Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

PERT(パート)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

PERT(パート)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

PERT (PERT)

英語表記

PERT (パー ト)

用語解説

PERT(Program Evaluation and Review Technique)は、プロジェクト管理において、特に期間の不確実性が高い大規模なプロジェクトの計画とスケジューリングに用いられる手法である。この手法は、各作業の所要時間を単一の値として見積もるのではなく、悲観的、楽観的、そして最も可能性の高い三つの時間見積もりを用いることで、プロジェクト全体の完了期間を統計的に予測することを可能にする。これにより、プロジェクトの達成可能性やリスクをより現実的に評価し、計画の精度を高めることを目的としている。システムの開発プロジェクトなど、未経験の要素や技術的な課題が多く、正確な期間見積もりが困難な場合に特に有効なツールとして活用されてきた。

PERTの最大の特徴は、個々のアクティビティ(作業)の所要時間に不確実性があることを前提としている点にある。この不確実性を定量的に扱うために、各アクティビティに対し三つの時間見積もりを行う。一つ目は「最楽観時間(Optimistic Time, To)」で、すべてが理想的に順調に進んだ場合の最短時間である。二つ目は「最悲観時間(Pessimistic Time, Tp)」で、予期せぬ問題が重なり最悪の事態が発生した場合の最長時間を示す。そして三つ目は「最頻時間(Most Likely Time, Tm)」で、最も発生する可能性が高いと見込まれる時間である。これらの三つの見積もり時間から、ベータ分布に基づいた加重平均によって「期待時間(Expected Time, Te)」を算出する。この期待時間が、そのアクティビティが完了するまでに要する平均的な時間と見なされる。具体的には、Te = (To + 4Tm + Tp) / 6 という計算式が用いられる。また、最楽観時間と最悲観時間の差から、そのアクティビティの所要時間のばらつき(分散)も同時に算出され、不確実性の度合いを数値化できる。

次に、プロジェクトを構成するすべてのアクティビティと、それらの間の先行関係(あるアクティビティが完了しないと次のアクティビティを開始できない関係)をネットワーク図として表現する。このネットワーク図では、アクティビティを矢印(アーク)で、アクティビティの開始や完了を示す節目を円(ノードまたはイベント)で表すことが多い。この図を作成することで、プロジェクト全体の流れとアクティビティ間の依存関係を視覚的に把握できる。

ネットワーク図が完成し、各アクティビティの期待時間が算出されたら、プロジェクト全体の期間を決定する上で最も重要な「クリティカルパス」を特定する。クリティカルパスとは、プロジェクト開始から完了までの経路のうち、すべてのアクティビティの期待時間を合計した際に最も長くなる経路を指す。この経路上のアクティビティは、一つでも遅延するとプロジェクト全体の完了が遅れてしまうため、「余裕時間(スラック)」がゼロである。プロジェクトマネージャーはクリティカルパス上のアクティビティに特に注意を払い、優先的にリソースを割り当てたり、進捗を厳しく監視したりする必要がある。クリティカルパス以外の経路には余裕時間があり、その経路上のアクティビティが多少遅れてもプロジェクト全体の完了時期には影響しない場合がある。

PERTは、元々アメリカ海軍が1950年代にポラリス潜水艦の開発プロジェクトを管理するために開発された経緯を持つ。当時、前例のない大規模かつ複雑なプロジェクトであり、従来の経験に基づいた期間見積もりが困難であったため、このような統計的なアプローチが求められた。

クリティカルパスを特定するプロセスでは、各アクティビティの最早開始時刻(Early Start, ES)、最早完了時刻(Early Finish, EF)、最遅開始時刻(Late Start, LS)、最遅完了時刻(Late Finish, LF)を計算する。最早開始時刻は、先行するすべてのアクティビティが完了した時点で、そのアクティビティが最も早く開始できる時刻である。最早完了時刻は、最早開始時刻にそのアクティビティの期待時間を加えたものである。これに対し、最遅完了時刻は、プロジェクト全体を遅延させずにそのアクティビティが完了できる最も遅い時刻であり、最遅開始時刻は最遅完了時刻からそのアクティビティの期待時間を引いた時刻である。これらの値を使って、各アクティビティの余裕時間(LF - EFまたはLS - ES)が計算され、余裕時間がゼロのアクティビティがクリティカルパス上にあると判断される。

さらに、PERTはプロジェクト全体の完了期間についても確率的な予測を可能にする。クリティカルパスを構成するアクティビティの期待時間と分散を合計することで、クリティカルパス全体の期待時間と分散が求められる。中央極限定理に基づき、十分な数のアクティビティがあれば、クリティカルパス全体の完了期間は正規分布に従うと仮定できる。これにより、特定の期間内にプロジェクトが完了する確率を算出したり、逆に特定の確率でプロジェクトを完了させるための目標期間を求めたりすることが可能になる。例えば、「90%の確率でプロジェクトが完了するのはいつか」といった問いに対し、数値的な根拠を持って答えることができるため、ステークホルダーへの説明やリスク管理において非常に強力なツールとなる。

PERTの利点は、不確実性の高いプロジェクトにおいて現実的な期間予測を可能にすること、クリティカルパスを特定することでプロジェクトのボトルネックを明確にし、リソース配分や進捗管理の焦点を絞れること、そしてプロジェクト完了の確率を定量的に示すことでリスク評価に役立つことにある。特に、過去のデータが乏しく、経験に基づいた見積もりが難しい研究開発プロジェクトや、初めて取り組むシステム開発プロジェクトなどでその真価を発揮する。

一方で、いくつかの限界も存在する。まず、各アクティビティの三点見積もりが主観的になりがちであり、見積もりを行う個人の経験や楽観度によって結果が大きく変動する可能性がある。また、複雑なプロジェクトではネットワーク図の作成と更新に手間がかかり、多数のアクティビティを扱う際には専用のソフトウェアが必須となる。PERTはリソースの制約(人員や機材の数)を直接的に考慮する機能は持たず、スケジューリングにリソース平準化の概念を組み込むには、別の手法や追加の考慮が必要となる。さらに、複数のクリティカルパスが存在する場合、それぞれのリスクを個別に評価する必要があり、分析が複雑になることもある。

現代のプロジェクト管理では、PERTとよく似たCPA(Critical Path Method)という手法が併用されることが多い。CPAは、各アクティビティの期間を単一の値として見積もり、コストと期間のトレードオフを分析するのに適している。実際には、PERTとCPAの概念を統合したPERT/CPMという形で用いられることが多く、多くのプロジェクト管理ソフトウェアでその機能が提供されている。アジャイル開発など、より柔軟な開発手法が普及している現代においても、大規模なシステム統合プロジェクトや、厳密なスケジュール管理が求められるプロジェクトの初期計画段階では、PERTの考え方が依然として有用であり、その原理は様々なプロジェクト管理手法の基盤となっている。

関連コンテンツ