Lorem Ipsum(ローレムイプサム)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
Lorem Ipsum(ローレムイプサム)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ロレム・イプサム (ロレムイプサム)
英語表記
Lorem Ipsum (ロレム イプサム)
用語解説
Lorem Ipsum(ロレム・イプサム)とは、Webデザイン、グラフィックデザイン、DTPなどの分野において、デザインのレイアウトやフォントの確認に使用されるダミーテキストのことである。意味を持たないラテン語風の文章であり、テキストが配置される部分に仮で挿入されることから、プレースホルダーテキストとも呼ばれる。デザイン制作の初期段階で、最終的に挿入される予定の文章がまだ用意できていない場合に、全体の視覚的なバランスを確認するために用いられる。
Lorem Ipsumを使用する主な目的は、デザイン要素そのものに評価者の注意を集中させることにある。もし「ここに文章が入ります」のような単純な文字列や、意味の通る日本語の文章をプレースホルダーとして使用した場合、読み手は文章の内容に気を取られてしまい、フォントの種類、文字サイズ、行間、文字間といったタイポグラフィや、ページ全体のレイアウト構成に対する純粋な評価が困難になることがある。意味をなさないLorem Ipsumを用いることで、テキストを純粋な視覚的要素として捉えることができ、デザインの客観的な評価を促進する。また、Lorem Ipsumは、実際の英文に近い単語の長さのばらつきや、文字の出現頻度を持っているという特徴がある。これにより、単に同じ単語を繰り返すダミーテキストよりも、実際に文章が配置された際の見た目に近い、自然なテキストブロックを再現できる。この特性は、テキストが詰まった際の見た目や、改行がどのように入るかなどを現実的にシミュレートする上で非常に有効である。
Lorem Ipsumのテキストは、古代ローマの政治家であり哲学者でもあったマルクス・トゥッリウス・キケロが紀元前45年に執筆した『善と悪の究極について』(De finibus bonorum et malorum)という著作の一節が基になっている。ただし、現在使われているLorem Ipsumは、元のラテン語の文章をそのまま引用したものではない。1500年代に、とある印刷業者が活字見本帳を作成する際に、元の文章から単語を抜き出したり、文字を追加・削除・変更したりして、現在の意味をなさない形にしたものだと考えられている。例えば、冒頭の「Lorem ipsum dolor sit amet...」という部分は、元の文章にある「dolorem ipsum quia dolor sit amet...」(苦痛そのものを、それが苦痛であるという理由で愛する者はいない)という一節の一部を改変したものである。このように、古典ラテン語の文章を意図的に無意味化することで、内容に左右されずに書体やレイアウトを確認するためのテキストとして、印刷業界で古くから利用されてきた歴史がある。
システム開発やWeb制作の現場において、Lorem Ipsumは様々な場面で活用される。WebサイトやアプリケーションのUIデザインでは、ワイヤーフレームやモックアップを作成する段階で多用される。この段階では、まだ正式なコンテンツやコピーライティングが完成していないことが多いため、見出し、本文、キャプションなどのテキスト要素がどこに、どのくらいの分量で配置されるかを視覚的に示すためにLorem Ipsumが挿入される。これにより、デザイナーやエンジニア、クライアントは、コンテンツがなくてもレイアウトの妥当性や視覚的な魅力を評価・検討することが可能になる。また、WordPressなどのCMS(コンテンツ管理システム)で新しいテーマやテンプレートを適用する際、記事や固定ページにどのようにテキストが表示されるかを確認するためのサンプルデータとしても利用される。印刷物のデザインにおいても同様で、パンフレットや雑誌のレイアウトを組む際に、写真や図版とテキストのバランスを見るために用いられる。
Lorem Ipsumは手動で入力する必要はなく、専用のジェネレーターを利用して簡単に生成できる。Web上には、必要な段落数や単語数を指定してテキストを生成できるサイトが多数存在する。また、Adobe Photoshop, Illustrator, XDやFigmaといった主要なデザインツールでは、プラグインや標準機能としてLorem Ipsumを挿入する機能が備わっており、デザイン作業中に迅速にダミーテキストを配置することができる。ただし、Lorem Ipsumを使用する際には注意も必要である。あくまで仮のテキストであるため、最終的に使用される実際の文章の長さと、配置したLorem Ipsumの文字量が大きく異なると、完成時にレイアウトが崩れてしまう可能性がある。そのため、想定される文字量に近い分量を配置することが望ましい。さらに、クライアントへのプレゼンテーションなど、デザインの意図を説明する場面では、Lorem Ipsumが挿入されていると「未完成」という印象を与えたり、テキスト部分の重要性が伝わりにくくなったりする場合がある。そのような状況では、「ここに企業のビジョンに関する説明文が入ります」といった、より具体的で文脈に沿った指示的なテキストを用いる方が適切な場合もある。プロジェクトの段階や目的に応じて、適切に使い分けることが求められる。