Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

PSHフラグ(ピーエスエイチフラグ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

PSHフラグ(ピーエスエイチフラグ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

PSHフラグ (ピーエスエイチフラグ)

英語表記

PSH flag (ピーエスエイチフラグ)

用語解説

PSHフラグは、TCP(Transmission Control Protocol)ヘッダに含まれる非常に重要なフラグの一つであり、データの送受信において「即時性」を保証するために使用される。これは、システムエンジニアを目指す上で、ネットワーク通信の仕組みを理解する上で欠かせない要素の一つである。

PSHフラグの主な役割は、送信側のアプリケーションから送られてきたデータを、TCP層がバッファリングすることなく、できるだけ早くネットワークを通じて送信し、受信側のアプリケーションに到達したデータも、TCP受信バッファにため込むことなく、すぐに上位のアプリケーションに引き渡すように促すことにある。これにより、対話的な通信、例えばユーザーがキーボードで入力した文字が即座に相手に届き、その応答も素早く返ってくるようなシナリオで、通信の遅延を最小限に抑えることが可能となる。

インターネットの通信は、通常「TCP/IPプロトコルスタック」と呼ばれる階層的な仕組みで成り立っている。TCPは、このスタックの「トランスポート層」に位置し、アプリケーション層で生成されたデータを信頼性高く、順序通りに送受信する役割を担っている。アプリケーションが送りたいデータは、まずTCP層に渡され、「セグメント」と呼ばれる小さな塊に分割される。これらのセグメントは、さらにその下の層であるIP(Internet Protocol)層によって、実際にネットワーク上を流れる「パケット」としてカプセル化され、最終的に目的地へと届けられる。

TCPは、ネットワークの効率を高めるために、通常、いくつかのデータをまとめてから送信したり、受信したデータを一定量ためてからアプリケーションに渡したりする「バッファリング」という仕組みを利用する。例えば、Nagleアルゴリズムと呼ばれる効率化の仕組みでは、送信データが少量の場合、すぐに送信せず、ある程度まとまるまで、または確認応答(ACK)が返ってくるまで待つことで、ネットワーク上に小さなパケットが多数流れることを防ぎ、ネットワークの混雑を緩和しようとする。

しかし、このようなバッファリングは、ウェブページの閲覧、SSH(Secure Shell)によるリモート操作、オンラインゲーム、チャットアプリケーションなど、リアルタイムに近い応答が求められるインタラクティブな通信においては、不必要な遅延を引き起こしてしまう可能性がある。ユーザーが1文字入力するたびに数秒の遅延が発生すれば、それは実用的な通信とは言えないだろう。

そこでPSHフラグの出番となる。送信側のTCPがセグメントのヘッダにPSHフラグを設定して送信した場合、それは「このデータはすぐに処理してほしい」という意図を示している。具体的には、送信アプリケーションがTCPソケットにデータを書き込み、その際にPSHフラグを設定するように指示すると、TCPはたとえ小さなデータであっても、現在の送信バッファにたまっているデータを直ちにセグメントとして送信するよう試みる。これにより、Nagleアルゴリズムのようなバッファリングによる送信遅延を回避し、データを素早くネットワークに送り出すことができる。

同様に、受信側でPSHフラグが設定されたセグメントを受信した場合、受信側のTCPは、受信バッファに蓄積されたデータをアプリケーション層に「プッシュ(押し出す)」ように促される。通常、アプリケーションはシステムコール(例えばread()関数など)を発行して自らバッファからデータを読み出すが、PSHフラグはTCPスタックに対して、データが到着次第、できるだけ早くアプリケーションにそのデータを引き渡すよう「ヒント」を与える。これにより、アプリケーションはネットワークから届いた最新の情報を速やかに処理できるようになる。

このPSHフラグは、インタラクティブなアプリケーションにおいて特に重要となる。例えば、SSHでコマンドを入力する際、ユーザーがキーを押すたびにその1文字が即座にリモートサーバーに送られ、サーバーからの応答もすぐにユーザーの画面に表示される必要がある。このようなシナリオでは、送信側も受信側もPSHフラグを積極的に利用することで、ユーザー体験が大きく向上する。HTTP/2のようなプロトコルでも、ストリームの終端を示す際などに、受信側アプリケーションにデータを即座に処理させるためにPSHフラグが利用されることがある。

ただし、PSHフラグはTCPスタックに対する「推奨」であり、絶対的な強制ではない。オペレーティングシステムやTCP/IPスタックの実装によっては、PSHフラグの処理方法に細かな違いが生じることもある。しかし、その意図は一貫して、データの即時的な転送とアプリケーションへの引き渡しを促進することにある。システムエンジニアとして、ネットワークの挙動を深く理解するためには、このような細かなフラグ一つ一つが持つ意味とその役割を把握しておくことが重要である。

関連コンテンツ