LHA(エルエイチエー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

LHA(エルエイチエー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

エルエイチエイ (エルエイチエイ)

英語表記

LHA (エルエイチエー)

用語解説

LHAは、日本で開発されたファイル圧縮形式、およびその圧縮・展開を行うためのソフトウェアの名称である。複数のファイルを一つにまとめ、全体のデータサイズを削減するアーカイブ機能を持つ。この形式で圧縮されたファイルには、慣例的に「.lzh」という拡張子が付与される。1988年に奥村晴彦氏が開発した「LHarc」が原型であり、その後、吉崎栄泰氏による機能拡張やアルゴリズムの改良が加えられ、LHAとして広く知られるようになった。特に1990年代のパソコン通信が主流であった時代において、日本国内における圧縮形式のデファクトスタンダード(事実上の標準)として、絶大な支持を得ていた。

LHAが広く普及した背景には、当時のコンピューティング環境が大きく関係している。1990年代の通信回線は低速なダイヤルアップ接続が主流であり、通信料金も従量課金制が一般的であった。そのため、ソフトウェアやデータをダウンロードする際の通信時間を短縮し、料金を節約することはユーザーにとって非常に重要であった。LHAは、ファイルを圧縮することでデータサイズを大幅に削減し、この課題を解決する有効な手段となった。また、LHAがフリーソフトウェアとしてソースコードと共に公開され、誰でも無償で利用できたことも普及を強力に後押しした。多くのオンラインソフトウェアやデータがLHA形式で配布され、当時のパーソナルコンピュータ、特にMS-DOS環境のユーザーにとっては必須のツールの一つとして認識されていた。

技術的な側面を見ると、LHAで採用されている主要な圧縮アルゴリズムは、LZSS法と静的ハフマン法を組み合わせたもので、「LZHUF」とも呼ばれる。LZSS法は辞書式圧縮の一種であり、データ内に繰り返し出現する文字列を検出し、それを「以前に出現した位置と長さ」を示す短い符号に置き換えることで圧縮を行う。この手法は、同じパターンが頻繁に現れるテキストファイルやプログラムファイルなどに対して高い効果を発揮する。一方、ハフマン法はエントロピー符号化の一種で、データの出現頻度を統計的に分析し、頻繁に出現するデータには短いビットコードを、逆に出現頻度の低いデータには長いビットコードを割り当てる。これにより、データ全体を表現するために必要な平均ビット長を短くし、圧縮効率を高める。LHAはこれら二つの手法を効果的に組み合わせることで、当時の標準的なファイルに対して十分な圧縮率を実現していた。さらに、LHAの持つ特徴的な機能として、自己解凍形式アーカイブの作成機能が挙げられる。これは、圧縮データとそれを展開するための簡易的なプログラムを一つの実行可能ファイル(拡張子.exe)に統合する機能である。この形式でアーカイブを作成すれば、受け取った相手はLHAの展開ソフトウェアを持っていなくても、ファイルを実行するだけで中身を取り出すことができた。この利便性の高さは、不特定多数のユーザーへのソフトウェア配布において非常に重宝された。

しかし、2000年代に入ると、LHAの利用は急速に減少していくことになる。その最大の要因は、オペレーティングシステム(OS)の進化、特にMicrosoft WindowsがZIP形式を標準でサポートし始めたことである。OS自体が圧縮・展開機能を持つようになったことで、ユーザーは別途ソフトウェアをインストールすることなくZIPファイルを扱えるようになり、利便性の面でZIPが圧倒的に優位となった。また、インターネット回線がブロードバンド化し、高速・大容量通信が当たり前になると、ファイルサイズを極限まで小さくする必要性が相対的に低下した。技術的にも、より高い圧縮率を誇る7-Zip(.7z)やRAR(.rar)といった新しい圧縮形式が登場し、性能面でのLHAの優位性は失われていった。さらに、LHAを扱う一部の展開ライブラリにディレクトリトラバーサルといったセキュリティ上の脆弱性が発見されたことも、企業利用などを中心にLHAが敬遠される一因となった。

現在、新規にファイルを作成する際にLHA形式が積極的に選択されることはほとんどない。しかし、過去に作成された膨大な量のフリーソフトウェアやデータ資産がLHA形式で保存されており、古いシステムや特定のコミュニティでは依然として利用されている場合がある。そのため、システムエンジニアを目指す者としては、LHAがかつて日本の標準的な圧縮形式であったという歴史的背景を理解し、万が一LHA形式のファイルに遭遇した際にも対応できるよう、その存在と基本的な扱い方についての知識を持っておくことが望ましい。

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