LTO Ultrium(エルティーオー ウルトリアム)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

LTO Ultrium(エルティーオー ウルトリアム)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

エルティオー ウルトリアム (エルティオー ウルトリアム)

英語表記

LTO Ultrium (エルティーオー ウルトリウム)

用語解説

LTO Ultriumは、大容量データのバックアップやアーカイブを目的として標準化された、磁気テープストレージ技術の規格である。LTOはLinear Tape-Openの略称であり、特定のメーカーに独占されないオープンフォーマットとして、Hewlett Packard(現HPE)、IBM、Quantumの3社によって共同で開発された。このオープンな性質により、異なるメーカーのドライブとテープカートリッジ間での互換性が確保され、利用者は特定のベンダーに縛られることなくシステムを構築できる。LTO Ultriumは、数年ごとに記憶容量とデータ転送速度を大幅に向上させた新しい世代(ジェネレーション)が発表されるのが特徴で、増大し続けるデータ量に効率的に対応するためのロードマップが明確に示されている。その主な役割は、ハードディスクやSSDのような高速な一次ストレージから、アクセス頻度は低いものの長期にわたって保管する必要があるデータを退避させることにある。これにより、企業のITインフラにおけるストレージコストの最適化と、データの安全な長期保管を実現する。

LTO Ultriumの技術的な核心は、リニアサーペンタイン記録方式にある。これは、テープの全長にわたってデータを記録するための平行なトラックを設け、テープの端から端までデータを書き込んだ後、記録ヘッドをわずかにずらして逆方向に走行させながら次のトラックに書き込むという動作を蛇行するように繰り返す方式である。この仕組みにより、限られたテープ面積に極めて高い密度でデータを記録することが可能となっている。物理的には、データを記録する磁気テープを内蔵した交換可能な「LTOカートリッジ」と、そのカートリッジを挿入してデータの読み書きを行う「LTOドライブ」によってシステムが構成される。

セキュリティとデータ保全のための機能も充実している。LTO-3世代から導入されたWORM(Write Once, Read Many)機能は、一度書き込んだデータの変更や削除を物理的に不可能にする。これにより、医療記録や法的証拠など、データの改ざんが許されない情報の長期保存に適している。また、LTO-4世代以降では、ドライブに搭載されたハードウェアによるAES-256ビット暗号化機能が標準でサポートされている。これにより、テープカートリッジが万が一、紛失や盗難に遭った場合でも、記録されたデータが第三者に読み取られることを防ぎ、高いレベルのセキュリティを確保する。さらに、LTO-5世代で導入されたLTFS(Linear Tape File System)は、LTOの利便性を大きく向上させた画期的な技術である。LTFSを利用すると、磁気テープをUSBメモリや外付けハードディスクのように、OS上で通常のファイルシステムとして認識させることが可能になる。これにより、専用のバックアップソフトウェアを介さずに、ファイルやフォルダをドラッグアンドドロップで直接操作できるようになり、データの可視性とアクセス性が飛躍的に向上した。

LTO Ultriumの世代は、LTO-1から始まり、現在ではLTO-9が市場に投入されている。各世代は、記憶容量とデータ転送速度がおよそ2倍になるという規則性を持って進化してきた。例えば、LTO-8カートリッジは非圧縮時で12TB、圧縮時で30TBの容量を持ち、LTO-9では非圧縮時18TB、圧縮時45TBへと拡大している。また、LTOドライブは後方互換性を備えており、原則として1世代前までのカートリッジに対する読み書きと、2世代前までのカートリッジに対する読み出しが可能である。この互換性により、既存のテープ資産を無駄にすることなく、最新のドライブへ段階的に移行することができる。

LTO Ultriumが現代においても広く利用される最大の理由は、その圧倒的なコストパフォーマンスにある。ギガバイトあたりの単価がハードディスクと比較して非常に安価であり、大容量データの長期保管における総所有コスト(TCO)を大幅に削減できる。また、磁気テープは適切な環境下で保管すれば30年以上の寿命が期待できる非常に信頼性の高いメディアであり、通電が不要なため消費電力も抑えられる。さらに、テープカートリッジをドライブから取り出して物理的に隔離して保管できる点は、セキュリティ上の大きな利点となる。この状態は「エアギャップ」と呼ばれ、システムがネットワークから完全に切り離されるため、ランサムウェアをはじめとするサイバー攻撃の脅威からデータを確実に保護することができる。これらの特性から、LTO Ultriumは金融機関や放送局、研究機関、データセンターなど、膨大なデータを安全かつ低コストで長期にわたり保管する必要があるあらゆる分野で、今なお不可欠なストレージ技術として活用され続けている。