MBR(エムビーアール)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
MBR(エムビーアール)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
マスターブートレコード (マスターブートレコード)
英語表記
MBR (エムビーアール)
用語解説
MBRとは、Master Boot Record(マスターブートレコード)の略称で、ハードディスクやSSDなどのストレージデバイスの先頭セクタに存在する、OSを起動するために不可欠な特別な領域である。コンピュータの電源を投入した際、最初に読み込まれるコードと、そのストレージデバイス上のパーティション(区画)の配置情報が格納されており、OSのブートプロセスにおいて非常に重要な役割を担っている。
MBRは、ストレージデバイスの物理的な先頭、具体的には「セクタ0」と呼ばれる場所に位置する。そのサイズはわずか512バイトと決められている。この512バイトの領域には、主に以下の3つの重要な情報が格納されている。
第一に、ブートストラップコード(またはブートローダーコード)である。これはMBRの先頭から446バイトを占めるプログラムコードで、コンピュータが起動する際に最初に実行される。BIOS(Basic Input/Output System)やUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)といったファームウェアが、ストレージデバイスからこのMBRのブートストラップコードを読み込み、そのコードに処理を渡すことで、OSの起動処理が開始される。このコード自体がOSを直接起動するわけではなく、次にどこからOSの起動に必要なプログラムを読み込めばよいかを指示する橋渡しのような役割を果たす。
第二に、パーティションテーブルである。これはMBR内の447バイト目から64バイトを占める領域で、ストレージデバイスがどのように区切られているか、つまりパーティションの配置情報が記録されている。パーティションとは、一つの物理ディスクを論理的に分割した領域のことで、通常はOSやデータなどを格納するために利用される。このパーティションテーブルは、16バイトのエントリを最大で4つ格納できるようになっており、それぞれのパーティションの開始位置、サイズ、タイプ(OSの種類やデータ用などを示す)といった情報が含まれる。このため、MBR方式ではプライマリパーティションを最大で4つまでしか作成できないという制限がある。この制限を回避するために、「拡張パーティション」という概念が導入され、プライマリパーティションの一つを拡張パーティションとして定義し、その中にさらに複数の「論理ドライブ」を作成できるようにしている。
第三に、MBRシグネチャ(またはマジックナンバー)である。これはMBRの最後の2バイト(449バイト目から510バイト目)に位置し、常に「0x55AA」という固定値が格納されている。この値は、読み込んだセクタが有効なMBRであるかどうかをBIOSやUEFIが判断するための目印となる。この値が正しくない場合、システムはMBRが破損しているか、または有効なMBRではないと判断し、起動を継続できない場合がある。
コンピュータの起動プロセスにおいて、MBRは次のような流れで関与する。まず、PCの電源が投入されると、BIOSやUEFIが起動し、接続されているストレージデバイスの中から起動可能なデバイス(一般的にOSがインストールされているデバイス)を探す。起動可能なデバイスが見つかると、そのデバイスの先頭セクタにあるMBRをメモリに読み込む。次に、BIOS/UEFIはMBR内のブートストラップコードに制御を移す。ブートストラップコードはパーティションテーブルを参照し、どのパーティションがアクティブ(起動可能)であるかを特定する。アクティブパーティションが見つかると、そのパーティションの先頭にある「ブートセクタ」(Volume Boot Record: VBR)を読み込み、今度はそのブートセクタ内のプログラムに制御を渡す。このVBRがさらにOS本体のブートローダー(WindowsであればBOOTMGR、LinuxであればGRUBなど)を起動し、最終的にOSがメモリに読み込まれ、起動が完了する。
MBR方式は長年WindowsやLinuxなどのPCで広く使われてきたが、いくつかの制限も抱えている。前述のプライマリパーティションが4つまでという制限に加え、ストレージデバイスの最大容量が2TBまでという制限がある。これは、パーティションテーブルがセクタアドレスを28ビットで管理しているためであり、2TBを超える大容量ディスクではMBR方式ではディスク全体を認識・利用することができない。これらの制限を克服するために、近年では「GPT(GUID Partition Table)」という新しいパーティション管理方式が主流になりつつある。GPTはより多くのパーティションをサポートし、2TBを超える大容量ディスクにも対応できる。しかし、レガシーシステムとの互換性や、小容量のストレージデバイスでは依然としてMBRが利用されることも多く、システムエンジニアを目指す上ではその仕組みを理解しておくことは不可欠である。
MBRが破損すると、パーティション情報が失われたり、ブートストラップコードが実行できなくなったりするため、OSが起動できなくなるという重大な問題が発生する。このような場合、OSのインストールメディアやリカバリツールに含まれる修復機能(例えばWindowsの「bootrec」コマンドなど)を使用してMBRを再構築することで、システムの起動を回復できる可能性がある。マルウェアの中にはMBRを改ざんして起動プロセスを乗っ取る「ブートキット」と呼ばれるものもあり、MBRはセキュリティ上も重要な保護対象となる領域である。