、「多要素認証(MFA)」を導入し、特に管理者アカウントや重要なシステムへのアクセスには、パスワードだけでなく別の認証要素を組み合わせることで、資格情報が窃取されても不正アクセスを防ぐ確率を高める。「エンドポイント検出・応答(EDR)」ソリューションの導入も有効である。EDRは、各エンドポイント上の不審な活動をリアルタイムで監視し、異常を検知した際にアラートを発したり、自動で対応を行ったりする。これにより、ラテラルムーブメントの初期段階で異常を捕捉し、被害の拡大を防ぐことが期待できる。

また、「ログ監視とSIEM(Security Information and Event Management)」の活用も重要である。システムやネットワーク機器から出力されるログを一元的に収集・分析することで、不審なログイン試行や異常なファイルアクセスなど、ラテラルムーブメントの兆候となりうるパターンを早期に発見できる。定期的な「脆弱性診断」と「パッチ管理」は、既知の脆弱性を攻撃者に利用させないための基本的な対策である。システムのセキュリティホールを塞ぐことで、攻撃者が容易に足がかりを得ることを困難にする。

システムエンジニアは、これらの技術的対策に加えて、インシデント発生時の対応計画(インシデントレスポンスプラン)を策定し、訓練しておくことも求められる。万が一、ラテラルムーブメントが発生した場合でも、迅速かつ効果的に対応できるよう準備することで、被害を最小限に抑えることができる。ラテラルムーブメントは、現代のサイバー攻撃においてほぼ不可避な段階であり、これを阻止できなければ、最終的には侵害される可能性が高い。そのため、システム設計、運用、監視のあらゆるフェーズにおいて、この攻撃手法を常に意識し、多層的な防御策を講じることが、組織のセキュリティを確保する上で極めて重要な課題となる。

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